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アメリカ D2C マットレス業界の血みどろの戦い・その未来に不安を感じた話

各社ホーム画面の UIUX の分析をして 前記事 を投稿 したところ、友人から「Casper 以外知らない!前提情報とかもあれば嬉しい。」とフィードバックをもらいました。(ちょっと笑えたので詳細は 06# にて)

確かに日本だと Casper のニュースが多く・IPO のインパクトが強く・業界の方もしくは真剣に深く調べない限り「一人勝ちしてんな~」という印象があるのかも。ただ、アメリカ現地で良いマットレスを購入したいが為にリサーチしまくった僕の肌感とはだいぶ違いました。

ので、各社のシェアと、何故ここまでマットレスブランドが乱立しているのかを調べてみました。書けば書くほど、「ガチンコでこれ戦国時代やん…!!!!!!」と感じる有様だったので、厨二病的なタイトルにしてみた。

また同時に、ブランド乱立の理由を調べていくと、業界の先行きもそこまで明るくないぞ…と個人的には感じる内容となりました。

01# マットレス業界における各社のシェアなど

さて、飛ぶ鳥を落とす勢いのように報じられている(実際確かに毎年 2 桁成長している…)D2C マットレス業界および Casper ですが、Forbes のこの記事によるとまだまだボリュームは小さい模様。以下に引用と意訳を。

"Since it was founded in 2014, Casper has grown its share of the U.S. mattress market to 3.2% in 2018, ranking it No. 7 among all mattress brands, according to Euromonitor. In contrast, No. 1 Serta’s share inched up 0.4 percentage points, to 20%, over the same period. The shares of No. 2 Simmons and No. 3 Sealy declined slightly, to 13.1% and 10.1%. "

(意訳) Euromonitor によると、2014 年創業以来、Casper は 2018 年に米国マットレス市場の 3.2% を占めるようになり、7 番目に大きなブランドとしてランクインした。1 位の Serta は 0.4 ポイントアップの 20% となった。2 位の Simmons および 3 位の Sealy のシェアは僅かに減少し、それぞれ 13.1% と 10.1 % となった。

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グラフにするとこんな感じか。ちなみに業界サイズは 2018 年で 17.3 億ドルだそうです。記事によっては 29 億ドルとかなってるけど。

次いで、同記事内にトップ 7 ブランドのシェアの記載あり。

"Even though Casper reclaimed the top spot in the year through March 31—its share of nearly 37% beat Purple’s 32%—Purple, which is sold at retailers including Macy’s and Mattress Firm, outsold Casper for the third time in the past year, Edison Trends data shows. Meanwhile, Tuft & Needle, at only about a quarter of Casper’s sales and No. 3 in the study, has seen its share increase to 10%, from 6%, over the past two years, according to Edison Trends. "

訳はスキップしますが、これを加味してグラフを作り直すと

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こんな感じに。なお、D2C マットレスが 16.5 億ドルの市場の 12% を占めている という面白い記事を発見しました。てことは、その中での Casper/Purple の存在感がざっくりそれぞれ 25-30% ほどになりそう?

ただ、Serta / Simmons / Sealy といった老舗ブランドも D2C ブランドを展開しており、そうなるとレイヤーが混在するので、ここから先はグラフを作ってもかなり不正確になりそうなため一旦ストップ。有料の一次情報にあたらないと正確に読めなさそう。そういう記事探すのは得意じゃないのだ。

02# 各社売上高はそこまで大きく変わらない

D2Cマットレス 4 社の Net Revenue データ 2015 - 2019 年

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 複数記事のソースをあたった結果、Casper の一人勝ちもしくは王者感は錯覚だったのね、ということが良くわかりました。Tuft & Needle の売上は出てきませんでしたが、別記事によると Casper の 1/4 くらいとのこと。

Leesa や、 Nectar 等複数ブランドを擁する Resident 社の売上もソース記事の通りであれば、別に思いっきり離されている感じはしません。もっと複数ブランド調べられたかもしれないけど、おおむね目的は果たした感。

Casper と Purple はもはやほぼガチンコ。Purple の猛追がすごい。

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Purple の猛追っぷりが際立つグラフとなりました。うまく Casper が切り開いた市場の波に乗った感があります。ただ両社とも 2 桁成長。

03# 新規参入は雨後の筍のよう・その理由 4 つ

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CNBC 社の記事 (2019.8) によると、アメリカ国内の D2C マットレスブランドの数は現在 175 ブランド程度と推測されている模様。今頃 200 超えてるのかも。記事を読み漁ってみたところ、そこまでブランドが増えているのにはいくつか理由があるようです。

理由 1. ほとんどのブランドががマットレスの製造・配送を外注しており、それらを自社で抱える必要がないから

この記事によると、Purple 社他数社はマットレスを自社製造しているものの、Casper・Tuft & Needle・Leesa 社等は独自の技術は占有しつつも、自社での製造は行っていないとのこと。そして、その他乱立しているブランドの多くはアメリカ国内にある 4 大マットレスメーカー(例として Carpenter )に製造・配送を依頼している模様。複数ブランドを同じ工場で作っていることも平気であるようです。

という事は、極論、スタートの資金・製造元とのコネクション・どのようなプロダクトにしたいのかといったビジョンさえあれば、製造に関するノウハウやプランニング等は製造委託先とまとめあげれば良く、ゼロからのスタートを行う必要が無いというのが大きそうです。

理由 2. つまり、乱立する D2C マットレスブランドは「マットレス会社」ではなく、「デジタルマーケ会社」に等しいから

製造ノウハウの獲得と製造プランニング・製造そのもの・配送すらも外注してしまえるのであれば、後は立ち上げる為にどのようなノウハウが必要でしょうか?(D2Cやったことないので見逃してるかもしれませんが)

ブランディングを行い、ウェブサイトを作り、オンライン広告で顧客を取ってくることが残り業務のメインになりそうです(カスタマーサポートとかもありますが)。であれば、敏腕アドエージェンシーマンが転身して D2C マットレス業界になだれ込む光景が個人的に容易に想像できます。

理由 3. 原価が低く、エントリーが簡単だから

諸説ありますが、マットレスそのものの製造原価は $250ドル~ 程度からスタートしており、高級マットレスの場合は原価率そのものは 10% 程度まで抑えられるというのが業界のコンセンサスのようです。

という事は、過当競争にあるこの状態では顧客獲得継続にコストはかかり始めてしまっているものの(=継続が難しい)、現時点で参入しているブランドはそれを当時は読み切れずに原価率の低さを魅力的にとらえて参入していた可能性があるのかも。

また、別の可能性として、既存のマットレス業界のパイが未だ大きく、既存業界のコスト構造の非弾力性(実店舗を多く構えている・個人経営店がアメリカの場合は多いらしい)を逆手に取って食えるうちに食ってしまおう、という目論見もありそうな気がします。

理由 4. オンラインでの購入率が市場の 45% を占めており、ミレニアル世代がこれからその数値をあげていく一方だから

日本のデータは調べていませんが、以下正しいとすればいかにもアメリカっぽい大きな数字です。この記事によると、オンラインでのマットレス購入率は 2017 年に35%, 2018 年には 45% を占めるまでになっている模様(28%増!)であり、そもそものマーケットの成長率が魅力的です。

更には、この記事によると、「過去 3 カ月以内に最低 2 回オンラインで物を購入した対象者」のうち、「生鮮食品などを除いた」ショッピングのうち何割がオンラインであったかを調査した結果、半分を超える 51 % の物品がこれに該当したそうです。色々条件がついてはいますが。

マットレスがまだこれに追いついていない所を見ると、以上の通りミレニアル世代のオンラインショッピングがこの数字をまだまだ引き延ばしていきそう。各社はともかく業界はまだ伸びそう。

04# まぁでも…未来は明るくない気がする

03# では色々と華々しい数字を書きましたが、175 社はやっぱり過当競争な気がします。そもそもマットレスの寿命って 8-10 年ですし。そんな毎年買い替えるようなものではないですしおすし。

ここまで過当競争になってしまった以上、幾らマットレスの製造原価が安くとも、そもそものオンラインでのユーザー獲得単価がうなぎのぼりになり多くの会社が共倒れになりそうです。

今後数年間で起こる倒産ラッシュの阿鼻叫喚の呈は避けられなさそうな感じがしましたが、どうなんでしょうか。なんだか Groupon がヒットした際に大量に湧いたフラッシュセールサイトのブームを思い出します。

05# まとめと次回

以上、なぜこんなにも D2C マットレス業界が過熱しているのかのリサーチと、各社の切磋琢磨っぷりを書いてみました。筆者はぶっちゃけ D2C ビジネスの門外漢、かつこういう業界視点で物を考えるのが苦手なので、見当違いな記述などありましたら Twitter 等で是非 優しく ご教示ください。謹んでお詫びのうえ喜んで訂正いたします。以下からどうぞです。

次編は 前編 と似た構成で、どちらかというと自分の領域の UIUX に戻ります。後、書いてて面白くなってきたので更にその後に 2 記事追加。前 2 記事のはずが 5 記事に。

次の記事は以下からどうぞ:

06# 余談:記事を書くことになったきっかけ

最初は Web UIUX の分析のみで、業界分析的な事を書くつもりは無かった(そもそも苦手なので…)のですが、前記事 への LOGILESS の社長 からの感想がきっかけ。

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「あれ、僕ここの社員だったっけ…?上司から次のタスクをもらう時と言われてる感じが全く一緒なんだけどなんだこれ。」と思いつつも(友人です)なんだかんだで楽しく書けた、ので @maonis ありがとう。上司の期待を察してタスクを終わらして報告する部下のような気持ちで本記事を公開します。ご査収頂ければ幸いです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。どなたかの参考になっっていれば、本当に嬉しいです。次回記事もお読み頂ければ幸いです。

参考記事一覧

* Purple Innovation Reports Fourth Quarter and Full Year 2019 Results
* Purple (Wikipedia)
* Resident (Wikipedia)
* A ‘bed-in-a-box’ start-up that donates mattresses to poor families just raised $23 million
* Company Behind Nectar Mattress Is Moving Beyond The Bedroom And Into The Rest Of The House
* Charting the adolescence of home industry D2C companies
* Casper, With Competition Growing, Wants To Be More Than A Mattress Company
* The $29 billion battle to own how America sleeps is heating up
* There are now 175 online mattress companies—and you can’t tell them apart
* Why there are so many online mattress-in-a-box companies
* Millennials drive spike in online shopping

お断りとお願い

お断り:本稿および note の全記事は個人的な解釈と分析に基づいたもので、所属していた/している会社の意向・見解とは一切関係ありませんので、その旨をご理解いただけますと幸いです。

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Fritz | Lead Product Manager @ Mercari
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