【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 12/16号
注目のCPIで今月の利下げ可能性強まる
注目されていた11月の米CPI(消費者物価指数)は前年比2.7%上昇し、伸びは前月の2.6%から加速した。前月比は0.3%上昇し、7カ月ぶりの大幅な伸びを記録した。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が引き続き堅調な伸びとなった。上昇率は市場の予想通りだった。
このため今週17~18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)の会合で利下げに動くとの観測が強まっている。労働市場の鎮静化と家賃の伸び鈍化を背景に、利下げ実施にCPIが妨げとなる可能性は低いようだ。
今回のFOMCでは3回連続の利下げがほぼ確実視されているが、市場関係者の関心は来年の金利見通しへとシフトしつつある。インフレ圧力の高止まりに加え、来年初頭に利下げ一時休止との見方も出始めており、投資家の間では神経質なムードが広がっている。
CPIの内容を見てみると、住居費は前月から伸びが鈍化。同項目は、総合CPIの上昇率の40%近くを占めている。住居費はここ数年、最も根強いインフレ要因の一つだった。
特に住居費の伸び鈍化を考えれば、FOMCとしては安心して12月に政策金利を25ベーシスポイント(0.25%)引き下げ、2025年も利下げを継続できる可能性が大きい。
しかし、物価上昇圧力は新型コロナウイルス禍からの回復期に見られたピークからは弱まったものの、最近はインフレ抑制に向けた進展が横ばいとなっている。食品とエネルギーを除く財の価格は前月比0.3%上昇と、2023年5月以来の大きな伸び。家庭用調度品や衣料品の値上がりが影響した。この項目は過去1年半にわたり、ディスインフレ(インフレ収束)に大きく寄与していたのだ。またホテル宿泊費が2年ぶりの大幅な伸びとなったほか、自動車価格も上昇した。これは、2つのハリケーンが襲来した後に需要が一時的に増えたことを反映している可能性がある。
ナスダック2万ポイントに上昇
同じく11日、米国株式市場でナスダック総合指数が初めて2万ポイントを突破した。同指数は今年、人工知能(AI)への関心の高まりや金利低下観測を背景にハイテク株が大きく値上がりし、指数を押し上げていた。ナスダック総合指数は年初来では33%余り上昇。同指数の上昇を主導したのはアップル、エヌビディア、グーグルの親会社アルファベット、そして最近数週間ではテスラなどテクノロジーに重点を置く巨大企業だ。
この日のCPIを受けてFRB(米連邦準備理事会)が17~18日のFOMC で政策金利を引き下げるとの見方が強まったことも、2万ポイントの追い風となった。この日のナスダック総合指数は前日比1.8%高の2万0034.89ポイントで終了した。
同指数の上昇は成長とテクノロジーに大きく賭けていた投資家に利益をもたらした一方、バリュエーションの上昇や、超大型株が同指数に占める比重が大きく高まっている状況を巡り、不安をかき立てている。
問題は、この勢いが2025年も続くかどうかだ。来年は、膨らんだバリュエーション、市場心理、成長見通しの全てが、平均を上回るリターンを維持する上で大きな障壁となる可能性がある。ナスダック総合指数は、新形コロナウイルスのパンデミックにより世界の経済活動が停止した2020年序盤に大きく値下がりしたが、その後はFRBが政策金利をゼロ近辺まで引き下げたことや、米政府が経済対策を相次いで打ち出したことを受け、急速に持ち直した経緯がある。
2022年にはインフレ率が40年ぶりの高水準に上昇してFRBが一連の大幅利上げを余儀なくされる中、ナスダック総合指数は33%下落した。だが金利の上昇が予想されていた景気後退をもたらすことはなく、同指数はその後も上昇を続け、23年1月の安値10889ポイントから約90%以上上昇している。AIのビジネス面の可能性を巡る関心が高まったことも、同指数を押し上げたようだ。
円下落、短観後も利上げ見送り観測変わらず
13日の日本市場では円相場が約2週間ぶりとなる1ドル=153円台に下落。その背景には、この日日銀が発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は市場予想を上回ったものの、19日の金融政策決定会合で利上げが見送られるとの観測が根強く、このため円が売られている。一方、13日の株式は5営業日ぶりに反落。前日に日経平均株価が一時4万円台を回復した反動や前日の米国株安の影響から、主要株価指数は1%弱下げている。
日銀短観によると、大企業製造業の景況感はプラス14と2四半期ぶりに改善し、市場予想(プラス13)も上回った。「企業の物価見通し」は前回調査から変わらずで、緩やかな上昇基調が維持された。
金利スワップ市場では18、19日の日銀会合での利上げ織り込みが16%と、12日時点の15%とほぼ変わらず。円は短観発表直後に円はやや買われる場面もあったが、すぐに売り優勢となった。
短観は総じて予想より良かったのだが、前週の一連の報道を受けた利上げ見送り観測を打ち消すほど強いものではなかったと評価される。円金利も低下しており、これを横目に円売り安心感が出ているのだろう。
利上げ予想は来年1月が最多に
12月利上げ観測が後退した背景には、植田日銀総裁は11月の日本経済新聞とのインタビューがある。同総裁はインタビューのなかで、追加利上げのタイミングが近づいているとの見解を示す一方、トランプ次期政権の政策を含めて米経済の見極めも必要とし、拙速な利上げを避ける考えも強調した。同インタビューに関してエコノミストの74%は選択肢を残すバランスの取れた発言と受け止めた。
1月の利上げを予想するエコノミストの多くは、米利下げ局面入りなどを背景に、円相場の急落リスクは後退したとみており、日銀が急ぐ理由はほとんどないとの見立てだ。複数の証券会社が利上げ時期の予想を12月から1月に変更した。
その理由を、12月の米FOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げ実施の可能性が高まり、円安リスクが軽減したためと説明している。トランプ氏の大統領就任演説での政策方針を見極めてから、日銀が利上げを決定すると大方は見ている。
トランプ氏の大統領就任は日銀が1月会合の結果を発表する4日前に当たる。日銀ウオッチャーの中には、マーケットの動向に加えて、トランプ次期米政権の発足により不確実性が高まる可能性があるとし、日銀が1月に利上げを実施できる保証はないとみる向きもある。
逆に12月利上げ派は、1月になれば市場がもっと不安定になっている可能性もあり、1月まで『待つ』ことのメリットがあまりないと指摘。「12月利上げの可能性がわずかに1月を上回る」との見方を示した。
足元のドル・円相場は12月の利上げ観測の後退もあり円安方向に進んでいる。植田総裁は7月の会合で追加利上げを決定した際、円安が物価に与える影響が強まっていることによる物価上振れのリスクに警戒感を示していた。
12月会合の利上げ確率が1月より高いのは、早めに動く方が正常化への強い意欲を示し、市場からの円安圧力をけん制できるという意見のためだ。1月に先送りした場合、為替への短期的影響は限定的でも従来の慎重な日銀に戻ったというメッセージとなり、円安へのけん制効果が中期的に薄れるとしている。
しかし、14日の日経新聞に「日銀、利上げ急がぬ方針」という記事が出た。おそらくこれで決まりだろう。その理由として、米政策の見極めと為替のようだ。さあ、その結果は19日にわかる。おそらくそれまでは、円は米FOMC に重点が移りながらも神経質な動きが続くかもしれない。
違った見方として、今週の円相場は対ドルで下落するというものだ。18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利下げが見込まれるものの、今後の利下げペース減速が示唆されればドル買い・円売りが強まりやすい。19日の日銀の金融政策決定会合と植田和男総裁の会見に影響を与える可能性があり、会合当日の為替水準によっては波乱含みの展開も予想される。円にとって、なかなか複雑な1週間になりそうだ。
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