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# 58 倦怠期のガーデナーもまたやる気になるかも

こんにちは。
寒い日が続いています。
雪の多い地域にお住まいの皆様の安全をお祈りしております。

冬はガーデン計画の季節。
しっかり準備しておけば後は行動のみ。
でもそう簡単にいきますかねぇ。

去年の失敗や 残念な結果に終わった植物など、思い出すとやる気が萎えてくることもありませんか?私はあります。
ワンパターンのデザインや植物にももう飽きてしまったり、色の組み合わせのルール、などを守ってみても、面白くなかったりして。
正直言うと、確かに。

「自分の好きな植物だけを好きに植えたらいい」
「やってダメなら次がある」
そう言ってくれる人がいるんですよ。

ジミー・ブレイクさん

アイルランド、ダブリンの郊外に家とガーデンを持つ、園芸家のJimi Blake (ジミー・ブレイク)さんもその1人です。(以下の写真は、全てジミーさんのインスタグラムより使わせていただいてます)

有名なエアーフィールド・ガーデンのガーデナー、ナーサリー、などでキャリアを積んだ後、20年前からこの地に移り、ご自分の庭をHunting Brook Gardens(ハンティング・ブルック・ガーデンズ)と名づけて、好きな植物を育て、デザインしています。アイルランドでも有数の植物のコレクションガーデンとしても知られています。2020年には共著の本を出版しました。
本のタイトルは、『A beautiful obsession』(ア・ビューティフル・オブセッション)。オブセッションとは、ジミーさんの場合、「まずは、植物がとにかく好き。その中でも、特に好きになった植物はできる限り集めて、自分で育ててみたい。そして自分らしい庭を作り上げる」、という感じだと思います。植物に魅せられ、自分にしっくりくるガーデンを作っていく様子、デザインや植物選びのアドバイス、好きな植物の紹介などが語られた本です。



欧米では、本を出版すると、著者は講演に回ることが多いです。たいていその場で本も売り、サインもしてくれます。
ジミーさんも各地の園芸、ガーデン関係の組織や団体から講演の依頼を多く受けています。その1つが、ニューヨークの園芸、ガーデンのシンポジウム(前回のブログのプラントー・ラマ)。
メインスピーカーとして招待され、本の内容についてとその後(現在)の庭の様子を好きな植物を中心に話しをてくれました。
ニューヨークとは違う、アイルランドの気候で、どんな植物を使ってどんな庭が出来上がるか、植物に対する情熱、またの名を「オブセッション」、が混ざり合った、ユニークな庭づくりのお話は、ニューヨーカーにとっては、興味の湧くところです。

ジミーさんの着ている服は、明るい花柄のシャツだったり、着古したツイードのジャケットに帽子、だったり。アーティストかな、っていう印象です。
ニューヨーカーとは一味違う、控えめだけど、お茶目なキャラクターにもピッタリの装い。
「ユーコミス、品種はトゥインクルスターって なんか間抜けな名前だけど」、「最近の一年草、コスモスをとっても、やたらと短い丈の小さいのばかりで気分が悪くなりそうだけど」、、。一つひとつの発言は鋭かったり、えっ?!と思ったりしても、言い方が可愛くて面白くて、正直なのが好印象です。

ジミーさんのファンキー・ガーデン

さて、ジミーさんの庭のお話です。
ダブリンの中心から車で30分足らずのところですが、小高い山の斜面にあるので、気温も低く、「デッキはいつも湿っているようなところ」だそうです。冬が長く9月には霜が降りることもあります。でも春は長くて2月ごろから5月あたりまで続きます。

ジミーさんは「funky ファンキー」にみえる庭が好きだそうです。
ちょっとどこか滑稽で、変わってるけど面白くてカッコいい庭、でわかっていただけるでしょうか。
オブセッションというくらいですから植物にハマってます。好きな植物は100、200 種類(! 株数ではなく!)という単位で購入して、トライ。

最近ハマっているのはスノードロップ (Galanthus,ガランサス)。イギリスではポピュラーな冬から初春の風物詩。コレクター、マニアがたくさんいてレアな品種に高値がつくことも。
ジミーさんは250品種くらいコレクションしていて「まだ始めて間がないのですが」2月には一般公開の予定です。


他にもハマってたくさん買った植物の紹介。
・コリダリス(Corydalis)、水仙、イカリソウ、など初春のウッドランド(woodland, 木の多い日陰だったり湿ったりしているところ、及び、やや日の当たる境目あたり)の植物
・夏のアクセントにと買い揃えたバナナ(観賞用)
・秋まで楽しめるサルビア、ダリア
などなど、、、。
気に入ったら とことん集めてトライするのがジミーさん流。
その結果、「他は枯れたけどこの品種はよく育った」「この品種はナメクジにやられたが、こっちのはサバイブした」など、生育環境に合うものだけが淘汰されて残る、ということです。
バーバスカム(Verbuscum)も色々試したけど結局、「’シックスティーン・キャンドルズ’という品種が生き残ったんです。古くさい植物だけど、それでもいいじゃないですか」

(ジミーさんとサルビアコレクション。)

「アメリカ原産のエキネシア(Echinacea)はここでは全く育ちませんね。去年からヘリオプシス(Heliopsis)を代わりに植えてみたけどどうなるか」「スドパナックス(Pseudopanax)は寒さに負けちゃったから、急遽ユリを代わりに植えてみました。ストラクチャーとしてね。花の色が嫌いという人もいたけど、それはそれでオッケー」。なんでも楽しめるジミーさん。

春が終わってから、夏の間のギャップをどう埋めるか、試行錯誤しました。
「水仙の後に、ジーアム(Geum,日本ではゲウム)を植えるとちょうどいい具合というのがわかりました。マジェンタとオレンジのビビッドな色が好きなら、ですけど」。他にもエンドレスなチャレンジ精神。

始めた当初のガーデンは広い空間を埋めるために大きなグループにして植えていましたが、少しずつバラバラに「マッド・ミックスになってきました」。
でもデザインは忘れてはいません。
光が植物の間をスーッと通るように 空間を生かした植栽にしたり、庭を引き締める要素も上手に配置。
「ナイフォフィア(Kniphofia)、それもこの品種-丈夫ですしね-を要所要所に植えておくと視線がうまく誘導されていいんですよ」。この微妙なバランス具合。

地面に植わっている植物の周りにシルバーの棒状の鉢植えのサボテンをポコポコ置いてアクセントにしたり。どんどん進化していきます。「葉っぱ、小さい木も大好き!」。話にどんどん引き込まれていきます。

新しくチャレンジ

せっかく出来上がったと思えた草原風のメドウガーデン。「なんだかボサボサでめちゃくちゃになったのでやり直しました」。写真の真ん中の部分。

「紙に描くのは好きじゃないから」ホースを使って直接地面に線を引いて花壇を再デザイン。
表土を掬い取って、現在そこの一部は「サニーガーデン」になりました(白っぽく見える土のところ)。砂を足し、土を盛り上げて排水を良くして、サボテンや多肉植物を植えてみました。
「それだけじゃ面白くないから、これからマイブームになりそうな矮性のコニファーと組み合わせるんです。それらと一緒にペチュニアを植えようと種子を蒔いてたら笑う人もいたけど、みんな案外気に入ったりして。ファンキー作戦成功ですね」。

(植えつけたばかりのサニーガーデン)

ジミーさんと一緒に楽しく勉強

「小さい頃からノートとラベルを持って庭を歩くのが大好きでした」。
気がついたらすぐメモ。
移動させたい植物や増やしたい植物には直接ラベルをつける。
「そうすれば作業の時、すぐわかりますからね」。

どんなに人気がある植物だとしてももう飽きたなあと思ったら処分です。
ルールに縛られないことです。

ジミーさんはウェブサイトのほかにインスタグラムで庭の様子を配信しています。今はちょうどスノードロップが咲き始めた様子などです。

植物好きの人たちのためのオンラインクラスも好評のようです。
「14日間 14ユーロのトライアルクラス」を受講してみましたが、実に楽しい。心が踊るんですよ〜。
ガーデニングのやり方は十人十色。自分以外のガーデニングのやり方を見るのは、刺激になります。

ちょっぴり雑な種まきや乱暴に見える株分け。
「予算が限りなくあるわけじゃないから、自分で増やしたいし、それがまた楽しいんだよね」。
彼の長いガーデニングキャリアで培われたテクニックやコツは、揺るぎのない本物です。
実際 この庭に育つ植物を見れば疑う余地なしの説得力。
「これでいいんだー」と思わせてくれる安心感。
「じゃあ、私はこうしてみようかな」、と湧いてくるインスピレーションの数々。庭づくりのルールから外れることでやる気が出てくるかもしれませんね。

今年、私は3度目の正直でダリアに再びトライしようと思います。
それも種子から。これもジミーさんからインスピレーションをもらったことです。

(ダリアの種まきの講義)

彼の種まきは覆土に小粒の砂利を使うことが多いそうです。確かに職場では私も使っていました。特に山野草系では抜群の効果です。

いかがですか?ちょっと何か始めてみたくなりましたか?
カタログのページでもめくってみましょうか?

今日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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こちらは、ニューヨークのガーデン、ウエイブ・ヒル。インスピレーションが湧くガーデンですのでまたご紹介したいと思います。

サポートありがとうございます。