「ゲーム実況を見る」というUXのはなし
「野球をすること」と「野球を見ること」が別物であるように、「ゲームで遊ぶこと」と「ゲーム実況を見ること」は別物であることは、ゲーム実況を視聴したことがある人であれば納得してもらえるかなと思います。
先日、Twitterで「とあるゲームが好きすぎてクリア後にゾンビのようにそのゲームの実況配信を見漁った、という体験はUXデザイン的に考えるとどういう捉えられるのか?」ということを少しつぶやいたりしていたので、今回は「ゲーム実況を見る」という体験について考えてみます。
「ゲーム実況を見る」という体験に
関連する製品・サービス
まず前提として「ゲーム実況を見る」という体験には複数の製品・サービスが関わっているので少し分解して考えてみます。
みなさんもぜひ「自分の好きなゲーム実況を見るスタイル」をちょっと考えてみてから、以下を読んでみてください。
①「ゲーム実況」というサービス
ゲーム実況は「ゲームプレイ映像」と「実況音声」というコンテンツを、動画配信者/投稿者が、視聴者に提供するサービスと言えます。プレイの上手さ、トークの面白さなどが付加価値になって評価されます。
さらに動画投稿の場合は「編集」、ライブ配信の場合は「自撮りカメラやアバターによるプレイの様子」、「視聴者のコメントへのリアクション」などもコンテンツに含まれます。
②実況対象の「ゲームソフト」という製品
実況対象のゲームのソフトウェア自体も、「ゲーム実況を見る」という体験に関わる重要な要素です。
最初に書いたように「ゲーム実況を見ること」は、直接ゲームを遊ぶ体験とは根本的に異なります(視聴者はメーカーに直接対価も払ってないし)。
一方で、実況対象のゲームで遊んだことが無い場合、つまり未プレイのゲームの実況を見るという体験は、そのゲームの予期的UX(製品を利用する前の体験)に該当します。公式の紹介動画を見るのと似たような体験ですね。
前回のスイカゲームの記事にも書きましたが、「実況動画を見て面白そうだから自分でも購入してみた」というのは、令和のゲームとの出会い方としてよくあるシナリオだと思います。
ついでに…「ゲームプレイ映像」の著作権はメーカーにありますが、最近はガイドラインの整備なども進んで、メーカーとしてもゲーム実況を製品とユーザーのタッチポイントとして捉えているケースも多い印象です。
③「動画投稿/配信プラットフォーム」というサービス
Youtube、Twitch、ニコニコ動画など、視聴者が実況動画を求めて利用するサービスです。Webサイトだったり、専用アプリだったりと形態も様々ですし、マイリスト機能、ランキング機能、コメント機能などの仕様面でもいろいろ違いがあります。
昔は画質の良し悪しや遅延の大きさなどの差がありましたが、近年はそれほど仕様に大差は無くなってきている印象。視聴者側の目線で言えば、どのプラットフォームでゲーム実況を視聴するかは「お気に入りの配信者/動画投稿者がどのプラットフォームで活動しているか」で決められている気がします。
動画投稿者/配信者側の目線は、私はあまり詳しくないですが…配信の安定性、人の集まりやすさ、投げ銭の仕組み等など、いろいろな理由があって選ばれているのかなと思います。
④その他(視聴に関わる諸々のデバイスなど)
ここはあまり「ゲーム実況を見る」特有の話ではないですが、以下のような製品も「ゲーム実況を見る」という体験に関わってきます。
動画視聴のために利用するPC、モニタ、スマホ、ヘッドホンなど
視聴しながら一緒に楽しむおやつやお酒など
視聴する場所のソファーやベッドや布団
そんなの入れてもいいの?と思われるかもしれないですが、UXデザインの観点で体験について考えるのであれば大事だと思います。
「映画館で映画を見るという体験に、ポップコーンや座席のシートは無関係だ」と言われたら、きっと違和感あるでしょう。
…といろいろ挙げましたが、単純に「ゲーム実況を見る」という体験を一つとっても、分解して見ると同時にいろいろな製品・サービスを利用していることが分かるかと思います。
「とあるゲーム実況配信を見てみたらと面白かった」というUXも、分解して考えてみると「配信者のトークが面白かった」、「実況されていたゲームの内容が面白かった」、「配信中に流れてきた視聴者のコメントが面白かった」などなど、①~④のいろいろな製品・サービスが寄与した結果のUXであると言えます。
実は「ゲーム実況を見る」ことはUXデザイン的にちょっと珍しい体験と言える
で、実はここからが本来書きたかった本題なのですが…。
「ゲーム実況を見る」という体験は、実は世の中の他の製品・サービスの利用体験の中でも、かなり珍しい体験なのでは?と考えています。
「映画を見る」とか「小説を読む」とか「スポーツを観戦する」などの他の娯楽と比較しても明確に違うし、UXデザインの観点で言っても、だいぶ特殊なことをしていると言えるんじゃないかな。
…と、もったいぶった割に、ちょっと記事が長くなってしまったので、気になる続きは次回の記事に回したいと思います!
今回は以上です。ありがとうございました!