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『ヘブンバーンズレッド』のゲームデザインを分析してみた
『ヘブンバーンズレッド』をプレイしました。
『ヘブバン』はストーリーが主体のゲームで、第4章前半までプレイしましたが、詳しくは言えないですがめっっちゃおもしろいです。
今回は『ヘブバン』のゲームデザインについて分析してみます。
(ストーリーのネタバレはありません)
まず結論として、ヘブバンの各種ゲームシステムは、「いかにストーリーへの没入体験ができるか?」を軸にデザインされていると言えます。
ストーリーとシステムがガチっと噛み合ったゲームは物凄く没入感のある体験ができるので、ゲームシステム側もストーリー体験を良くするためには大切な役割を持っています。
『ヘブバン』はその点において、ストーリーへの没入体験を最上のものにするために、ゲームデザインで工夫されている所がいくつもありました。
その中でも個人的に印象的だった所をピックアップして深堀りしてみたいと思います。
ゲームサイクル
まずは『ヘブバン』全体を把握するために、ゲームサイクル図を作ってみました。
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『ヘブバン』はストーリーが主体となるゲームのため、ストーリーの進捗に合わせて各種育成機能やバトルコンテンツが解放されていきます。
とはいえ、第1章の間に必要なキャラ育成機能は一通り解放されて、基本的な育成サイクルは完成します。
初心者の間は、「ストーリーを見たい、そのために敵を倒す必要があるため、キャラを強化したい」がゲームを進めるための動機となります。
ストーリーへ徐々に没入していくに連れてゲーム内で出来ることが増えていくので、ゲームシステムに対する学習も自然な流れで出来るのが良いですね。
インゲーム
「リソース管理の遊び」を緊張感に繋げたダンジョン攻略体験
個人的に面白いと思った所は、ダンジョン攻略です。
ヘブバンのダンジョンは「探索の遊び」というよりも、「リソース管理の遊び」と言えます。
第一に、マップの作りは分岐がほとんどなく、シンプルな作りになっています。
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そして、マップ移動も左右に直線的に移動するだけなので、「ダンジョン内を360度自由に移動して敵やアイテムを探す」といった遊びではありません。
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「リソース管理の遊び」を実現している仕様としては、「1回ダンジョンの攻略に出てしまうと、味方のDP、HPとスキル使用可能回数は、ダンジョン攻略が終わるまでリセットされない」というものです。
そのため、それらのパラメータを管理しながら、「奥の道まで行って強敵と遭遇するリスクを犯してアイテム(報酬)を取りに行くべきか、リスクは取らずにDP/HPを最後のボス戦まで確保しておくか」といったジレンマが生まれます。
このジレンマが生まれるところが、ダンジョン攻略の面白さの一つだと思います。
さらに、ヘブバンのバトルの勝敗条件は「1人でもHPが0になるとゲームオーバーになってしまう」というものですが、これがあることによって、「ダンジョンの最後のボスまで部隊を1人も死なせずに進められるか」という緊張感のあるダンジョン攻略体験が生まれます。
これらのシステムはすべて、ヘブバンの「人類が危機に瀕しており、常に死と隣合わせの世界」という世界観の上で緊張感のあるダンジョン攻略体験を実現するために採用されたと言えます。
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ちなみに、8月9日実装の「制圧戦」は、「探索の遊び」をより強めたものになっていそうで、ゼノブレイドなどのマップ探索体験に近い体験ができそうな雰囲気がするので個人的に楽しみです。
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アウトゲーム
ストーリーへの没入体験を促進する交流システム
次に交流システムについて分析してみます。
この交流システムも、ストーリー体験を良くするために、またゲーム的要素として成立させられるために設計されたシステムだと言えます。
ヘブバンでは全キャラクターと交流することができます。
交流するとそのキャラクターとの絆Lvが上がり、絆Lvが上がるとスタイルのステータスアップに繋がります。
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絆Lvをより高めるためには、プレイヤーが持つ「シックスセンス」のステータスを上げておく必要があります。
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「シックスセンス」の各ステータスの上げ方は、フリータイムに各施設で時間を過ごすとステータスを上げることができます。
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まとめると、以下のような構造になっていると言えます。
・ストーリー中の強敵を倒したいなら、スタイルを強くしよう
・スタイルを強くしたいなら、絆Lvを上げよう
・絆Lvを上げたいなら、交流をしよう
・交流をしたいなら、シックスセンスのステータスを上げよう
・シックスセンスのステータスを上げるなら、フリータイムの各施設で時間を過ごそう
そして設計意図としては、以下のようにまとめられます。
・ストーリーを楽しんでもらうため、登場人物に感情移入をしてもらいたい
・そのために登場人物と深い交流をしてほしい
・交流する目的をゲーム的に持たせたい
・だから交流することでスタイルを強化できるようにした
・そうすることで、登場人物の人となりを深く知ることができるし、ゲームを進めるための目的も作ることができる
ちなみに、この交流とシックスセンスのシステムは、ペルソナ5の「人間パラメータ」と「コープ」に大きく影響を受けていると思いました。
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ペルソナ5の「コープ」では、ゲーム内の登場人物と交流を深めるとコープレベルが上がり、バトルに有利なスキルを覚えることができるようになります。
そしてコープレベルを上げるためには、「人間パラメータ」をある程度上げる必要がある場合があります。
「人間パラメータ」は、特定の施設で時間を過ごすと、特定のパラメータが上昇します。
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ペルソナ5の「人間パラメータ」と「コープ」も、同様の設計思想を伺えるので、大きく影響を受けていると思いました。
その他
マネタイズ面での工夫
『ヘブバン』がスマホゲームとして、マネタイズにどのような工夫をしているかについても分析してみます。
①キャラ推しと箱推しができる
『ヘブバン』特有というよりは、スマホゲームとしてマネタイズを成り立たせる以上は必須の作り方ですが、『ヘブバン』も漏れなくキャラ推しと箱推しをすることができるゲームです。
『ヘブバン』に登場するキャラクターは得意技や性格、容姿が全く異なるので各キャラクターが各方面に尖っていて魅力的で、登場する48人の誰か1人は好きになってしまうんじゃないかと思います。
さらに、特定のキャラクター同士の掛け合いが面白かったり(例:めぐみとタマ)、特定の部隊の雰囲気が好き、みたいな箱推しも出来る構造になっています。
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そのため、マネタイズとしては推しキャラがガチャでピックアップされればガチャを引きたくなりますし、「この部隊を最強にしたい!」と部隊を強くするためにガチャを引きたくなるという、キャラ推しと箱推しの二軸によって売上に繋がっていると言えます。
②「スタイル」システム
スタイルシステムとは、同じキャラクターに対して複数種類の「スタイル」が存在しており、スタイルの種類によって得られるスキルやアビリティが異なるというものです。
スタイル間でレベルや一部のスキルは共有しているものの、SSスタイルのみ専用スキルを持っていたり、強いアビリティを持っています。
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僕がこのスタイルシステムを初めて見たのは『ロマンシング サガ リ・ユニバース』だったと思いますが、このシステムは本当に発明だなと思います。
というのもスタイルシステムは、運営型のスマホゲームで起きがちな以下の課題を解決した仕組みだと思います。
・世界観的にもコスト的にも、何種類も多くの新キャラクターを登場させられない
・運営型のゲームである以上、人気キャラクターを何度も登場させたいが、世界観的に同じ種類のキャラクターが何度もガチャに登場するのは違和感がある
このあたりの課題に対して、スタイルシステムにすることで、限られたキャラクター数の中で長期間ガチャ運営をできるようになるというメリットが生まれています。
③限界突破に強力な能力を付与
『ヘブバン』の主なマネタイズはガチャです。ガチャマネタイズの重要なポイントは、「同じ種類のキャラクターを入手した時のメリットをいかに付けるか」です。
その点で『ヘブバン』は、同じ種類のスタイルを入手して得られるピースによって限界突破をすることができるのですが、限界突破によって得られる効果が魅力的なものになっています。
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まずSSスタイル限定で、1凸すると「ターン開始時に前衛にいるとSPを+1する」という、バトルの戦術に大きな影響を与える効果を付与しています。
さらに、2凸すると衣装着せ替えができるようになり、好きなキャラクターの好きな衣装でバトルを楽しむことができます。
そして、3凸目はそのスタイルが持つスキルの効果を増幅する効果を持つので、これもバトルの戦術に大きな影響を与える効果を付与しています。
踏まえて、『ヘブバン』のガチャに関しては、以下のような心理になるため、自然と複数体を入手したくなる設計になっています。
・強いキャラがピックアップされた時はとりあえず1凸しておきたい(2体入手が必要)
・推しのキャラが出てきた時は2凸して着せ替えできるようにしておきたい(3体入手が必要)
・スタイルの強さを最大限まで引き出すには3凸(4体入手が必要)
④体験の異なる遊びを用意しつつ、売上に繋がるように設計されている
ガチャの仕組みだけでなく、遊ぶコンテンツの方にも売上に繋がるよう設計されていることが分かります。
例えば以下のようなモード。
・異時層:2部隊編成ルールによって、より多くのキャラ入手を必要とする。
・時計塔:制限ルール以内で勝利を目指すルールのため、「1つのスキルで多くのバフ・デバフを付与できるスタイル」の入手を必要とする。
これらは遊びのルールによって、多くのキャラ入手を必要としたり、特定の効果を持つキャラクター入手が必要になってくるため、間接的に売上に繋がる遊びの仕組みになっていると言えます。
徹底的に没入体験できるシステム
『ヘブバン』を遊んでいて、「ジオラマ」と「ライブ」が実装されているのは個人的に驚きました。
これらはどちらも、ヘブバンの世界に没入できる仕掛けとして実装されているものですが、それぞれの機能は本格的で、おまけ程度ではなくガッツリ楽しむことができます。
「ジオラマ」ではキャラクターモデルを自由に配置してポーズを変えたり、背景を変えたりと、ユーザーさんの「こういうシチュエーションの写真を撮りたい」にしっかり応えてくれる機能でした。
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さらにジオラマ機能を使ってSNS投稿キャンペーンを行い、それを公式生放送で紹介したりと、ゲーム内に留まらずにジオラマ機能がフル活用されています。
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こうした、SNSや生放送と連動した企画はスマホゲームならではの楽しさがありますね。
そしてもっと驚いたのが、「ライブ」機能です。
一言で言えば、『ヘブバン』の中でリズムゲームを遊ぶことができます。
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これはもはや1機能というよりもう1つのゲームですね・・・。
「世界観やキャラクターをより楽しめる機能として、キャラクターの3Dビュワーを入れよう!」みたいな判断は普通に分かるのですが、「世界観やキャラクターを楽しめる機能として、リズムゲームとジオラマを入れよう!」は凄いなと思いました。
これらの機能は、実装してすぐに売上に直結するものではないですし、特にリズムゲームなんてゲームをもう1本作っているようなものですから工数もそれなりにかかってると思います。
それでもこうして実装されているということは、ヘブバン運営が「ユーザーさんに世界観やキャラクターを最大限楽しんでもらいたい」という気持ちがとても強いのだと思います。
(加えて、このようなコンテンツを充実させることで、ヘブバンを長期的に楽しんでもらいたいという気持ちも見えてきます)
以上、『ヘブンバーンズレッド』のゲームデザインについて分析してみました。
『ヘブバン』はキャラクターが魅力的でストーリーが面白いのはもちろんですが、そのストーリーを最大限楽しむための仕組みがしっかりと用意されており、「ユーザーさんに世界観やキャラクターを最大限楽しんでもらいたい」というヘブバン運営の思いが伝わるようなゲームだなと感じました。