深夜ファミレス族はどこへ行けばいいのか
【写真】
深夜。
閉店後のロイヤルホスト。
ロイヤルホストはファミリーレストランの中でも高級な部類に入る。だからか、閉店後の佇まいにもどことなく気品が感じられる。
ひと昔前は当たり前だったファミレスの深夜営業が、今ではほとんど見られなくなった。
2010年代後半のいわゆる「働き方改革」による労働時間の短縮、そして2020年からのコロナ禍がそれに拍車をかけた。
現在東京23区内で24時間営業をしているのを確認できるファミリーレストランは、ココス東京イン店のみである。
東京近郊にまで対象を広げてみても、ココスのわずかな店舗と、ジョイフルの埼玉、千葉などの店舗くらいしかない。
深夜のファミリーレストランが、いちばん仕事の捗る場所だった、と話す人は多い。私もその一人だった。
あの未明の、人の疎らでゆったりとした空間のあるテーブル席にこそ、私の求める平穏と集中があった。
PC画面に向かい、キーボードを叩き、額に脂が滲んでくる頃、一息ついて熱いコーヒーを飲む。そしてその日の目標まで作業を仕上げ、白々と夜が明けてくる時間に帰路に就く。
そんなことが何度もあった。
深夜のファミレスに行けなくなってから、作業効率は落ちた。なんとなれば快活CLUBに行くしかないのだが、あの鍵付き個室というのは、また全然別種の空間である。
労働時間の削減、そして人手不足。深夜営業に割くような体力は、企業に残っていない。
ファミリーレストランにとっては受難の時代なのかもしれない。
「青デニ」の愛称で親しまれたデニーズ南青山店も2023年3月、38年の歴史に幕を閉じた。青山斎場の向かい、という都心の一等地でありながら閑静な土地柄。そして駐車場を備えていることから六本木や麻布で夜遊びをした人や、芸能人・有名人などで賑わっていたというファミレスだった。
私も一時期このすぐ近くで夜勤の仕事をしていたため、「青デニ」には何度もお世話になった。残念ながらそうしたバブリーな雰囲気の残滓は感じられなかったが、都心にありながら二階建ての独立型店舗、広い店内(左奥が喫煙席になっていた)が印象に残っている。
もう一度、深夜にファミリーレストランの明りが煌々と灯っているような時代が来ればよいのだが、もうそんな時代は来ないのかもしれない。
せいぜいネコ型配膳ロボットと仲良くして、このもの寂しい時季をやり過ごすしかないのだろう。
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