灼熱のマリン決戦 習志野VS専大松戸 「美爆音」の鳴り響く高校野球千葉大会夏の決勝戦レポート
7月27日。コロナ禍が明け、数年ぶりに夏の高校野球選手権大会、習志野高校の応援に行くことが出来た。
千葉大会決勝、ZOZOマリンスタジアム。
習志野高校✕専大松戸高校の組合せである。
35℃、灼熱のZOZOマリンスタジアム
陣取ったのはレフト側外野席。
すでに内野席は満員となり、準決勝に続いて開放された外野席に回ることになった。
照り付ける太陽を背にして、なるべく陰に入る場所が良かったのと、どうせなら正面から一塁側の習志野高校の応援団を見てみたかった。
レフト側外野席は、やはり専大松戸高校の応援が目立つ。
夏休みに入った小中学生の姿も多く、千葉ロッテマリーンズのキャップを被った子がチラホラ。でも、ソフトバンク、巨人、ヤクルトの野球帽を被った子もいた。このあたりのファン層はまちまちであるらしい。
試合がクライマックスを迎えた13時。
千葉市美浜区の気温計は温度35度、湿度57%を指していた。
時おり海風がスタンドを吹き抜け、日陰に入ればなんとか過ごせるものの、それでもシャツの下の肌からは汗が吹き出してくる。
周りの観客は皆タオルを首にかけ、凍らせたペットボトル飲料を喉に流し込んで暑さをしのいでいる。
ひどい暑さだが、グラウンドの選手たちは苛烈な日射しの下、さらに過酷な環境でプレーしている。
彼らのために、一心に声援を送る。
習志野高校の応援を見るためのベストポジションは?
この日用意された当日券はすでに完売となり、スタジアムに入場するにはファミポートでチケットを購入する必要があった。
JR海浜幕張駅近くのファミマで長蛇の列に並んだこともあり、スタジアムに入場できたのは試合開始時刻の10時を過ぎていた。
すでに内野席は満員で、外野席に回る。
習志野高校は一塁側だったが、少し迷った末に習志野高校の応援を正面から見られるレフト側スタンドに陣取った。
こちらのほうが、日陰となるエリアも多い。
しかし、スリリングな展開が続く試合が進むにつれ、少し後悔した。やはり習志野高校側のスタンドで見るべきだったか、と。
レフトスタンドには、やはり専大松戸高校の応援が多い。
習志野高校の応援と一体になって試合を見たほうが、より楽しめたと思う。
本来であれば、内野席二階スタンド、応援団の真上で観戦するのが、習志野の「美爆音」を体験するのにはベストポジションである。
地を揺るがすような響きが肌を通して感じられるし、最前列近くに座れば、次の曲への切り替えなど、応援団の細かい動きまで見ることが出来る。
甲子園で習志野高校の試合を観戦したこともあるが、ことブラスバンドの演奏を楽しむということにおいては、マリンスタジアムが一番だ。
外壁に囲まれた形状のマリンスタジアムでは音が反響し、さらに演奏が迫力あるように感じられる。
習志野高校の最新レパートリー
チケット購入に手間取り、ようやく席に着くことができた2回表の習高の攻撃。
CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の「プラウド・メアリー」が耳に飛び込んできた。
スタンダードナンバーかと思いきや、2023年の新曲。シンコペーションが効いてノリがよく、ブラスバンドに好相性の名曲。
驚いたのは、T.M.Revolutionの「WHITE BREATH」。
これも習高らしさ、と言うべきかしっかりとAメロからサビまで完奏。サビだけを取り出してアレンジする高校が多い中で、さすがのこだわりが感じられる。
その完成度の高さと選曲の妙に、スタンドで一人吹き出してしまった。
これは昨年2022年からの新曲。煮え立つような暑気の中に、真冬のブリザードが一閃、駆け抜けた。
そして「星空のディスタンス」「ルパン三世のテーマ」「アフリカンシンフォニー」「スパニッシュフィーバー」「モンキーターン」「コパカバーナ」「Beautiful Smile」(高須クリニックのCM曲)と、定番・得意の楽曲が続く。
THE ALFEEの「星空のディスタンス」は2019年からレパートリーに加わった。この日一番演奏機会が多かったのがこの曲。
「アフリカンシンフォニー」は高校野球応援の定番曲だが、スケールの大きい楽曲は習高の美爆音とマッチしており、聴いていて非常に心地が良い。
「モンキーターン」は地元千葉ロッテマリーンズのチャンステーマとしてアレンジされたものが、習志野高校のブラスバンドにも取り入れられた。ノリがよく、応援が勢いづく人気曲。
(ほかに、甲斐バンド「HERO(ヒーローになる時、それは今)」、「パイレーツ・オブ・ザ・カリビアン」、「拓大紅陵・勝利のテーマ」が前奏のみ演奏された)
嵐「One Love」⇒「A・RA・SHI」
「One Love」は応援団が声出しでサビのメロディを歌うが、女生徒たちが必死で1オクターブ上のフレーズを歌うのを聞くと、なぜか涙ぐんでしまう。
「ベン・ハー」
習志野高校というと吹奏楽部ばかりが注目されるが、チアリーディングの技術の高さも見逃すことが出来ない。
白い手袋をした正統派のユニフォームには、気品が感じられる。
チアリーディングを担当しているのは習志野高校のバトン部。タンバリンから応援用の青と黄のポンポンへの持ち替えの鮮やかさにはいつも見惚れてしまう。
「ベン・ハー」序曲でのチアのタンバリンの振り付けは、まるで厳かな儀式のよう。勇壮な楽曲は、応援歌にピッタリだ。
「レッツゴー習志野」
そして、習志野高校オリジナルのチャンステーマである「レッツゴー習志野」。この曲では、スタンド上方にズラリと並んだ総勢12機のスーザフォン(テューバ)の威力が遺憾なく発揮される。
音源・映像はYouTubeにも複数上がっているが、この迫力はぜひとも現地で体感してほしい。
習高の「美爆音」は空気を振るわせて伝わる。球場のスタンドに身を置いてみると、その音響を文字通り身体で感じることになる。
「レッツゴー習志野」は主に得点圏にランナーがいるチャンスの場面で演奏される。タイムリーヒットが飛び出し、畳み掛けるようにテーマが繰り返されると、スタジアムの熱気は頂点に達する。
この爆音にスタジアムで晒されていると、家に帰ってからも、ずうっと1日中、頭の中で鳴っている。
「レッツゴー習志野」は、それぐらい強烈だ。
劇的な幕切れ 専大松戸サヨナラ勝利
この日千葉県代表を争う試合は、初回から点の取り合いとなった。
逆転に次ぐ逆転のシーソーゲーム。
手に汗握る展開に、満員の客席も大いに盛り上がった。
そして7-7の同点で迎えた9回裏。専大松戸は二死二塁から9番宮尾日向選手が右中間を破るサヨナラタイムリーを放ち、8-7で劇的なサヨナラ勝利を決めて春のセンバツに続く甲子園への切符を勝ち取った。
準々決勝でもサヨナラ勝ちを呼び込んだ宮尾選手は、今大会絶好調。試合後のインタビューでも、自信をもって打席に臨んだとコメントし、頼もしさを見せた。
一方の習志野高校は、四年ぶりの夏の甲子園出場はならず。
8回までリードする展開だっただけに悔しい結果となったが、出場選手では1年生の岡田諒介選手の活躍が光った。
代打で出場すると、いきなりライトスタンドに突き刺さる鮮烈なホームラン。その後も5打数3安打と、確かな打力を見せつけた。
そして特筆すべきは、あの暑さの中で両校ともにノーエラーだったこと。
計27安打と打ち合いになったものの、引き締まった良い試合だった。
専大松戸も、吹奏楽部の実力は折り紙付き。
この日もチャンステーマの「エルティグレ」から、定番曲の「タッチ」「紅」「ポパイ・ザ・セーラーマン」など気持ちの良い演奏を響かせていた。
専大松戸のチアは、半ズボンのベースボールユニフォーム仕様。そういうのもあるのか、と思っていたらすでに記事になっていた。
これはこれで、よい。
習志野高校の応援は相変わらず大人気で、撮影・録音した動画も多数上がっているのだが、やはり球場で、生で聴くのはまったく違う。
今年の夏は、習高の応援を甲子園で聴けないのは残念だが、ぜひとも、どこかの機会で実際に習高の美爆音を体感してほしいと思う。
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