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【レビュー】『黄昏ニ眠ル街』を駆け抜ける

 本作をプレイするきっかけとなったのは作者さんのポスト(旧ツイート)でした。

作者の方はどうやらイラストレーターさんのようで、描かれるキャラクターや世界観がとても魅力的なんです。こんな街を散策できるなんて夢のようじゃないか!と思いプレイ予定となりました。発見した当初はまだ発売前で、さらに発売してもPCのみという状態だったので、いつかコンソールに移植されることを夢見てのリストインでした。そして発売の翌年(2022年)にPS4とSwitchに移植され(しかも私の誕生日だった)やっとプレイ環境が整ったのですが、他に遊びたいゲームがあったため今の今まで積んでいました。大作の息抜きにのんびりしたいなぁと思ってこのタイミングでのプレイとなりました。

ーあらすじー
 旅をしている少女ユクモ、ある日不思議な力に巻き込まれたことにより、乗っていた飛行船が壊れてしまいます。飛行船のエネルギーとなる大地の源を集めるために、突如霧に包まれてしまった東方の街々を散策することとなります。

ーどんなゲーム?ー
 プレイヤーは主人公のユクモを操作し、街中に隠された大地の源を探します。街中に隠れるようにあるもの、テクニックを使わないと取れないもの、住人の依頼を達成すると貰えるものなど様々。さらに街には聖域があり、聖域内の大地の源も集める必要があります。


良かったところ

どこを切り取っても絵になる街並み

 期待通りの美しさでした。本当にどこを向いても美しい街並みで、そうですね…例えるなら台湾の旧市街みたいな感じでしょうか。京都みたいに平面で入り組んでいるんじゃなくて、上下に入り組んでる感じ。そこに美しい木々が混ざり合うことで、一気にファンタジーさが増していました。フォトモードが大変充実しているので、お気に入りの場所で好きなように写真を撮る事ができます。Xにて『#タソマチフォト』で検索をかけるといろんな人がスクショを上げているので見てみるといいかも…!ストーリーはほとんどないのでネタバレの心配もありません。

この街並みを走り回れるなんて最高

 また、これすごいなぁ!と思ったのは、一定時間で昼と夜の切り替えがあること。朝日や夕陽も見れますし、昼は色鮮やかな街並み、夜は提灯でノスタルジックにライトアップされた街並みと2つの顔を見せてくれます。

 さらに、歩いて散策する他に飛行船で上空から観ることも可能なので、本当にありとあらゆる角度から美しい街並みを楽しむことができます。

程よくやりごたえのあるアクション

 正直言うと、本作は操作性が悪い方だと思います。ダッシュと言っても一番速くて小走りですし、ジャンプはふんわりしていて距離感を掴みにくいです。その割にアクション要素がガッツリ組み込まれています。しかし最初こそ苦戦しましたが慣れてくると、そのやり辛さでいかにこなしていくのかというまた新しい楽しみ方ができました。進めていくとスキルが手に入り、アクションにパターンも出てくるのですが、最初は行きたくても行けなかったところにだんだん行けるようになるのでとても気持ちよかったです。

足場の悪いところに行く機会が非常に多い

曲がおしゃれ

 街ではのどかなBGM、昼と夜でちょっと違ったりもします。アクションステージがあるところでは遺跡っぽい雰囲気の音楽+テクノっぽい音源って感じでしょうか。説明が難しい……。とりあえず聴いてみるべし!

やり込みがいのある量と質

 本作はエンディングを見るだけなら5時間以内には終わります。大地の源を必要最低限手に入れたら一旦は終了できるからです。しかし、それだとまだ街にはいろんなところに大地の源が残った状態となります。き、気になるじゃないか……!さらに、衣装や拠点の家具等のコレクション要素もあるので本編に対してやり込み要素はたくさんあります。エンディング後は少しだけ難しいものも出てきますができないほどではないです。(でも1個だけかなりシビアなものがあるかも…)頑張ればサクッと終わらせられる、そんな印象です。楽しい!

気になったところ

キャラクターの設定が薄い

 主人公のユクモはイラストで見るとわかりますが、可愛らしい子で衣装もいろいろ種類があるのですがどれも凝ったデザインをしていて、それはそれは魅力的な子なんです。しかし……喋らない、表情変化がない、イラストの可愛さの再現が3Dモデルでは足りない、以上の理由から愛着が湧きづらいです。さらにはどうしてユクモは旅をしているのか、どこに行こうとしているのか、それが全て不明扱いなのでキャラクター像が非常にぼんやりしています。ジャンプする時に「ほっ!」と勢いをつけて跳んだり、高いところによく行くので「おっとっと……」とよろめいたりとか少しでも性格が見えるようなモーションがあっても良かったかなぁ。エモートボタンはあるのですが、ポーズが変わるだけで表情は固定です。

もっと綺麗な映像で見たかった

 すごい綺麗な街並みであることは間違いないのですが、おそらく建物が多かったり、木の葉を舞わせていたりとにかくオブジェクトが多いからか、描画スピードが少しゆっくりです。結構近くに来てからカクッカクッと街並みがはっきりしだすという感じ。飛行船で飛んでいる時に花火を飛ばす時があるのですが、連発するとフレームレートが急に大きく落ちてしまいます。

 本作をある程度お金かけて、もう少し規模を大きくして作ったとしたらものすごい美麗探索神ゲーに化けるのは間違いないと思います。

複雑に入り組んだ街に対してナビゲーションが不足している

 本作は街に散らばる大地の源を集めるゲームです。1つの街にだいたい60個あるのですが、その探し方は本当にいろんなパターンがあります。中でも、『街中の〇〇を全て〇〇する』系が相当な曲者です。というのも、先述した通りこの街は上下に入り組んでおり、立体迷宮のようになっているからです。街の中で特定のものを探すのも難しいし、「さっき見たあれの場所に行きたいのに行き方がわからない!」と頻繁になります。私は大丈夫でしたが、方向音痴の人とは最高に相性が悪いです。よくゲーム画面の右下や左下に小マップが表示されるゲームがあると思いますが、本作はあれは絶対に必要だったと思います。地図はあると言えばあるのですが・・・

モノクロだし、小さいし、自分がどこにいるのかもわからないので、探索中はあんまり活用できそうにないです。この書かれている番号は大地の源の場所なのですが、それは助かりました。しかし、この番号のところに行くには・・・と、ここでも地図とにらめっこが必須となります。

復帰地点が必ずスタート地点

 このゲームには敵キャラクターはいませんが、落下死(死なのか?)はあります。海に落ちたり、アクションステージで足を踏み外したり等で、HPの概念は無いので街中の建物の屋根から落ちるのは平気です。なかなかジャンプの感覚が難しいのでよく落ちることになるとは思うのですが、一度落ちると必ずスタート地点に戻されます。街の探索中にうっかり海に落ちると街の入り口まで戻されますし、アクションステージは苦労してやっと奥まで来たのにステージ開始まで戻されます。アクションステージに関しては覚えゲーとして楽しむならまだいいかなとは思うのですが、ただでさえ迷いやすい街中では最後に踏んでいた足場に戻って欲しかったです。また同じ場所に向かうのに苦労するので・・・。逆に街の入り口に戻るのも苦労するので、「よし、もう帰ろう!」と入水するいわゆるデスルーラとしては使えますけどね!(笑)

総合:★★★☆☆(3.9)

 作者のnocrasさんのHPを見ていると、過去には私も遊んだゼルダやポケモンにも絵で関わっていたそうなのですが、どうやら個人でのゲーム制作は初の様子。ゲーム作りが専門ではない方が制作されてのクオリティとしては十分素晴らしいゲームだと思います。絵が描けて思い立つだけでこれだけできるなんて、天は二物を与えちゃうもんですね。実際のゲーム本編はnocrasさんが普段描いているイラストの実際にありそうでない世界観に入り込むような感覚になれました。

 ただ、いろいろと惜しいところがすごくあって、もっと綺麗な街並みを再現できるんじゃないか、もっとキャラクターを生き生きとさせられるんじゃないか、もっと動作をスムーズにできるんじゃないか、そう思ってしまうのは私が普段メジャーなゲームをすることが多いからなのでしょう。インタビュー記事を読んだところ「世界観を楽しんでもらうのがコンセプト」「自分のやりたいように作らせてくれるパブリッシャーにお願いした」とあることから、ゲーム性を追求するより、イラストレーターだからこその、目で見て入り込んで楽しむことを追求した作品となっているようで、そういう点では私も隅々までこの街を堪能できたのでコンセプトにあった楽しみ方ができたのかなと思います。

 バトルを楽しみたい根っからのゲーマーさんには向かないかもしれませんが、腰を据えて「素晴らしいなぁ・・・」と呟きながらのんびり遊びたい人にはおすすめしたい作品です。この記事を投稿した段階でe-shopでは最大50%オフまで割引したことがあるので、ぜひタイミングをみてお得に遊んでみてください。

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