見出し画像

第1節 川崎フロンターレ戦(2/26)Review

アンジェ・ポステコグルー体制4年目となる2021マリノスの初戦は、昨シーズン勝ち点83を積み上げ、圧倒的な形で優勝を果たしたJ最強チーム川崎。

唯一の金曜開催ゲームということで注目度も高かったこのゲームを主にマリノス視点から振り返って行きたい。

・試合詳細

スクリーンショット 2021-02-27 9.48.15

スタジアム:等々力陸上競技場
入場者数:4,868人 (制限試合)
天候 : 曇  気温:10.8℃  湿度:27%
主審:西村 雄一   副審:聳城 巧、熊谷 幸剛
第4の審判員:岡部 拓人
VAR:山本 雄大 AVAR:山内 宏志(リーグ戦では今季からVAR導入)
DAZN実況:下田 恒幸 解説:戸田 和幸

・スタメン発表

画像2

サブメンバー
川崎 #27丹野、#7車屋、#16長谷川、#22橘田、#11小林悠、#19遠野、#20知念
横浜 #1高丘、#15伊藤、#16高野、#27松原、 #18水沼、#26渡辺、#38前田

まずはホーム川崎フロンターレについて。
こちらは試合前からの予想と全く同じ。ゼロックス・スーパーカップ(○3-2)時と同様のスタメンで開幕戦に臨む。注目はやはり三笘。マリノスとしては自身右サイドをいかにして抑えるかが鍵となる。

次にアウェイ横浜F・マリノス。
 こちらは今季から3バックを採用。試合中フォーメーションがどう変化するのかはのちに考察する。
GKにはオビを起用。昨シーズンの川崎戦(アウェイ●1-3)で活躍したことを考慮しての起用か。3CBは想定通り。新加入の岩田のフィット感が気になる。右の WB的位置には和田拓也を起用。松原、小池ではなく和田をスタメンとした理由とは?(後述)
トップ下の位置にはコンディション不良のマルコスに変わり天野純。そして左ウイングの位置には高卒ルーキー樺山諒乃介。アツい。高卒としては2007のアーリア以来、ユース以外では1995の松田直樹以来となる開幕戦のスタメン。「運と巡り合わせ」もかなり重要となるプロの世界、樺山はチャンピオンチーム相手という最高の形でのデビューとなる。

・前半総括:恥ずかしい展開。「受け」は負けしか産まない。

前半終了。スコア2-0で川崎リード。スタッツは以下。

シュート 12-8(枠内8-3)
ボール支配率 56%-44%
パス(成功率) 302(83%)-269(81%)
オフサイド 2-1 CK 4-3 ファウル 3-5

①落ち着いた立ち上がり。だがこれは、マリノスにとっては大失敗。

試合開始直後の選手立ち位置は以下の通り。
まずはマリノスがボールを保持した場面。

画像3

試合前の想定通り3-4-3のシステム。ティーラトン、和田は偽SBとなり、脇坂&田中碧と対峙。3CBの並びは右に岩田、真ん中にチアゴ。チアゴを左ではなく真ん中にしたのは三笘への対応のためか。左ウイング樺山はサイドに張る形。

次にマリノス守備時の形。

画像4

守備時はティーラトンが左SB、岩田が右SBのようになって昨シーズンのベースに近い4-2-3-1。ただ三笘のサイドの方に重きを置き、自軍の左サイド(川崎、家長の方)に誘導。そのため開始15分ほどは強烈な三笘のドリブルを浴びる機会は少なく、落ち着いた試合の入りとなった。ただこれはマリノス にとっては最悪の展開である。

近年の鬼木率いる川崎フロンターレのサッカーの特徴は、圧倒的にボールを保持し、細かいパスで相手DF陣を崩し切って華麗にゴールを決めるというものである。このサッカーは、一度「受け」に入った相手に対しては無類の強さを誇る。なぜなら選手の質がリーグ随一であるため、ボールをにぎっているだけで攻めきれない、面白くない日本代表の試合のような展開にはまずならない。いくらJ1のクラブといえど川崎の攻撃を90分耐え抜くようなことは至難の技なのである。つまり、川崎相手に「受け」に入ったのならばその時点で負けがほぼ確定すると言っても過言ではない。そこで近年のマリノスの戦い方を振り返るとどうか。

優勝決定前の2019年第33節での勝利(○4-1)、10人で最後まで互角に渡り合った去年の第30節(●1-3)。どちらの場合でも川崎に対し、マリノスの攻守の切り替えの早い高速ビルドアップ型の攻め、いわゆる「自分たちのサッカー」を展開したがゆえの結果である。それに対し今回の開幕節は、完全に「受け」で試合に入ってしまった。天野純が試合後コメントで語っていたように、「川崎をリスペクトしすぎた」。全く前半は上の2試合の時のような勢いを感じなかった。試合前のコメント等からもかなり期待をしていた分非常に残念。


②目立つミス、閉塞感。必然の失点。

攻撃時の川崎の特徴は先に述べた通りだが、守備においても川崎の完成度が高い。今回の前半は攻守共に両チームの完成度の差が如実に現れたと言える。

画像5

川崎の守備の特徴として、前線からの積極的プレスが挙げられる。前半は特にダミアンが出色の出来。闘牛のように猛烈なプレスをかけ、パスミスを狙う。また川崎側で特に効いていたのが田中碧。前線からプレスするダミアンに連動してCBからのパスコース(扇原、ティーラトン)に厳しいプレス、奪取。彼ら二人から川崎は複数回決定機を創出した。

マリノス側にはミスが目立つ。特に畠中、ティーラトン。川崎の連動によるミス以外にも、ノンプレッシャーの場面でのトラップミス、パスミス。落胆。そして、元々マリノスはしたからしっかり組み立てて崩していく川崎に近いサッカースタイルを得意としていないため、攻撃面では閉塞感が。特にオナイウは前線で孤立。やはり彼はトップ下、フォルス9的なポジションの方が輝けそう。

そういうわけで試合は川崎ペース。時間の問題だった失点は前半21分。

画像6

畠中の裏のスペースに散々飛び出してきていた田中碧、脇坂。その脇坂から凄まじい飛び出しを見せた山根にロブのスルーパス。さすが川崎のラストピース山根。天野はついていけないがこれを責めるのはかなり酷かと。そして山根のヒールでの落としから家長のボレー。川崎らしいきれいな崩しで今シーズンのJ1初ゴールが決まる。

画像9

(川崎フロンターレ公式Twitterより)

こうなると川崎は止まらない。その後は決定機のラッシュ。ただオビが止めまくる。ここは流石と言ったところか。完全フリーだった家長の決定機(32分ごろ)はバーの上。これが決まってたら家長ハットだったな。

そして42分川崎CK後一度はクリアするも中途半端になり最後は田中碧のクロスからまたしても家長のヘッドで失点。前半1失点で折り返せればワンチャンあるかと思ったが、これでは厳しい。

ただ、前半ポジティブな面も多少はあった。


③完成度の差を見せつけられた前半。その中にある希望。

全体的に低調なマリノスの選手たちの中、攻撃面で特に気を吐いていたのは天野純、樺山諒乃介の2名だろう。特に樺山は初めてプレーを見たが、かなりの衝撃を受けた。高校時代に怪物と謳われたその力を示して見せた。特に前半37分のこのプレー。J1最強DFと言われる川崎のジェジエウ、そして田中碧を一気に剥がしたこのドリブル。ボールの持ち方からは久保建英味を感じる。

樺山の師匠、天野純に関しても、シーズンをいい形でスタートできた。見せ場は前半17分のシーン。

画像7

天野が田中碧に猛烈なプレスをかけボールを奪取。その後一度左サイドの樺山に預け、DF3人を引きつけた樺山からの折り返しをシュート。前半で一番ゴールに近かったシーン。ここで先制できてれば流れは変わっていたかもしれない。

画像10

引用:https://www.f-marinos.com/tricolore_plus/article/24

また、岩田のフィット感もそれなりに良かった。移籍初戦のマッチアップが三笘だったのは不運としか言いようがないが、十分戦えていたと思う。心配だったのはティーラトンのコンディション。好調ならばサイドで"違い"を作れる選手であるだけに、復調に期待したい。

以上前半の総括。かなりの文量となってしまった。この前半が今シーズンワーストだったと言えるような1年になることを願うのみだ。


・後半総括:ある選手の投入で全くの別チームに変貌したマリノス、ただ…

後半開始時にマリノスは選手を2名交代。

#6扇原→#18水沼宏太 #35樺山→#38前田大然

前半目立っていた樺山の交代は意外だったが、守備の強度の面で物足りなかったところもあり、また水曜日のルヴァン杯出場も見越してのものかもしれない。
そしてこの交代によりフォーメーションも変更。

画像8

フォーメーションとしては4-2-4の形。天野を一列下げてボランチ、左WGに仲川、右WGに交代で入った水沼。2トップにはオナイウ阿道、前田大然。
フォーメーション変更後の後半のマリノスは、川崎相手に「自分たちのサッカー」を貫く。


①後半のマリノスを勢いづける要因となったのは間違いなく韋駄天。

まずは衝撃的なデータから紹介したい。

スプリント回数ランキング
1、仲川輝人(#23、マリノス) 29回(フル出場)
2、旗手怜央(#47、川崎) 28回(フル出場)
3、前田大然(#38、マリノス) 26回(45分出場)
4、脇坂泰斗(#8、川崎) 25回(76分出場)

一目瞭然である。前田のスプリント回数がおかしい。もともと快速FWとして有名だった前田であるが、今回の後半はそのスピードを完璧に生かし攻守に奮闘した。
随所に素晴らしいランニングを見せた前田だが、特に後半17分のプレスはその後ポストにヒットした決定機を生む。

画像11

前田が猛烈なプレスバックで田中碧のミスを誘発。その後マリノス得意のショートカウンターの形からオナイウがポスト直撃のミドルシュート。
後半は前田の活躍により2019のような縦に速いポステコサッカーが火をふき、数多くの決定機を作る。ただ、2019年の時攻撃のタクトを振ったマルコス・ジュニオールは今回いない。その役割を担ったのは誰か?


②前半消えていた男が本領発揮。やはりオナイウはシャドーで輝く。

後半、オナイウ阿道は輝く。

画像12

引用:https://www.f-marinos.com/tricolore_plus/article/24

昨シーズンの浦和戦(○6-2)でも感じたが、もともと大分、片野坂監督の元でシャドーとして活躍したオナイウは、CFより一つ下げた位置で本領を発揮する。ポスト直撃のミドルに加え、積極的に川崎守備陣のギャップでボールを要求、キープ、好きあらば反転してチャンスクリエイト。最高であった。マルコス復帰時、この男をどう使うかが今シーズンの鍵となるのは間違いない。前半はうまくいかなかったCF起用でも相手の脅威となれる選手に今シーズンは成長して欲しい。実力未知数で、コロナの影響で未だ合流できていない外国人CF、レオ・セアラに期待しすぎるわけにもいかない。


③3点目を狙う川崎。異次元の選手層。

マリノスが攻勢を強める結果となったのは、川崎が積極的にボールを保持しようとしなくなったことも影響している。マリノスのアタッキングフットボールばかり見ていると頭がバグってくるが、普通2点とったら守備を重視し、カウンターで追加点を狙うのが定石だろう。川崎のカウンターを主に担うのは三笘薫。2020年アウェイの圧巻ドリブルが記憶に新しい。

今回は結局川崎に3点目を許すことはなかったが、仮に3点目を許していれば完全にGAME SETだっただろう。

オフサイドだったが三笘の神トラップもあった。早く海外に行ってくれ(切実)

また、川崎の交代選手も豪華。
後半19分 #6シミッチ→#22橘田
  31分 #8脇坂→#7車屋 #9ダミアン→#11小林
  43分 #18三笘→#16長谷川 #41家長→#20知念

31分の脇坂交代後は旗手が左SB→左IHに。中盤もできるのかよ。三笘のインパクトが強すぎて霞むが、同じ大卒2年目でここまでポリバレントにやれるのは規格外だなあ。

ベンチ外組に大島僚太、登里享平、塚川孝輝、小塚和季などがいる。盤石すぎる、、、



・まとめ

以上のようにチームとしての完成度の差を見せつけられた前半と比較すれば、「自分たちのサッカー」をそれなりに展開できた後半は評価できるものだと思います。個人的にも、後半は見てて非常に面白かった。

川崎はやはり安定感の面ではリーグ内でずば抜けています。「受け」に入るチーム相手にはおそらく負けることはないでしょう。次マリノスが川崎と対戦するのは最終節(ホーム)。この試合が消化試合にならないことを願います。

マリノスの次回のリーグ戦相手はサンフレッチェ広島(日産スタジアム、3/7 13:00〜)。やはり脅威となるのはジュニオール・サントス。5000人制限試合ですがチケットが取れたので私は現地観戦して来ようと思います。楽しみ。

これで開幕戦のReviewは終わりです。ここまで読んでくださった方(いないかも)ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集