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#131_解雇予告手当を払えば一方的に解雇できるわけではない
先日、放送法に基づく某特殊法人の番組を見ていたのですが、いきなり一方的に解雇を通告された労働者に対して、「労働基準法上、解雇するときは少なくとも30日前に予告をしなければならず、30日前に予告しない場合、いわゆる解雇予告手当(30日以上分の賃金)を支払う必要があるから、泣き寝入りせず、解雇予告手当を請求すべき」というアドバイスが紹介されていました。
それ自体はそのとおりなのですが、ちょっと気になる点があります。
そもそも日本において、雇い主が労働者を解雇することは、(少なくとも法律の世界では)それなりにハードルが高いものです。この点には、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」とした昔の有名な最高裁判例があり、労働契約法という法律にも明文化されています。
第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
そして、解雇予告手当を支払ったからといって、それだけで合理的であったり相当であると認められるわけではありません。その労働者の能力がどうしようもなく低いとか、雇い主側の経営状態がとても悪くなったなどの理由が必要であり、それはそんなに簡単に認められるものではありません。
なので、私が少し気になったのは、1か月分給料を支払えば(あるいは1か月前に言えば)一方的に解雇できるし、解雇されるのはやむを得ない、というメッセージになってしまってはいないか、ということです。
そもそも信頼関係がゼロで、もう働けない、という場合は仕方ないかもしれませんが、それでも何でも働かなければならない、という状況に置かれている人もいるのではないかと思います。そのような場合は、そもそも使用者側からの解雇というのは、法律上、そんなに簡単に認められるものではないという点を知識として持っておくことが大事です。