電源をオフした後もゲームの体験は続いている、というUXの分類のはなし
前回に続いて、ゲームとUXについていろいろと書く前に、UXの基本についてちょっと書いてみます。
ちょうどnoteでもクリエイターフェスというのが始まったようなので、しばらくは週一本記事を書くという目標で!
UX(User Experience)とは、
"製品やサービス"を利用した人(ユーザー)の頭の中にある、
"製品やサービス"についての経験(エクスペリエンス)のこと。
今回はUXにもいろいろ種類がある、というお話です。
UXにもいろいろな種類がある
突然ですが「ゲームの思い出を3つくらい教えてください」と言われたら、あなたはどんな思い出を披露しますか?
特定のゲームを遊んだ時の思い出を語る人も多いでしょうが、たとえば以下みたいな思い出を挙げる方もいるんじゃないでしょうか。
子どもの頃にどうしても欲しいゲームがあったけれどなかなか買ってもらえず、勉強や手伝いをがんばった
とあるゲームに熱中しすぎて学業や仕事など日常生活に支障をきたした
友達に貸したゲームをなかなか返してもらえず悔しい思いをした
とあるゲームが好きすぎてクリア後にゾンビのようにそのゲームの実況配信を見漁った
上に挙げた思い出はゲームにまつわるUX(経験)ではあるけれど、ゲームを遊んでいるその瞬間のUXではありません。
「製品・サービスについての経験」と言われると、それをまさに利用している最中の体験をイメージしがちだけれど、それ以外の期間にも"製品やサービス"との経験が生まれています。
たとえばちょっと値段の高いものを買おうとしたとき、多くの人は失敗しないように事前にいろいろと下調べをすると思います。つまりその製品を利用する前から、その製品とユーザーの付き合いは始まっている、と言えます。
UXは期間で分類できる
このように"製品やサービス"とのUX(経験)と言っても、いろいろな種類のUXがあるのですが、UXデザインの分野では以下のように「期間」に着目して4種類に分類されています。
①予期的UX(anticipated UX)
"製品やサービス"を利用する前のUXを指します。
「広告を見る」、「知人から評判を聞く」、「ショップでなんとなく手に取る」など、ユーザーが”製品やサービス”を購入する前までの経験とイメージすると分かりやすいかもしれません。この予期的UXが良いもので「利用したい」と判断されれば利用が始まるし、予期的UXが悪い体験だと利用に繋がらずここでおしまいになります。お店の前まで来たけれど、店構えが入りにくい雰囲気だったのでちょっとやめておこう…みたいな話ですね。
営業、広報、マーケティングなどのお仕事をされている方は、予期的UXに関わる仕事をしていると言えます。
②一時的UX(momentary UX)
ちょっと違和感のある日本語ですが、"製品やサービス"を利用しているその瞬間のUXを指します。
ゲームで言えば、ゲームを起動してから終了するまでの間の経験が該当します。ゲームをしている最中に「バトルにギリギリ勝利してハラハラ」とか「感動するイベントでグッとくる」とか「操作性がイマイチでイライラする」とか、細かく区切れば利用中もいろいろな体験をしていて、そのそれぞれが一時的UXに該当します。
③エピソード的UX(episodic UX)
これまたちょっと違和感のある言葉ですが、"製品やサービス"を利用した後にあれこれ思い返したり、考えたりする体験を指します。
ゲームを終えた電源をオフした後で「バトルにギリギリ勝利してハラハラしたなぁ」、「感動するイベントにグッと来たなぁ」、「操作性がイマイチでイライラしたなぁ」と思い返す体験が該当します。この記事の最初の「ゲームの思い出を思い返した」というのもこのエピソード的UXですね。
余談:
ゲームに関して言えば、ゲームを遊んだ後、ちょっと詰まっているところの攻略方法を考えたり、次に遊ぶときには何をしようかな?と計画を練ったりすることがあると思います。この体験は「②一時的UX」なのか「③エピソード的UX」なのか、どちらに分類すればよいのかちょっと悩ましいところ。
個人的には「②一時的UX」なのかなと思ってます。昨年末からFF14を遊んでいるのですが、ゲーム外でプレイ動画を見返して高難易度のボスの攻略を練っている時間が本番、というくらいその時間が楽しいです。
④累積的UX(cumulative UX)
①、②、③の細かないろいろなUXを積み重ね、全部の体験を総括したものを指します。レビューサイトで点数をつけるようなイメージで、ユーザー一人ひとりが対象となる"製品やサービス”とのUXを振り返った「非常によかった」とか「あまり良くなかった」みたいな総評が該当します。
ちょっとおもしろいのが、利用中の②一時的UXがあまり良くない体験ばかりだったとしても、どこか一か所ずば抜けて良い体験があったり、「終わり良ければすべて良し」という言葉にあるように最後の体験が良いものであったりすると、この累積的UXは良いものになりがち、ということがあります。
"製品やサービス"を提供する側の人は、このピーク・エンドの法則のことをちょっと頭に入れておくと、何か改善を考えるときに役立つかもしれません。細かな悪いところを直すより、良いところをより良く伸ばしたり、利用シーンの終わりの部分に着目するとイイかも、ということですね。
前回に続いてお勉強みたいな話が続いてしまいましたが、ざっとUXの基礎めいたことは記事にできたかな?と思うので、次からはこのあたりの言葉を使いつつ、ゲームとUXの話をどんどんしていきたいと思います!
今回は以上です。ありがとうございました!