『便器 イズ マイ ベストフレンド』 #清潔のマイルール
私は水回りの掃除が特に好きだ。(そして今日は水曜日だ。)
今は体調が不安定なため、時々難しい時もあって家族と分担することも多いけれど、燃えるゴミの日の前日にはできる限り、トイレや洗面所、お風呂、キッチンのシンクなどを掃除するように心がけている。
(ただし、部屋の片付けは苦手だ……たぶん泡々したものを洗い流す行為にロマンを感じているのだと思う。)(だから、お皿洗いも好き。)
私が水回りの掃除に目覚めたきっかけは、大学生時代に清掃のバイトを始めたことだった。
初日に、清掃マイスターなる資格を持つ、清掃会社のおじさんに一通り掃除の仕方を教わり、その後は一人で、とある公的施設の掃除を任されることになった。
二時間という限られた時間内に、二階建て施設のフロア清掃(掃き掃除&掃除機がけ)、トイレ掃除(男女別のトイレ×2+多目的トイレ)、階段の掃き掃除(たまに拭き掃除)、エレベーター内や出入り口のガラスドアの拭き掃除、外回りの掃き掃除を一人で行っていた。
そんな中で、私が特に思いを寄せたのは
トイレの便器だ。
何しろ便器というものは、毎日毎日たくさんの人たちの汚物を、身を挺して受け止めているのだ。(食事中の方がいたらすまぬ。)
なんて健気な存在だろうか……
(ちなみに使われる頻度はトイレには劣るが、毎日、生尻を受け止めているお風呂の椅子に対しても私は同じ感情を抱いている。)
そんな風に並々ならぬ思いを抱いて、便器を磨いていたからだろう。
気がつくと私は
「ありがとう
君がいてくれて本当よかったよ~♪」
と、西野カナさんの『Best Friend』を心の中で口ずさみながら、便器を磨くようになっていた。(西野カナさんや、ファンの方々には大変失礼ではあるけれど🙇ごめんなさい🙇)
『便器 イズ マイ ベストフレンド』
この考えに異議を唱えられる人は、果たしているだろうか?
便器たちのおかげで私たちは、粗相をすることなく、スッキリと用を足せるのだ。
音姫に負けないほど勢いがある時も、一向に出そうにない時も、力の限り踏ん張っている時も、どんな時もいつも優しく見守り、受け止めてくれる便器。(中には温かくて、消臭・洗浄機能がついたものもいる。優しすぎじゃない?)
たとえ誰とも顔を合わすことなく一日を終えることがあったとしても、便器と全く顔を合わせないまま一日を過ごすことなど、ほぼないはずだ。
もはや心の友といっても過言ではなかろう。
だからこそ、私は丹念に便器を磨いてきた。
感謝の気持ちを込めながら。西野カナさんに対して一抹の心苦しさを感じながら。
そして私は、多目的トイレに対して、より一層、熱い思いを込めて磨いていた。
何かしらの理由があって利用する場所だからこそ、より安心して、より心地よく用を足せるように。
だから、多目的トイレを無下に扱う人がいると知った時、私は心底腹が立った。
私自身も多目的トイレを使用せざるを得ないことが増えた今、多目的トイレをないがしろにするやつは、全国各地のあらゆるトイレを磨く行脚をするべきだ! と本気で憤った。
なんてったって、便器はあらゆる人々の人生に絶対に欠かせない、ベストフレンドなのだから。
ベストフレンドを“故意”に汚すなんて重罪だ。そのくらいの罪の重さを受け止めて反省していただきたい。
やや話は逸れたが、そういった私の秘めたる熱意が届いたのだろうか。
最初は男子トイレで利用者と鉢合わせすることもあったが(だいたい利用者が、状況を察して引き返してしまう……)、施設の職員さんが気を利かせてトイレのドアノブに引っかけられる掃除中のプレートを作ってくれ、よりトイレ掃除に専念できるようになった。
もちろん、便器だけじゃなく、
毎日誰かに踏みつけられる階段や床、
もしもの時には支えとなる手すり、
身だしなみや歯磨きの際に向かい合う鏡、
職員や利用者を出迎え、送り出すドアなど
他の場所を掃除する時も
「いつもありがとうね~」
と念じていた。
これはもう、付喪神的なものを信じ、若干アニミズム思考なところもあり、喋れないものに対してもつい話しかけてしまう、私のクセみたいなものだけれども。
でも、きっとそれが、私が清掃する上で心がけてきたことでもあり、清潔のためのマイルールなのだと思う。
ただひとつだけ言いたいことがあるとすれば
男性諸君、トイレで大をした時は最後まできちんと見送ってくれ。
あまりにも見事な💩だったから、うまく流れきれなかったのか、はたまた誰かに見せつけたかったのかはわからないが、それは全てを受け止めてくれる便器に対する冒涜だ。
親友の顔に泥を塗っているようなものだ。(少なくとも私は女性トイレを清掃していて流し忘れを見たことはない。)
そして小の時もちゃんと手を洗ってくれ……(清掃員として、男子トイレに入って初めて知った衝撃がそれだった。)
『便器 イズ マイ ベストフレンド』の心意気がより多くの人たちに共感される日が来てほしい
と、私は本気で願っている。
最後に、誠に失礼な形で紹介してしまった西野カナさんの素晴らしい『Best Friend』を聴いて、汚れた心を洗い流そう。
(決して便器メーカーの回し者じゃないよ)
《おしまい》
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