教官30年目で実行する新たな4つの挑戦
挑戦の理由
フライトインストラクター資格を1992年に取得、個人レッスン業務を開始、後に東京にある渡米前準備訓練校の講師としてスクールに所属、1995年からは実機運航する在日米軍基地フライトスクールで実践経験を磨き、Chief InstructorからFAA DPE(試験官)やManager(スクール長)を務め、2009年には米軍基地で培った経験を日本国内で提供できるように教育事業を開始し、30年目となる節目の2022年に至るまで常に訓練生にとってベストとは何か?という事を模索してきました。そして米軍基地での仕事や立ち上げた事業で教官の育成には何がベストか?という事にも常に意識を傾けてきたつもりです。
2022年にはアメリカで実機教官に復帰します。同時にチャーターパイロットとしてデビューします。二つの草鞋を履くことができた(採用された)背景には私の過去の経験が評価されたことだと雇用主から聞かされました。なのでこの経験と考え方をコミュニティーへ還元し、同じ方法で夢を実現する人を増やすことも私の使命だとも思っています。常に行動の基盤は「教官」と自負しています。
コミュニケーションのスタイルの変化
SNSが巷に溢れ、多くのコミュニティーが誕生し、情報を受け取ることやネットワークを構築する環境は既に出来上がっているように感じます。開催している管理者達の熱い想いはこの業界ならではの「苦労を苦労と思わない達人達」の想いが生きています。
一方でパイロットを目指す参加者達の中には、そこにいる方々にまるでgoogleで検索するように、一方的に質問を投げ、生身の人間が回答しているにも関わらず、お礼もなく報告もない実態が溢れているように思えます。お礼を期待しているという意味ではなく、自分のアドバイスが効果的だったのかな?もっと他の方法もあったのかな?自分も勉強したいな。などのコミュニケーションを期待しているのです。
航空会社に限らず多くの会社の人事採用担当者の言葉として「コミュニケーションが取れる人に来てほしい」というコメントが多いことに気づき確信しました。
もっとコミュニケーション能力を育成する必要があるのではないか
掲示板に書き込むだけのスタイルからリアルタイムなアナログ的ディスカッションをするスタイルも今の時代でも必要な事だと思います。
コロナ禍に入って勉強を一人でするケースも多くなりました。昔のように教室に一日中いて周りの訓練生との雑談をする機会も減り、空港に行けば別のスクールとの交流もなくなりました。スクールに足を運んで空気感を感ずることも難しくなりました。
スクールを選ぶコツはなんですか?は聞かれる質問の一つです。
大規模で有名なスクール、多くの卒業生がエアラインに入っている、知り合いの紹介、費用、場所、気候、機材、教官数、寮、食事など様々な要因があると思います。
アメリカ国内だと地元にある多くの選択肢の中から自分の肌感覚で選べる自由度が大きいですが、日本からアメリカ航空留学を考えている人にとってはそう簡単にはできない話です。
ただ一つ言えるのは、前述した要因は全て自分以外の要素であるということです。そこにスクール選択の理由を依存してしまうと、自分の計画したものと差異が生じ始めた時に不満や言い訳や不信感が出てくる。
天気が悪かったから、機材が壊れたから、教官が合わなかったから、などはよくある話です。というかパイロット訓練では普通に発生していることです。そこを選んだ自分の責任だと考えて行動できるかどうかが大事だと思います。
どんな環境でも素晴らしい教官と巡り会えたら訓練は成功すると思って構いません。素晴らしい教官は訓練生のタイプに合わせて成長させてくれるからです。資格を取れたから成功、取れなかったから失敗という意味ではありません。資格取得に至らなくとも精神的に成長して別の分野で成功されている方も多く見受けます。素晴らしい教官=Mentorです。
訓練生の成功の鍵は先生の力量と訓練生の覚悟の二つだと思います。
アメリカでは訓練生が教官を指名できます。変更も要求できます。訓練が始まってしまうと先生を変えると違った教え方で学ぶ経験にもなりますが、実際はお金も時間もかかってしまいますのでどちらがいいとは言い難いですが。
残念ながら今の歴史的なパイロット不足の時代では訓練生の学習スタイルを的確に見極め指導できる先生は数少ないと思ってください。アメリカのフライトスクール経営者からの声としてナンバーワンに挙げられる嘆きの声です。特に社会経験のないまたは少ない若い教官にその傾向が見られます。逆に社会経験を積んでパイロットを目指した教官にはその傾向は少なく見受けれらます。社会経験を積むことによりどの業界でも活躍できる人間力が磨かれているとも言えるでしょう。
これらを見聞きしている内に確信しました。
自分に合う先生を見極める経験を積む必要がある
人に教える経験を十分積む必要がある
フライトスクール側は「良い先生」を欲しがっている
そうしてたどり着いたのが次の4つの環境づくりです。
訓練生の立場:学習時にアウトプット作業をする環境
教官候補生の立場:教える練習をする環境
教官の立場:自身を雇用側に売り込む環境
スクール側の立場:良い先生を探す場所(環境)
これを国内外やフライトスクールの垣根をこえてみんなで成長していけるものにする。そして無料で参加できるようにする。
まずはやってみるという私のポリシーで環境づくりを初めてみることにしました。試行錯誤でどんどん変化して成長していきます。やっていく途中で新しいプラットフォームが誕生するかもしれない。この変化の激しいデジタル時代に同じことをやっていては時代についていけないとも思うのです。
なので私自身が勉強し続けなければいけないと思っています。オンライン学習には何がベストなのか。最新の手法を自身で経験しなければいけない。最高の教育環境を提供している場所に自分の身を置いてみよう。そう決心しました。
Embry-Riddle Aeronautical Universityのオンライン大学院に入学する
このような決意をもとに次の4つの挑戦を開始します!
① スクールの属性に関わらず誰もが一緒に勉強できる環境を作る挑戦
国内外に多くあるフライトスクールは基本的には同じ内容を教えています。FAA発行のテキストは多くの国で基本情報として活用されています。アメリカでもFAAの情報をもとに各民間会社が独自に教材やシラバスを作っています。
実験的に一つの民間会社のシラバスを活用してみます。ロッドマチャド氏というアメリカではフライトインストラクターや講演者として活躍しているベテラン教官です。彼の教材を活用するきっかけとなったのは以前所属していた在日米軍基地での会議でした。これまで先生が教室で教えるといういわゆるGround School方式の検討会でした。従来の定期的なスケジュールで教室に集まって授業をする昔ながらの方法を変えるにはどうするか?生徒側の意見、先生側の意見、運営側の意見を考慮しました。結論がロッド式で行こうでした。
ロッド式フライト訓練シラバス
Private Pilot取得のための最初のフライト訓練から実地試験合格までの道を丁寧に示しています。Ground Schoolだけでは分かりにくい。Flight Lessonだけは知識が足りない。この問題を各レッスンに記された知識と技術の両方から攻めることができます。
未経験者の自習者にとっては明確な道標になるでしょう。既にフライト訓練を始めている訓練生にとって、教官を目指している人にとって、教官を始めたばかりの人は、ロッド大先生からヒントも多くもらえるでしょう。
実際前述した在日米軍基地での会議でも同様の意見が出ていました。極端な話ロッドのやり方でやればみんなロッドみたいなパイロットになれるぞ!と興奮していましたのを覚えています。
各レッスンのディスカッション部屋を作ります。イメージは同じレッスンを受けている訓練生同士があーだこーだ言い合う部屋です。そこに先輩訓練生が入ってきてアドバイスをするなど、フライトスクールでは普通に見られる光景です。
② 教えることは学ぶことを実践できる環境を作る挑戦
日本では教員免許を取得するには現場での教育実習が必修です。それでも教員として採用されても研修が数多く準備されています。フライトインストラクター取得時には教育実習もなければ、採用されても即現場です。
Private PilotやInstrument Ratingといったプロになるための基礎資格を取得されたパイロットで、将来はフライトインストラクターを目指す方にはぜひ心掛けてほしい教育実習体験です。
前述の「各レッスンのディスカッション部屋に先輩訓練生が入ってきてアドバイスをする」行動です。たくさんの質問を受けて、知らない事を知って、自分の知識を深めていってほしいと思います。
実はこの活動はMaster CFIへの道にも繋がっているのです。Master CFIはO1ビザへの登竜門だでも書いたようにMaster CFIの取得から就労ビザへの道へも繋がっているのです。一石三鳥以上にもなるこんな美味しい話はないと思いませんか。
③ プロデビューするオーディション舞台の環境を作る挑戦
最初に書いた在日米軍基地での経験。アメリカ人は頻繁に表彰をします。表彰されるとレジメにも書きます。そしてキャリアアップに直結します。LinkedInを見てもらえるとアメリカでの就職活動の実態がわかるでしょう。
日本人がアメリカで訓練を受け資格を取る。ここまではどこのフライトスクールでも実現できます。フライトインストラクターになって働く。ここも大学に通いインターンシップ制度を活用すれば普通にできます。しかしその次のステップであるビザをスポンサーしてもらうにはそれなりの人材にならなくてはいけません。OPTはO1ビザ取得の絶好のチャンスでも書きました。
目出つ!表彰される!このことが実現できるように舞台を作ります。
舞台の上で生徒から「この先生いいよ」とというオススメをもらう仕組みを作ります。オススメを上げる生徒ももらった先生も目立つようになります。
舞台を見る席には審査員側にはフライトスクール運営側の方々を入れます。前述したようにフライトスクールは良い教官を探しているのです。少なくとも私が所属するAirSmart Aviation Academyでは良い教官を採用していきます。
この方法をロッド大先生に報告して許可をもらう際に言われたありがたいコメントを紹介させてください。私もやる気が俄然出てきました。
Aviation needs enthusiastic instructors like you.(航空界には、あなたのような熱意ある教官が必要です。)
そしてロッド大先生にもこのプラットフォームに入っていただくことができました。
NAFI Master CFIのディレクターであるジョンさんからもご賛同いただき参加いただいてます(2022年4月5日)
下のQRコードから無料で参加できます。2022年4月4日現在めちゃ少ないです!作ったばかりなので(笑)
④ 自分自身がアメリカ最先端の勉強方法を経験する挑戦
2008年に始めて参加(入学)したEmbry-Riddle Aeronautical UniversityのMaster of Science in Aeronautics(航空学専攻修士課程)では全てオンラインの講義でした。その当時から画期的な方法を駆使して授業が実施されていました。その手法を用いて私なりに授業を提供してきました。
しかし既に14年前のこと。今ではもっと凄いことになっているはず。
最先端のオンライン講座を受講してTamaDojoの手法を考える。
航空学修士号を取得することでまた一歩知らない世界を知ることができる。
Embry-Riddle航空大学に行くって言ったらよく聞かれた質問も参考にしてください。
私のMentorのBobbie Suellから言われた一言「Never Stop Learning」を忘れずに精進します。自身の教官の資質を高めることにも繋がると思い今回新入生となることにしました。亡きBobbieのお墓の前で誓いました。このブログを書いているのは今日4月4日はBobbieの命日。