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羽田空港地上衝突事故 最大の疑問点

事故直後の報道から一貫して不可解な事がある。
ここが最大のポイントであり、真相であると筆者は考えている。

それは海保機と管制塔との交信記録のない空白の時間帯である。
だが管制塔との交信が"グランド"、"タワー"など複数ある事も一般には知られておらず、わかりにくい。
そこで前の記事で2024年1月2日のJAL機と海保機の交信記録を視覚化して整理し、疑問点や注釈を加筆した。ご興味があれば一読されたい。
出来るだけわかりやすくしたつもりではあるが、馴染みがない方々にはわかりにくいかもしれない。
ご理解の上、ご容赦いただきたい。

交信記録から視える疑問点


海保機と管制塔の交信記録及び補足

《1》管制塔から海保機への指示と「No.1」

海保機は「Holding Point」と復唱しているので、間違いなく停止位置と認識していたであろう。
もっとも誘導路上のポイントを指定された場合には、滑走路の手前の停止位置という意味である。
滑走路に進入するためには、管制官の許可が必須である。
仮に「Holding Point」と言われなくても、必ず指定の場所で停止しなければならない。
「No.1」と言わても、それは離陸の順が一番であって「滑走路進入許可ではない」。過去の記事で何度も取り上げているが、これはパイロット、管制官等には自明のルールである。
「No.1」は世界中で日常的に使用されており、これを誤認や錯誤するパイロットがいるであろうか。
しかも機長となっている経験豊富なパイロットが、である。
仮に機長・副操縦士が他の基地からの転属直後であったとしても、前記の理由から錯誤や誤認は考えにくい。

《2》海保機の復唱と副操縦士

不思議な事に報道は皆無と言ってよい程、「副操縦士」について言及していない。
①、②の交信は副操縦士も間違いなく聞いており、同じく「停止位置までの移動」と解釈していたはずである。
航空機は個人のソロフライト(単独飛行)等を除き、機長と副操縦士が搭乗する。もちろん副操縦士が搭乗するのには意味がある。
万一の時のためのセイフティ、副操縦士自身の訓練(飛行経験)等である。
一般的には機長が操縦し、副操縦士は無線交信を担当していることが多い。
場合によってはその逆の事もある。
どちらにせよ、交信は必ず機長と副操縦士の最低二人が聞いている。
今回は旅客機ではないので、他のクルーも聞いていた可能性は高い。
機長以外にも交信内容を理解していたクルーが他にも存在したのだが、何故かそこは無視されている。
そして、二人のパイロットが揃って錯誤、誤認した可能性はどれくらいあるのだろうか。

《3》90秒の空白

公開記録どおり②以降に交信が無かったとすれば、海保機は許可なく滑走路に侵入したことになる。
②の復唱が明確に行われていることから、機長も副操縦士も以後に「許可なく」滑走路に進入するとは考えにくい。
仮に機長が「錯誤」で滑走路に機を進めたとして、何故、副操縦士は制止しなかったのだろうか。
副操縦士が「停止位置までの移動する」と「滑走路進入許可はまだない」と認識していたのであれば、滑走路に機体が進んだ時点で止めるはずである。
副操縦士の制止で機長がミスに気づけば、少なくともその時点で機体を止めてタワーに交信するはずである。
それもなく滑走路に進入して行ったのであれば、副操縦士も機長と同様に「滑走路進入許可が出た」と認識していたと思われる。
本当に②以降に交信が無いのであれば、機長と副操縦士が二人とも錯誤をしたのだろうか。その可能性はどれくらいあるのだろうか。

《4》滑走路上に40秒?

海保機は約40秒滑走路上に停止していたと報道されている。
仮に海保機が報道のように錯誤をしてたとして、40秒もの間、機長も副操縦士も何も気づかないものであろうか。
二人が完全に「滑走路進入許可が出た」と認識していれば何の疑いもなく待っていたであろう。
だがこのような錯誤を機長と副操縦士が揃ってするだろうか。
筆者の記事では何度も「No.1」について言及しているが、日常的に使用し錯誤する可能性の極めて低いものである。

《5》2分30秒の怪

海保機がグランドからタワー・コントロールに周波数チェンジ

公開記録による②が最後の交信であったならば、衝突までの約2分30秒の空白は非常に不可解である。
②の交信はC5に向かって地上走行しながら交信していると思われる。
グランド・コントロールは離陸する滑走路の誘導路上に機を誘導し、滑走路進入ポイント(この場合はC5)を指示するまでが仕事である。
つまりグランド・コントロール(地上管制)からタワー・コントロール(管制塔)に周波数チェンジを指示された時点で、グランド・コントロールの誘導は終わったということである。
グランド・コントロールから海保機への最後の交信から、海保機がタワーにコンタクトするまにで18秒ある。
この間にも海保機はC誘導路上をC5に向かって走行していたと思われる。
海保機が周波数チェンジ後にタワー・コントロールにコンタクトした時点では、C5に近づいていたと思われる。
空白の交信90秒+滑走路上に停止していた40秒の2分30秒間が非常に不可解である。
この間、本当に何らの交信もなく、海保機内で何らの進言や確認等はなかったのであろうか。

長くなったので、疑問点に関する考察とまとめは次からの記事で行うことにする。

犠牲になられた海上保安官の皆様のご冥福を心からお祈りしています。
怪我を負われた乗客、クルーの皆様にも心からお見舞い申し上げます。

基礎知識として、筆者のいくつかの記事も宜しければ参照してください。

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