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京王線新宿駅のトラップ VS 空間認識能力の欠落

都内の駅は、東京駅を筆頭に、乗り換えが複雑な駅がいくつもある。新宿駅もその一つだろう。とはいえ、何十年も利用していればそこそこ慣れてくるので最近はそんなに不便を感じていなかった。

半年ほど前のある日のこと。その日は朝から幡ヶ谷に用事があった。いつも使っている駅前探検倶楽部で電車の時間を調べ、新宿で「京王新線」に乗り換えることを確認する。

JR山手線からは、小田急線と京王線にはすぐに乗り換えられるようになっている。ただ、京王線はこれまであまり利用したことがなく、京王新線というのは京王線の改札に入ればわかるだろうと勝手に思っていた。同じ会社だし、同じ新宿駅だし。小田急線のイメージを重ね、上階と下階にホームが別れているのだろうと。

JRを降りて、乗り換え専用の改札から京王線に入る。ホームに降りていく階段の途中に、発車時刻や行き先が表示されている大きな電光掲示板があった。駅探で調べた時刻と行き先の電車のホームが何番線か探す。だが、そこには表示されていない。あれ、おかしいな。もう一回スマホで検索をするが検索結果と掲示板が一致しない。

電光掲示板に表示されている路線図には、笹塚の手前に幡ヶ谷があるから、各駅停車に乗れば幡ヶ谷に着くのかな? まわりをきょろきょろと見回しても、京王新線の乗り場を表すようなんらかのサインはない。もし乗り場やホームが違うのなら、この電光掲示板のそばに掲示すべきじゃない? 

階段の踊り場で前にも後ろにも進めなくなった。もともと後戻りするのが苦手だ。とりあえず各駅に乗っちゃうか、と思ったのだが、間違っていたら大幅に遅刻することになる。結局階段をまた上り、入ってきた改札まで戻って駅員さんにたずねた。

「幡ヶ谷に行きたいんですけど、何番線から乗ればいいんですか?」

「一番下のホームまで降りて後ろ方向に歩くと、京王新線へ向かう矢印が見えますから、それにそってまっすぐ進んでください」

あ、そうなのか。別の場所にあるのか。だったら、京王線に間違って入ってきた人のために、改札や表示板の目につくあたりに「京王新線はこちら」と案内を表示してくれればいいのに。ホームまで降りないと、通路案内がないのっておかしくない? だって、ホームの前に電光掲示板みたら、私みたいにあれ?と思って一番下のホームまで降りないじゃんと、心の中で不満をつぶやきながら、言われたとおりに階段で2階くらい下のホームに降りる。

後ろ向きに進むと、「京王新線乗り換え」みたいな地面にプリントされたぶっとい矢印が見えてきた。「いやさ、真っ直ぐな道に矢印をでかでかと書くよりも、あちこちに向かう方向が別れてる場所にこそ必要でしょうよ!!」と心の中で激しくつっこんだ(あとから考えると、改札まであがらずに京王線から京王新線に乗り換える人向けの表示なのかもしれないが)。


駅員さんの口ぶりから、なんとなくすぐ京王新線に到着するんじゃないかと思って歩いていたが、あのー、まだですか?と言いたくなるくらい、怪しげな暗い通路をひたすら歩いてもなかなかつかない。終わりが見えない道は長く感じるということも相まって、焦りは最高潮に。これは間違いなく遅刻だ。

やっと京王新線の新宿駅のホームに着いたときに、乗りたかった電車はとっくに発車していた。あとから調べると、京王線で笹塚まで行って、幡ヶ谷に戻ったほうがよかったようだ。後戻りしない性格のまま行っちゃえばよかった。


こんな風に、知らないと乗り換えの難しい、もしくは一駅くらい歩かされるトラップのような駅というのはいくつもある。

東京駅の京葉線も、今は新しく改良されたようだが、えんえんと一駅くらい歩かされた上に、どこまで下るんですか? という長い長いエスカレーターを降りたような記憶がある。「これはもう東京駅じゃないだろ」とつぶやいた人は少なくないはずだ。

飯田橋駅の大江戸線への乗り換えも、チューブトンネルのようなただただ灰色の通路がひたすら怖い。大江戸線も、地下7階くらい?深すぎて大江戸線に乗るというだけでちょっとびびる。

逆に、京急の品川駅なんかは同じホームに複数の行き先の電車がひっきりなしに来るので、慣れていない者にとっては複雑だ。うっかり違う電車に乗ってしまわないように、電車の時刻と行き先を確実に確認する必要がある。

東京オリンピックに向けて都内ではあちこちの駅で改良工事が進んだから、乗り換えが改良されているといいのだが、渋谷駅などはまったく原型をとどめておらず、スクランブルスクエアが出来てからは、せっかく慣れた地下鉄からの乗り換えがさらに難しくなったように思う。見た目や駅の構造ががらっと変わるとそれまでの方向感覚がまったく機能しなくなってしまうのだ。

東京に限らず、昨年末に行った大阪の梅田駅でも、新しくなった地下街でまったく見たことのない景色を前に呆然として立ち尽くしてしまった。乗り換えのための表示の通りに歩いていたはずなのに、ある場所からぱったりとその表示がなくなっていて(見つけられていないだけかもしれないが)、完全に迷子になり、化粧品の試供品を配っているおねえさんにすがるようにして教えてもらった。

駅の構造が複雑すぎるのか、単に私の乗り換えの調べ方が悪かったり、空間や地図を把握する能力に欠陥があるのか。乗り換え案内を調べたときに、乗り換え方が簡単にわかる方法へのリンクなどをつけておいてくれないだろうか。「〇〇線の●番線」という情報だけじゃ、あの立体構造はわからないと思うのだが。

と書きながらも、私の場合は乗り慣れている路線でも、なぜか逆方向の電車に乗ったり、自信満々に違う乗換駅で降りることも多いので、そもそももっと根本的な何かが欠落しているのかもしれない。


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大前みどり
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