【創作大賞2024】アンチロマンス 第一話
陽香の手からコップがすべり落ちた。すべり落ちそうになったところを、俺がすんでで受け止めた。中に入っているのは韓国焼酎のマスカットフレーバーだ。アルコール度数が低いとは言えないそいつを俺の部屋にぶちまけられて、ラグに酒のにおいをこびりつかせるのは御免だった。
「眠いんだろ、もう寝ろ」
受け止めたコップをテーブルの上に置きながら言う。陽香はうとうと船をこぎながら「まだ飲める」と答えた。どの口が言っているんだか。
「飲めないっての。俺のベッド貸すから。明日土曜だし泊まって