乳がん治療の記録⑧:放射線治療に向けて

乳がん治療で通っていた病院から紹介を受け、地元の国立病院へ行った。
母が入院している間に何十回とお見舞いに行き、最期を見送った病院だ。

久しぶりに行くと、新たに建て直されてまったく別の病院になっていた。
そりゃあそうだ。30年も経てば何もかも変わっていておかしくない。もうあの病院は、自分のなかのわずかな記憶にしか残っていないのかと、かすかなさみしさが浮かんだ。

診療申込書や紹介状、画像が入ったCD-Rなどは事前に郵送してあったので、受付で待たされることはなく、放射線科に向かう。

予約時間の30分前に到着したものの、少し待ってすぐ呼ばれ、先生に診察をしてもらった。12月に受けた手術の内容や、その後の化学療法の内容について確認があったあと、放射線治療の進め方と副作用について説明を受けた。それからCT画像を撮るため、少し待合室で待つ。

放射線科の待合室にはテレビがあって、ちょうど大リーグの大谷選手のホームランダービーが流れていた。待っていた人たちと一緒にわーわー見ていたら、途中で私の番が来て呼ばれてしまった。

今日のCTの画像を基に、放射線の照射の角度などを決めていくらしい。以前誰かの体験談で、20分くらい腕を上げて動かないでいるのがつらかったと書いてあったが、結構すぐ終わった気がした。

照射をするための目印として、あちこちに油性マジックで線が書かれ、その上に線状のシールが貼られた。初回の治療日まで1週間、この線が消えないように注意して過ごさなくてはいけない。お風呂は入って大丈夫だけれど、こすらないように。線が消えかけても、決して自分で書かないで連絡をください、とのこと。それから治療時間を予約し、次回以降の受診の仕方などの説明も受ける。

私は原発の乳がんより転移したリンパ節の方が腫瘍が大きくなっていて、しかもリンパ節への転移の数も多かったため、「再発の可能性がかなり高いですから」と先生に何度も言われた。「再発」という言葉が槍のようにグサグサ刺さる。

放射線の照射は通常は25回だが30回照射するそうで、それはつまり病院がやっている平日の30日間通わなくてはならないということだ。治療期間は9月頭まで。コロナの予防接種も、治療が終わってからにしましょうということになった。

会計もそんなに待つことなく自動精算機でカードで支払い、トータル2時間弱で終了。来週からは、毎日通わなくちゃいけないけど、治療自体は短いものだから、正味30分くらいで済むだろう。


帰りにスーパーに寄ったのだけれど、二の腕に書かれた線が半袖から見えていて、後ろを歩いていた人から「腕になんかついてますよ」とたぶん思われていただろうということに、後から気づいた。これからは着る服も選ばないとね。


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大前みどり
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