記憶に残る天気の演出 すずが乗り越えたかった雨の記憶
竜とそばかすの姫 感想&考察2本です。
今回は天気について書きます。
大まかなあらすじは前回の記事にて◯
雨の記憶、天気と連動するすずの心情
本作では、天気の表現をあまり過剰に行わない、むしろ基本的には晴れているが、すずの心情が大きく変わる時に天気が崩れる演出がなされている。
まず初めに大きく天気が変わるのが、母の事故シーン、母が亡くなる理由となった川の増水=少女の救出は、突然ふった雨の影響であることは間違いない。
母を失い涙するすずの顔にも容赦なく雨が降り、すずの中では雨=負の記憶となった。
その後、雨が印象的に描かれたのはラストシーンのみ。竜の救済に向かうすず、最寄駅到着時には降っていなかった雨が突然降り始める。走り続けるすずにまたも雨が容赦なくふりつけていた。ここで竜を助けられなければ、雨の呪縛は解けなかったかもしれない。
前回の記事に書いたように、竜を助けることですずは自身の行動と母の行動を肯定し、自身として生きていくことを選べるようになる。
地元へ無事戻ってきたすずを待つのは、晴れ渡った雨上がりの夏の空だった。恐らく母が亡くなった日も同じように雨の後は晴れた空が見えたはずだが、その時のすずはそれを意識して見上げることもできなかっただろう。
友達や家族と共に空を見上げるすずの心情と、雨上がりの空は充分なほどリンクしていたと思う。