ストーリーが世界を滅ぼす
物語はずっと「よいもの」とされてきたが、ポピュリストの武器は勧善懲悪の物語を効果的に使うこと。SNSは物語のビッグバンを引き起こし、フェイクニュースなど物語の負の側面を拡張して社会を混乱させていると文学者が警告する。
ストーリーテリングの目的
私たちが一生の間に絶え間なく行う「コミュニケーション」の目的
→他人の心に影響を与えること
→考え方、感じ方、行動を自分になびかせること
ストーリーテリングはコミュニケーションの一形態
→ストーリーテリングの主たる機能も「なびかせること」
物語の力
物語は自分自身(喋るのをやめない)から逃避させてくれる
物語→感情を動かす→行動を変える
motion
同性婚に対する態度
→身近に同性愛者、黒人がいる人ほど理解がある
→物語の登場人物を人は友達だと勘違いし、同性愛者や黒人が出る物語に多く触れている人ほど寛容な態度をとる
物語は道徳的(普遍的な道徳)であるのではなく、道徳主義的である。
物語の止めようのない道徳主義が集団内の絆の構築に大きなプラスになる
物語は共感装置。これが機能する時、私たちは別の世界、別の人の心に飛ばされる。物語はお互いを他者として見るのを究極の形でやめさせてくれる。「彼ら」が「私たち」になる。
集団の外の人より、集団の中の人に共感を覚えやすい。「私たちー彼ら」の境界線をくっきりと際立たせる。悪役を押し付けられた相手の人間性に対して、道徳的に麻痺した状態を招く。
超大国は相対的な寛容さによって繁栄し、やがて国家のアイデンティティを保っていた接着剤が持たなくなる転換点を迎え、衰退する。超大国はアイデンティティの意識を強化する物語(神話、民話、大衆文化)によってまとまっている。
道徳的な行為ができるかどうかは運。生まれた時に配られたカードが悪ければ私たちは犯罪をしないと生きていけなかった可能性もある。時代と地域によっても道徳的か道徳的でないかという基準は変わる。物語に出てくるような平面的な悪者は存在せず、みんなトゥルーストーリーに従って動いている。
ハイダージンメル効果
全員が同じ映画を見ても違う物語を見る人間の性向
「私が現実をかたどるのに使うナラティブは、他の人のナラティブとは違って、本当に正しくあてがったもの」だと全員が信じている。
世界で無秩序な出来事が起こる
→ナラティブの鋳型でその無秩序をかたどる
その鋳型からはみ出したものは潰されるか切り捨てられる
このように、私たちはナラティブの鋳型をそのナラティブが真であると証明するエビデンスの捏造に使う。
「いまや明白に思われる一つの事実は、自分が何をするかを自覚する一瞬前にー主観的には自分が何でも好きなことをする自由があるように見えるときにーあなたの脳はすでにあなたが何をするかを決めていることだその後であなたはこの『意思決定』を意識し、自分がその意思決定をしているところだと思い込む」
ポスト真実の時代
エビデンスの力が失われた時代
最も優れた物語を基準に決められる夢の国
学術界のイデオロギー的同質性→キャンセルカルチャー
「インフォカリプス(情報の終焉)」で、ありとあらゆるエビデンスの捏造が可能になるがゆえに、どんなエビデンスも否定できるようになり、合理的な意思決定の礎となるべきエビデンスが崩壊する。それに続くのは「デモカリプス(リベラルデモクラシーの終焉)」だ。
ストーリーテラーが世界を支配する
トランプ
ジャーナリズムがつくる物語の宣伝効果も利用
・物語を憎み、抵抗せよ。
・だがストーリーテラーを憎まないよう必死で努めよ。
・そして平和とあなた自身の魂のために、物語にだまされている気の毒な輩を軽蔑するな。本人が悪いのではないのだから。