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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 1/13号

12月の雇用統計で利下げ遠のく
12月の非農業部門雇用者数、25.6万人増-3月以来の大きな伸び。エコノミスト予想平均は16.5万人。前月は21.2万人増だった。なお、失業率4.1%、予想4.2%、予想外に低下-平均時給は前月比0.3%増、前年比3.9%増。

米経済はインフレ目標2%への進展が足踏みしているように見受けられる中、米金融当局者は利下げに関して今年は慎重に動く方針を示しており、今回の統計はそれを補強しそうだ。統計発表後に、次回利下げ時期の予想はさらに後ずれしたとみるエコノミストが大半。

JP モルガンは次の利下げは6月とした。バンク・オブ・アメリカは、利下げサイクルは終了したとし、「次のリスクは利上げ」と述べている。
今週、14日に12月の米PPI(生産者物価指数)と15日に米CPI(消費者物価指数)が公表される。次回のFOMC(連邦公開市場委員会)は1月28-29日に開かれる。

利下げペースがこの先減速するのは間違いなさそうだ。この日の米株式市場は雇用統計の結果に反応、NYダウは696ドル安で1.63%下落、同じくナスダックも1.63%の下落の317ポイント安。

米債券利回り急上昇に不吉な既視感、株価が急落した2022年や23年と酷似してきた
世界の株式市場は日本を除いて、1月2日から始まった。年明け早々から10年債利回りが上昇し、米株価も不安定な動きで2025年は始まったのだ。8日、米10年債利回は、昨年4月以来の4.7%に達した。9月から1%超上昇している。

債券利回りが急上昇しているため、かつて株価下落を招いた状況に近づいているという見方が台頭している。8日、米10年債利回りは4.7%に達した。9月から1本調子の上昇は株価が急落した2022年、23年と酷似している。経済成長にとって悪いニュースが出れば、株式市場に調整が入るリスクは短期的にやや高くなったと言える。

長期債利回りの上昇幅が大きいために利回り曲線がスティープ化(一般的には、期間が長くなるほど金利は高くなるため、普通イールド・カーブは右上がりのグラフになる。このイールド・カーブの傾きがさらに急(右上がり)になることをスティープ化するという)したが、これは米国の財政およびインフレへの懸念を示唆している。

金融政策への思惑から、今後いっそう動きが激しくなる可能性もある。市場は既に米国の利下げ見通しを修正し、7月までに織り込まれている利下げ回数は0.25ポイント1回になってきた(今回の雇用統計でさらに延びたのでは?)。

今のところ、物価下落と底堅い景気、段階的な金融緩和が同時進行する「ゴルディロックス(適温相場)」シナリオの実現を市場は確信していたようだ。とりわけ米国株について、大半の投資家は極めて強気で新年に入った。しかし、今のところトランプ次期政権の政策や関税によるインフレ圧力は軽視されている。違った見方として、利回りの急上昇は全て長期債で、短期債ではない。これは市場が現時点で米国の生産性改善に非常に強気で、関税のエスカレートに対する懸念がほぼゼロであると市場は見ているのかもしれない。関税引き上げによるインフレの影響は、前年比でみていくため、次の年だけ、つまり短期的にすぎないという楽観派も多いようだ。しかし、今回の雇用統計で市場の見方は変わるだろう。

ドルは「著しく過大評価」、短期的にだけ底堅いが下期は軟調-BofA
バンク・オブ・アメリカの主要10通貨「の為替戦略の責任者は、ドルは「著しく過大評価されており」、今年上期には底堅さを保つが下期には軟調になるとの見通しを示した。

同行の均衡モデル分析に基づくと「ドルは26%過大評価されているようだ。これは過去30年間で最も大きく、22%過大評価されていた2022年当時をも上回る」と、8日のリポートで指摘している。

主要10通貨で最も過大評価されているのはドルで、ポンド、スイス・フラン、円、ノルウェー・クローネがそれに続くという。この分析によると、ドルは「歴史的に極端な価値に達しており」、「著しく過大評価されている」ことを指摘している。

同レポートは「米国のインフレ政策、特に関税措置を背景に、ドルは短期的に底堅さを維持するが、年内に軟調になると予想している。世界の他国・地域が対応策をとる中で、こうした政策が米経済に打撃を及ぼすことになるからだ」と記した。

このレポートのような見方は現時点ではまだマイナー意見だが、十分気を付けておく必要がある。円に関して、ほとんどの日本の為替専門家と言われる人は日米金利差で円安を見込んでいるからだ。相場にはマイナー意見に耳を傾けておくことも重要だ。

マスク氏、連邦支出2兆ドル削減の目標後退
トランプ次期米政権で政府効率化省(DOGC)を率いるイーロン・マスク氏は、連邦支出を実際に2兆ドル(約316兆円)削減できるかどうかについて自ら疑問を呈した。自身が掲げていた目標からの後退を意味する。
同氏はインタビューで「2兆ドルを目指したいと思う。それは最善の結果のようなものだ」とマスク氏は発言。その上で、1兆ドル削減の「公算が大きい」と考えていると述べた。

2兆ドルという目標は元々、2024年11月の大統領選を控えてニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催されたトランプ氏の集会で、マスク氏自身が提示したものだった。ただ、専門家は当初から実現性に懐疑的な見方を示していた。

米連邦政府は2024会計年度に6兆7500億ドルを支出。そのうち5兆3000億ドル超を社会保障やヘルスケア、国防、退役軍人手当などが占めた。これらは政治的なハードルが高く、議会に削減を説得するのが難しいことでも知られている。

ここ数日で公約を後退させたのはマスク氏だけではない。なんとトランプ氏はロシアとウクライナの停戦実現について、選挙戦では大統領就任初日に可能だと主張していたが、7日の会見では6カ月かかる可能性があるとし、それまでの自らの発言を後退させた。

想像はしていたが、トランプ政権にとって公約のハードル引き下げは今後も頻繁に起こると思う。おそらく市場もわかっていたのだろう。トランプ政策を織り込むには至ってなかったから。

グリーンランド地域旗

トランプ氏、グリーンランド購入意向を示すが、その実現性は?
7日、トランプ次期米大統領がNATO(北大西洋条約機構)加盟国であるデンマークの自治領グリーンランドを米領土の一角に取り込みたいとの意欲を改めて表明した。すでに1期目の2019年に初めて購入意向を表明し、デンマーク政府に提案したものの一蹴されていた。グリーンランド自治政府も拒絶した。

トランプ次期大統領は今回、わが国の一部になれば(グリーンランドの)人々は多大な恩恵を受けるだろうとSNSに書き込んでいる。トランプ氏は購入できるのか?グリーンランド自治政府のエーエデ首相は最近、独立に向けた動きを強めている。ただ、繰り返し強調するのがグリーンランドは売り物ではないし将来を決めるのは住民の判断に委ねられているという点だ。
同首相は7日、「(グリーンランドの住民ではない)デンマーク人や米国人らには意見を言う権利があるものの、われわれは病的な興奮状態に巻き込まれたり、外部からの圧力に惑わされたりして進路を逸らされるべきではない」と強く言い切っている。

グリーンランドはかつてデンマークの植民地だった。1953年に正式な領土の一部となってデンマーク憲法の適用下にある。このため法的地位の変更には憲法改正が欠かせない。2009年には、住民投票を通じてデンマークからの独立を宣言する権利を含む広範な自治権が付与された。

米国政府は以前にも領土欲を示しており、東西冷戦期のトルーマン政権が戦略的資産として1億ドル相当の金塊で購入しようとしたが、当時のデンマーク政府は植民地だったグリーンランドの売却を拒否した。
仮にグリーンランドが独立した場合、米国と連携する選択肢もある。グリーンランド住民の大多数は独立を望んでいるが、完全な独立が現実的だと考える人はほとんどいない。欧州連合(EU)の一員であるデンマークに経済面で依存しているためだ。

それでは、トランプ氏が関心を持つ理由はなにか。グリーンランドは米軍にとって戦略的重要性があり、弾道ミサイルの早期警戒システムを設置している。欧州から北米に至る弾道ミサイルの飛行ルートはグリーンランド上空を通過するのが最短になるためだ。

グリーンランド北西部のピツフィク空軍基地には米軍が常駐しているが、米国はグリーンランドでの軍事的な影響力を高める意向を示しており、グリーンランドやアイスランド、英国間の海域を監視するレーダーの設置を検討している。ロシア海軍の艦艇や原子力潜水艦には同海域が重要通航ルートになっているためだ。

1月10日の日経新聞の記事で「トランプ政策ドル離れ助長」という記事があった。彼の威嚇外交で国際金融市場ではドル離れが広がっているという内容だ。サブタイトルでは「人民元シフトの可能性」とある。おそらくアフリカ、東南アジアの諸国はトランプ次期大統領の威嚇外交に対抗するためには中国にすり寄るという外交政策を採る可能性は高い。

トランプ次期大統領は、ドル安を望んでいるが、このままいけば、ドル安というより、ドルの基軸通貨としての地位が危ぶまれるということだ。米国はドルの基軸通貨としてのメリットをなくすことになる。記事の中で各中央銀行は外貨準備で金の保有量が増えていると書いている。ただ、中央銀行の金保有増加は昨年の大統領選後ではなく、その前から始まっていた。各中央銀行はドルの基軸通貨としての実力をすでに疑問視し始めているのではないかと思っていた。したがって、インフレが収まりかけていた、この1~2年の金価格上昇は中央銀行の買いを囃したものだと筆者は思っていた。


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セミナー終了後には懇親会も予定していますので、ぜひご参加お待ちしています。


■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。


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