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ティープテックとマーケティングを融合する組織づくり
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フリックフィット社はセンシングモジュールardiの開発を進めていてリリース前です。足元のウェアラブルデバイスの企画・開発から販売まで手掛ける会社となっていきます。今回は代表の廣橋にチームについてインタビューを行いました。
センシングモジュールardiの開発はどのようなチームで行われているのでしょうか?
研究開発で試行錯誤のときと、2025年にリリースを控えた事業化前の今とでは少しずつ主体的なメンバーが変わってきています。ハードウェア、アルゴリズムエンジニア、UX/UIデザイナーが業務の中心は変わらないのですが、PdM、PM、BizDev、初期のマーケティング等リリースに備えたフルコミットメンバーが15名程度(社員、業務委託、出向含む)で構成されています。ardiはインソールや靴、サンダルといった自社他社の履き物に組み込まれた製品として販売していくため、大企業やブランドとの業務提携も重要な業務でそうした担当者もいます。
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新しいアイデアを生み出す過程において、他者との対話はどのような影響を及ぼすのでしょうか?
アイデアの源泉は、その当人が見てきたもの、経験してきたことがベースで生きた年数だと考えています。自分と誰かのベースを掛け合わせることによって偶発的に生まれる部分に面白さを感じます。若い時バンドをしていて、曲をつくるときに自分が考えてきた楽曲の一部のアイデアに別の人がインスピレーションを受けて異なるアイデアを出したとき、そちらがよさそうなら自分に固執せずアイデアの起点を乗り換えていることがありました。人と人との対話や関わりを通じて生まれたアイデアを育てていく感じが好きで、事業でも同じような感覚を持っています。
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チーム内の人間関係についてどう考えていますか?
良いと思います。ただ単に人間関係がうまくいくようにするために何かしらの努力や気遣いは個人的に苦手ですね。何か新しいもの、やりたいことを実現するための強い目的があるときに、手段としてチーム内の人間関係が良くなった方がプロジェクトがうまくいく、もしくは人間関係がボトルネックになっている場合には率先的に調整します。日常のモチベーションは人に向いているより、製品やサービスに向いているんだと思います。
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とはいえ、この開発スタジオといいチームの環境づくりに注力されている様に見えますが。
そうかもしれません。ardiは2020年から研究をしていたのですが、2025年から事業化フェーズに入っていくため、個人的に起業家や立ち上げのプロデューサー的な役割から、チームに任せていくフェーズに変える意識です。ものづくりの真ん中にいるというより、もう少し引いたカタチで、チームのみんなが働きやすい環境をつくることのほうに意識を向けはじめました。
ハードウェアを扱うと判断の変数がとても多く意思決定が散漫になりがちになることが多いです。ハード、ソフト、体験設計やアルゴリズム、ビジネスモデル等々。立ち上げ初期はファウンダーの僕がある程度仕切って文鎮型として情報を集約する方が進みが早かったり、出戻りも少ないと思ってます。ある程度形になっていたり、方向性が見えてきたら、自分より優秀な人、うまくやれる人を採用してチームを引っ張ってもらい、俯瞰していく立場になる方が良いと感じます。今はそのタイミングです。チームメンバーがやりやすい環境を整えていくことが僕の仕事の一つに変わりました。
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最近になって外部との関わりを増やそうとしているそうですね。
個人としてはそうですね。ardiを始めた5年前からは研究開発にエネルギーを注いできました。ようやくardiの開発が事業性の核になる準備が整いました。チームは変わらずこもって開発とビジネス化の準備に入っており、代表の僕個人はチーム作りとは別のミッションとして、外部の接点を増やして中期的な協業、コラボレーションの機会をどんどん探っていくプロデュース活動をしていきます。
今後は組織作りに注力されるのでしょうか?
そうですね。組織作りと外部接点作りに注力します。プロデューサーとして世の中に興味をもってもらえそうなものを生み出す自信はあるのですが、いつまでも自分が現場でものづくりしていても会社が大きくなりにくいので。今後は自分たちに合うチームや組織とは何か?を探索し、トップダウンからボトムアップにしていき、みんなで驚きのあるおもしろいモノ、価値あるモノをどんどん生み出す会社にしていきます。僕個人はそうした企業文化を作る役割かもしれません。
最近新たに興味を持つようになったことについて教えてください。
海外の過酷な砂漠マラソンへの参加を知人から誘われました。せっかくなのでardiを使って出ようと思います。これまではシンプルに自分がやりたいことを選んできましたが、最近は人に勧められたことに興味をもつようになりました。自分より他人の方が自分の向き不向きをわかっているかもですね。そうした誘いに身を任せる様になりました。これまで思いもよらず興味がなかったことでも、誘われて一歩踏み出してみると面白い世界だったと感じることがあります。最近は山手線一周を走ってきました。
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廣橋さんにとってスタートアップの起業家とはどのようなものでしょうか?
LinkedInの創業者リード・ホフマンが「スタートアップとは、崖の上から飛び降りながら飛行機をつくるようなものだ」といってましたが、その通りだと思います。製品が未完成でも組み立てやリリース、前倒しで営業活動等、様々なタスクを千手観音の様に同時にすばやく行い、完成できないなら飛行機は落ちて全滅するという話でそれをリーダーとして心身で体現して、かつしぶとく踏ん張り生き抜ける人だと思います。今も昔もしぶとい人が向いていると思いますね。
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大企業の新規事業とスタートアップ企業を比べるとやはり大企業のほうが優位なのでしょうか?
大企業かスタートアップかは同じ領域で競合している時は一般的には人モノ金が揃ってる方が勝つと思います。一方、大企業にとって数ある新規事業に対して、スタートアップは一本足なので選択と集中、スピードという意味ではスタートアップにも勝ち目があるかもですね。一方、最近はベンチャークライアントモデルという認識や解釈を一部の大企業が持ち始めました。これからは双方の良いところを織り交ぜた共創が活発になり、世界で戦える大きい事業をつくれる様になると良いなと思ってます。
今後はどのような活動を目指していますか?
今は外に出歩いて固定化されていない出会いに重きを置いてます。出歩くと面白い話を拾ってくる感覚で、セレンディピティなドアが開いていくようなことが多いです。ardiをやっている会社の代表という軸もできはじめてきます。その前提で人に会いに行き、ardiを名刺代わりに出歩いて一緒ににおもしろい事業をつくっていく人、会社、ブランドと出会いたいです。