ゲームシナリオライターの3タイプを理解しよう!プロジェクトを成功に導くライター選びの秘訣
長年ゲーム業界でシナリオ制作に関わってきた経験から、ゲームシナリオライターには主に3つのタイプがあると感じています。
ゲームシナリオのクオリティやプロジェクトの成功は、ライターの選び方で大きく変わります。
ニーズに合ったスキルを持ったライターを選ばないと、せっかくの企画がうまく進まないこともあります。
今回は、その3つのタイプと、それぞれの適性や強みを解説します。
1. ゼロイチで構成し脚本まで書けるタイプのライター
まず紹介したいのが、「ゼロイチで構成し脚本まで書けるタイプ」のライターです。
このタイプのライターは、まったく白紙の状態からアイデアを生み出し、ゲームの世界観を構築し、全体のストーリーラインを練り上げることができます。
彼らは、物語をゼロから立ち上げ、完成形まで持っていく創造力と構成力を持っています。
ゲーム企画の初期段階から参入し、企画と一緒に世界観や物語を構築していくことが得意です。
物語重視のゲームではこのタイプのライターを早い段階から捕まえられるかどうかで、その後のプロジェクトの進捗やクオリティに大きな影響を与えるように思います。
このタイプのライターには下記の特徴があります。
ゲームデザインの理解と融合
ゲームのメカニクスやプレイヤーの動きと物語の展開をシームレスに組み合わせる能力が必要です。たとえば、戦闘シーンとキャラクターの成長を物語上で自然にリンクさせ、プレイヤーの体験を物語に深く結びつけるといった工夫が求められます。オリジナリティのある発想力
ゲームの舞台となる世界やキャラクターをゼロから生み出し、プレイヤーがワクワクするような独自の物語を創造する力。既存のテンプレートに頼らず、ゲーム全体の基盤となるオリジナルな世界設定を構築します。物語の構成力と展開力
ストーリーの起承転結を明確にし、ゲームプレイに応じたテンポの良い展開を設計する力が必要です。物語の盛り上がりをプレイヤーの進行とリンクさせ、感情の高まりやサプライズを演出することができます。キャラクター造形力
キャラクターの背景や動機を緻密に設定し、プレイヤーが感情移入しやすい存在に仕上げるスキルが求められます。プレイヤーにとって忘れられないキャラクターを作り上げることで、ゲーム全体の印象が大きく変わります。コミュニケーション能力
企画やディレクターとディスカッションし、創発的にものを作っていくコミュニケーション能力が必要です。企画の初期段階では度重なるピボットやリライトが発生しますがそんなときも「良い感じ」にやっていくコミュニケーション力も必要となるでしょう。
このタイプのライターは、特に新しいIPの開発や物語がメインコンテンツとなるゲームで、そのクリエイティブな力が存分に発揮されます。ゲームの「顔」となる物語を創造し、他のゲームとの差別化を図るためには、このタイプのライターが不可欠です。
2. プロットがあればそれをもとに脚本が書けるタイプのライター
次に紹介するのは、「プロットがあればそれをもとに脚本が書けるタイプ」のライターです。このタイプのライターは、既に与えられたプロットやストーリーボードをベースに、具体的なシーンやダイアログを詳細に構築することに長けています。
ディテールへの深い注意力
物語の進行を支えるために、キャラクターの台詞や行動を細かく調整し、プレイヤーの興味を引きつけるための要素を加えるスキルが求められます。ディテールがしっかりしていることで、物語全体のリアリティが高まり、プレイヤーの没入感が増します。適応力と柔軟な創作力
提示されたプロットに沿って、細かなニュアンスやキャラクターの魅力を引き出す能力。与えられた制約の中で最大限の創造性を発揮し、物語をより豊かにします。このスキルは、すでに決まっている世界観や設定を活かしつつ、物語を発展させるのに適しています。スピードと効率的な執筆力
プロットが用意されているため、アイデアの構築に時間を割く必要がない分、早いペースでシナリオを書き進めることが可能です。これは短納期のプロジェクトや複数人のライターが共同で作業する際に非常に有効です。チームとの協調性
他のライターやディレクターとの連携が必要であり、与えられた指示やフィードバックを迅速に取り入れ、ストーリーに反映させる能力が重要です。この協調性は、チーム全体のシナリオクオリティを高めるための重要な要素です。
このタイプのライターは、複数のライターが協力してシナリオを作るプロジェクトや、すでに大枠の物語が決まっている場合に特に有効です。短期間で結果を出す必要があるプロジェクトにおいても、その適応力とスピード感が強みとなります。
3. リライトが得意なタイプのライター
最後に、「リライトが得意なタイプ」のライターを紹介します。リライトの専門家は、既存のシナリオを改良し、全体の完成度を高める役割を担います。彼らの仕事は、シナリオの細部にまで目を光らせ、物語をより一貫性のある形に仕上げることです。
シナリオの分析力と批判的思考
既存のシナリオを評価し、その強みを活かしつつ、弱点を改善するための洞察力が求められます。物語の流れやキャラクターの行動が矛盾なく繋がっているかをチェックし、必要に応じて再構成する能力が必要です。優れた編集力
文章や対話の調整を行い、全体のテンポや雰囲気を向上させるスキル。リライト作業では、無駄な部分を削り、重要な要素を際立たせることで、シナリオ全体のクオリティを高めます。細部へのこだわりと整合性の調整力
シナリオ内の小さな矛盾や不整合を見つけ出し、それを物語全体に影響を与えずに修正する力が必要です。たとえば、キャラクターの性格や背景に基づいた自然な行動を確保し、プレイヤーの没入感を損なわないようにします。効果的なコミュニケーション能力
リライトには、元のライターやディレクターと密接に連携する力が重要です。意図やテーマを理解した上で、改善を施すことで、より一貫した物語を作り上げるための調整が求められます。
リライトが得意なライターは、プロジェクトの最終段階で特に重宝されます。彼らは物語全体の品質を向上させ、完成度の高いシナリオを仕上げるために不可欠な存在です。また、複数のライターが関わる大規模なプロジェクトにおいても、リライトの役割は非常に重要です。
まとめ:シナリオライター選びがプロジェクトのカギを握る
ゲームシナリオの成功は、適切なライター選びにかかっています。ゼロから創造する力を持つライター、プロットに基づいて迅速かつ的確にシナリオを書けるライター、既存のシナリオを磨き上げるライター。これら3つのタイプのライターそれぞれが持つ強みを理解し、プロジェクトに合ったライターを選ぶことで、ゲームのクオリティとプレイヤーの満足度は大きく向上するでしょう。
ゲーム開発は単なる物語の制作ではなく、プレイヤーに強い印象を残す体験をデザインするアートです。そのアートを成功させるためには、ライターの役割を正しく理解し、最適な人材を起用することが極めて重要です。あなたの次のプロジェクトが素晴らしいものとなるよう、この記事をライター選びのガイドとして役立ててください。