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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 10/7号

米労働市場は堅調、ソフトランディングの可能性高まる
4日発表の9月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数の伸びは市場予想を上回り、失業率は予想外に低下した。賃金の伸びは前年同月比で加速し、11月の大幅追加利下げの可能性が低下した。

非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比25万4000人増加。市場予想は15万人増だった。さらに失業率は予想の4.2%を下回り4.1%となった。平均時給賃金は前年同月比4.0%増、市場予想は3.8%増だった。

この雇用統計を受けて、シカゴ連銀総裁は、ブルームバーグのインタビューに答えて「この雇用者数、そして雇用統計全体が素晴らしい内容だ」と発言。「それでもなお、中央銀行として、単月の統計に過剰に反応することは望ましくないと考える」と語った。
また、インフレ率が当局目標の2%を下回るリスクがあるとの見方も示した。公表前までは、年内に少なくともあと50ベーシスポイント(bp)の利下げがあるとみられていたが、これが打ち消される格好となった。このため4日のNYでドルは上昇、対円では一時149円台に入った。

9月の雇用統計から米経済ソフトランディングの可能性を受けて、この日のNYダウは341ドル高、ナスダックも前日比1.22%高い。したがってシカゴの日経平均先物も4日の東京市場での日経平均の終値を900円超上回っている。週明けの東京市場は高く始まりそうだ。

石破、植田会談で日銀の年内利上げ観測後退か
円相場は3日日本時間午前中に1ドル=147円台前半と8月以来の安値を付けた。
前日、石破首相が植田日銀総裁との会談後、政策金利の引き上げに関して「政府としてあれこれ指図をする立場ではない」としながらも、「個人的には現在そのような環境にあるとは思っていない。追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と記者団に語った。
利上げに慎重な発言を受けて、市場では日銀による年内の利上げ観測が後退している。

市場では石破首相が日銀の独立性を尊重するとみられていただけに、今回の発言を受けて円安が急速に進んでいる。衆院選をにらんだハト派的な発言との指摘もあるが、一段の円安は輸入物価の上昇を通じた消費者物価の押し上げ要因となり、政府の物価高対策と矛盾する。日銀は円安に伴う物価上振れリスクを理由に7月に利上げしており、今後の日銀の金融政策運営は難しい状況に直面する可能性がある。石破、植田両氏の会合を受けて、追加利上げの可能性はやや低下したのではないか。首相発言の狙いを想像してみると、今月27日の衆議院選挙をにらんだものとみている。

先月27日の自民党総裁で石破氏が選出された後、1ドル=141円台に上昇した円相場は、3日に一時1カ月ぶりの147円台まで売り戻されたのだ。石破内閣の支持率は岸田内閣発足時を軒並み下回った。報道各社の世論調査では共同通信が50.7%、日本経済新聞が51%、読売新聞が51%など。最近の内閣発足時の支持率は2021年10月の岸田内閣が55.7%、20年9月の菅内閣が66.4%、12年12月の第2次安倍内閣が62.0%だった。

最近の内閣と比べ支持率が低いスタートとなったことを背景に、 石破首相が衆院選に向けて日銀の早期追加利上げ観測をけん制して円安や株高を促すことは窮余の一策という面もあるようだ。これで日銀が年内といった早期に追加利上げに動く可能性は、政治の面から明らかに低下した。

 ブルームバーグによると、9月の日銀政策決定会合前のエコノミスト予想では、日銀の追加利上げの時期は12月会合の53%が最も多く、10月の15%と合わせた年内の予想は7割弱を占めていた。日銀の利上げは石破首相の「望ましくない」発言でしばらくは遠のくだろう。したがって、この先パウエルFRB 議長のコメントが一方的にドル円相場は動かしていくとみている。
 
「イシバノミクス」は期待薄、企業業績に期待
5日付け日経新聞のコラム「大機小機」で石破首相が主導する「イシバノミクス」はあるのかという質問に対し「否」としている。首相のこれまでの発言訂正は経済、金融政策だけでなく、得意の安保政策も同様としている。これは首相のキャラクターと党内非主流派にいたことを原因に挙げている。筆者もほとんど「イシバノミクス」には期待していない。

そこで政治的な問題を脇において、経済環境、日本企業のファンダメンタルズに立ち返ると、国内景気は堅調で、企業業績も力強さを維持している。実質賃金は2か月連続でプラスの伸び率となり、消費の回復が期待されている。為替水準は対米ドルで150円から160円といったレベルから140円台と水準訂正が起こっており、外需関連の業績見通しには下押し影響が避けられないが、米国景気次第のところもあり、月初の米景気指標には注目が集まっている(前述した様に雇用統計は米景気の堅調さを示唆している)。中国経済についても、景気対策のニュースを受けて中国株が急騰しているが、先行き不透明感はまだ払拭されていないと思う。

国内企業も今月下旬には3月期企業の上期決算が本格化し、通期予想の修正も進むので、来年に向けた企業業績の見通しがより明確になる時期でもある。内需中心に堅調さが維持されて、全体として通期での増益基調が確認されれば、市場センチメントも安定すると想定している。
日本企業の株価収益率(PER)で15倍程度で欧米企業より低く、その中でも特に中小型の大型に対するバリュエーションでは割安感があり、企業業績において内需中心の中小型株に力強さが見えてくれば、中小型株のパフォーマンス回復が顕著になってくると期待している。

悪名高き10月、米国株の10月は??
10月は米株式市場では1年で最も荒くなるとの悪名をはせているが、今年はどうなるのだろうか。まずは第4四半期スタートの10月1日にS&P500株価指数は9月6日以来の大幅安となった。イランがイスラエルにミサイルを発射し、安全資産に逃避する動きが強まったためだ。恐怖指数として知られるボラティリティー指数(VIX)は1日、一時20.7まで上昇した。これは8月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸びが市場予想に反して加速した9月11日以来の高水準だ。

1929年と1987年、さらに2008年の暴落を受け、10月は米株式にとって不気味な月とみなされているが、しかし、10月は8月や9月よりも米株のリターンは高い。実際、ブルームバーグのデータによれば、S&P500種は過去30年間、10月に平均約1.8%の上昇を記録している。ただ、10月はボラティリティ(変動率)も高い。

では、なぜ10月の乱高下が知られているかというと、特に大統領選の年は大統領選を前に株価が苦戦しても、選挙結果が判明すると、年末にかけて力強い上昇を見せる傾向があるという説がある。ブルームバーグによると、1952年以降の選挙年にS&P500種の成績は、10月が平均0.9%安と最下位となっている。選挙年では、10月は初めから弱く、月半ばごろにいくぶん強含むが、その後に再び弱くなり、最後に上昇しても損失を出している傾向があるそうだ。

もちろん、現在の株式市場は今後数週間から数カ月の利下げ幅を巡って不確実性にさらされている。金利スワップ市場は、4日発表の雇用統計発表前まで、11月の0.5%利下げの確率を3割強と予想していたが、雇用統計から米経済のソフトランディング見通しは明るくなったとし、11月のFOMCでは0.5%の利下げではなく0.25%の利下げ説が有力になってきたようだ。

今後1か月先まで、もう1回の雇用統計や米大企業の決算発表、11月5日の大統領選挙、そして11月6-7日の連邦公開市場委員会(FOMC)が控えている。

ブルームバーグがまとめたデータによると、S&P500種は今年、年初から9月末までの9カ月で21%上昇し、年初から9か月の上昇率は1997年以来の大幅高となり、今年の9月30日には今年43回目の最高値を記録したばかりだ。これまでのFOMC会合を受け、市場センチメントは一段と敏感になっている。ソフトランディングを否定するシナリオや金融緩和継続への期待を後押ししないデータには逆に過敏に反応すると想定している。


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■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

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