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愛されなくても別に

自分は凡人だという自負がある。
家庭環境は少々変わっていたかもしれないが小中高大と進学し新卒で就職した私の人生は「非凡」とは程遠い。特段成績が良かったことも悪かったこともなく、秀でた才能など一つもない。自分の平凡さについては小学生の頃から重々承知していた。

だからこそ「普通ではない」人に興味があるのかもしれない。普通ではない親のもとに生まれ普通ではない環境下で普通ではない人生を過ごしてきた二人のことが気になってしょうがない。

しかし、この本に出てくる二人の少女は実際にこの地球に、日本に、存在している気がしてならない。
日本のどこかに宮田と江永の住んでいるアパートはあるし、宮田と江永と堀口が働いているコンビニはある。ここに出てくる人たちが「普通ではない」なんて誰も言い切れない。自分とは違う人生を歩んでいることは確かだが、そんなの世の中の誰もがそうだ。誰も私と同じ人生は歩めない。

「別に幸せじゃなくても生きてていいし、死にたいと思い続けながら生きててもいいんだよなってさっき思った。泳いでるイワナ見て」

作中のこの二行にどれだけ救われたか、私はきっと忘れない。忘れたくない。

「普通」なんてないこと。
自分と全く違う人生を歩んでいる人がいること。
何気ない一言が誰かを救うことがあること。
つらく苦しい経験を繰り返したからこそ、誰かに優しくなれること。自分の言われたかった言葉を掛けられること。

平凡な今の私の地獄も、不幸も、きっと無駄じゃないって、信じたい。そう思えた作品だった。


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