ちくちくと、心の準備をする
髪の毛が抜け始めるまで、あと5日くらい。ウィッグは準備できたので、次は帽子だ。すでに外出用、室内用、就寝用など10個以上のキャップを購入した。
だが、帽子は意外と蒸れる。汗をかいたらどんどん取り換えられるよう、自分で家にいるときようのケア帽子を作ってみることにした。
作り方はネットで調べればたくさんヒットする。特に100円ショップの「手ぬぐい」で作れるものがいい。そこそこ肌触りがよく、がしがし洗えてすぐ乾き、よれよれになったら心おきなく捨てられる。
数千円のミシンを買うかどうかを迷ったが、今以上にものを増やしたくないので、手縫いでちくちく縫うことにした。外に出るときにかぶるわけじゃないので、縫い目はザクザク不揃いでも気にしない。
今回は3つの作り方を試してみた。
まず1つ目はこちらを参考に。
できあがりを広げるとこんな感じ。後ろを結ぶと帽子っぽくなる。
2つ目はこちらを参考に。
昭和感のあるネーミングもなんだかいい。
できあがりはこんな感じ。
表裏がわからないよう無地でつくってみたら、色合いのせいもあって「修道院のシスター」みたいになった。でも後ろで結ぶとちゃんと帽子っぽい。
3つ目は帽子というよりはインナーキャップ。帽子やウィッグのなかにかぶって汗取りなどで使う用。
できあがり、後ろ側。
これは明らかに小さいので、また大きなサイズでつくる予定。ゆったりサイズにすれば就寝用に使えそう。
それぞれ、かぶるとこんな感じになる。
この中では紺色で作った「さっとカブリーナ」がダントツでよかった。もうこれ一択でいいだろうという感じ。おかわりの手ぬぐいもセリアで買ってきたので、また時間をとって作ろうと思う。
今日は昨日からの腰の痛みを感じつつ、ソファーに座ってずっとこれらをちくちく縫っていた。作るのにかかる時間を考えると、既製品を買った方が安いんじゃないかと思うが、金額の問題じゃないのだ。
ただの一枚の布が、自分の頭を保護する帽子になるという作りあげるよろこびを味わえるだけでなく、ちくちくと針を動かしながら、その帽子を使うときの心の準備をしているのだ。
さらに。
自分はハンナ・アーレントのいう「労働」をしていると思って、手を動かしていた。
政治哲学者のハンナ・アーレントは、著書『人間の条件』の中で人間の行うことを3つに分けている。
1)労働(Labor)
自分ないし他者の生命それ自体を支えるために行われる
2)仕事(Work)
「人口的」な世界をつくり出すために行われる
3)活動(Action)
物あるいは事柄の介入なしに、直接人と人との間で行われる
「労働」と聞くと私たちは、いやいやさせられるもの、肉体的なもの、苦役的なものを想像しがちだけれど、もともと「Labor」には陣痛、分娩という意味がある。
つまり、「労働」とは、人の生命にかかわる根源的なものだ、とアーレントは独自の定義をしている。
※過去の記事から
https://note.com/flowlife/n/n295bceb665ba
食事を作って食べることも、お風呂に入って体をあたためることも、自分が毎日使う帽子を手縫いすることも、今の自分にとって大切な「労働」だ。
今はなかなか「仕事」ができないけれど、「労働」と「活動」を大切に、日々を過ごしていけたらと思っている。