効果的なSDGs事業の取組に向けたSNS分析~第1回 SDGs浸透状況に関する考察~
はじめに
SDGsが社会に浸透し、「Why SDGs?」と「What is SDGs?」が提唱される機会も増えました。
日本の環境省によると、「SDGs」が創出する市場機会は年間12兆ドル、日本円に換算(1ドル=100円で換算)するとおよそ1,200兆円にも及ぶと言われており、今後もSDGsに関連するキーワードは様々な場面で目にする機会が増加すると考えられます。
また、昨今の事業を行う上で大事なキーワードが経済価値と社会価値の向上を両立させる「CSV(Creating Shared Value)」と、環境・社会・ガバナンスを投資の判断基準とする「ESG投資(Environment, Social, Governance)」であり、SDGsはビジネスにおいても重要ワードです。
SDGsを絵に描いた餅にしないため、SDGsを事業として推進を試みている企業等が増加している中、SDGsの推進者が様々な手法でSDGsの重要性やそのメリットを発信しようと試みています。
一方で、「SDGs」というキーワードの受信者は、発信者のメッセージをどのように受け止めているのでしょうか?
本分析では、「How To Achieve SDGs」の一助として、複数回にわたりSNS上で「SDGs」がどのように浸透しているのかを考察し、発信者のメッセージを受信者に効果的に伝える際に参考となるテクニックを提言します。
分析シリーズは全4回で構成されています。
第1回 SDGs浸透状況に関する考察
第2回 特定ニーズに対するSDGs分析手法
第3回 SDGs17目標に係るキーワード分析
第4回 個別企業・教育機関・自治体のSDGs戦略への提言
※こちらの記事は2020年に情報技術開発株式会社(tdi)様、株式会社ホットリンク様と作成したものを改めて本noteで公開しております。
アジェンダ
検索サイトで「SDGs」を確認してみよう
◆ Googleトレンドで見る「SDGs」検索状況
◆ WEB検索における「SDGs」の分析Xやブログで「SDGs」を確認してみよう
◆ 「SDGs」というキーワードの傾向分析
◆ 年代別の「SDGs」というキーワードの特徴分析
分析方法
今回の分析レポートでは、WEB、SNS、ニュースなどの情報を収集し、自然言語処理の技術を活用した分析結果から、マーケティングの専門家やSDGs関連のコンサルタントが気づいた点を取りまとめる方法を採用しています。
活用したソリューションは以下の2つとなります。
BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長
(株式会社ホットリンク 係長事業からの技術供与)
リンク先:https://www.hottolink.co.jp/UiPathを利用したWEBクローリング
(情報技術開発株式会社RPA推進室からの技術供与)
リンク先:https://www.tdi.co.jp/
検索サイトで「SDGs」を確認してみよう
◆Googleトレンドで見る「SDGs」検索状況
日本においても、世界においても。このキーワードの検索は増加傾向にあります。次の図は、WEB検索における、検索数の推移です。
◆WEB検索における「SDGs」の分析
Googleで行った「SDGs」の検索結果をRPAで収集し、キーワードの出現率を分析しました。
出現率の上位はSDGsに関する一般的な説明を行うための単語が占めています。現在の社会では、「SDGs」 に関する理解を深めるステージにあるようです。
中盤以降には「企業情報」「ホールディングス」「一般社団法人」や固有の企業名などの単語も出現しはじめ、企業等が行っているSDGsへの取り組み説明が見られます。その他「CSR」「事業活動」などの単語も見られ、SDGsを継続的な取り組みとして実践している姿が伺えます。
Xやブログで「SDGs」を確認してみよう
◆「SDGs」というキーワードの傾向分析
Xやブログにおける「SDGs」のキーワードの利用頻度を確認しました。
ここ1年で、SNS上では「SDGs」というキーワードの出現数は着実に増加しています。
「3/8国際女性デー」や「3/17みんなで考えるSDGsの日」などの制定日には、「SDGs」というキーワードが爆発的に増加する傾向が見られます。
次にBuzzSpreader Powered by クチコミ@係長の評判分析結果を確認しましょう。
好意的なコメントはブログが利用されるケースが多いようです。
また、若い世代にはTwitter(現X)利用が大半を占めていますが、年代が上がるほど、ブログを利用した発信が増加する傾向があります。
Xやブログの内容を確認すると、「ランキング」「アワード」を引用したリツイートを多く見つけることができます。
例えば、主なXでは次のような表現を確認出来ました。
「〇〇さんの発信がSDGsを考えるきっかけとなった」
「SDGsについて考えを深めることが出来た。感謝している」
「この番組でSDGsという言葉とその意味を知った」
「昨日放送された、SDGsに関する番組には深く感動した」
「△△さんはSDGsに関するコメントを真剣に話してくれるところが好きだ」
「◇◇さんはどの番組でもイベントでも、本当に勉強になることを言ってくれる。」
一方で、「自然破壊」「原発」「児童虐待」等の批判的な出来事を象徴するキーワードとして「SDGs」が使われる傾向も見られます。
例えば、次のような話の展開を見ることが出来ました。
「自然破壊のストップを謳っているが、一部企業のアクションによるイメージの悪化のために一般人からみるとってもSDGsには見えない」
「SDGsやESGの推進で、世界は原発を廃炉にする方向へ推移するはずだが、原発n安全性に気を付けなければ再稼働すべきという意見が絶えない」
「教育機関による子供への暴力行為に無関心な場合が多い。児童虐待ほう助になっている」
次に企業アカウントを見ていきましょう。
企業アカウントでは、キャンペーン等に合わせてSDGsの取り組みを効果的に伝える事例が発生しています。
当時、実施していた花王キャンペーンより抜粋(@KaoKurashiCP_jp)
※現在本アカウントは存在しておりません。
このキャンペーンに対して、以下のような反応が見られます。
「このような取り組みがあると知るきっかけになりました」
「エコに協力して素敵な企業だと思う」
「私たちも一人ひとりがちょっと意識するだけで世界の環境が変わる」
「エコへの取り組みとても参考になります」
明治キャンペーン情報より抜粋(@MeijiCoLtd)
このキャンペーンに対して、以下のような反応が見られます。
「チョコもSDGsにつながると知りました。身近なところからSDGsに取り組みます」
「カカオを育てる過程で、環境にやさしく木が増えるのが素敵」
「チョコレートづくりが農家の安定的な生活を支えると初めて知りました」
「これからもチョコレートを食べて応援します」
◆年代別の「SDGs」というキーワードの特徴分析
年代別にSDGsに関連して利用されるキーワードのランキングを確認すると、20代や30代では、環境や虐待等の社会問題や倫理的問題を参照する傾向が高いように見えます。
自分の取り組みより他社の取り組みについて言及したり、抽象的な表現を使う書き込みが多くなっています。
「SDGsの取り組みや目標は、人類全体の意識構造の発展において重要」
「ビジネスの在り方が『マネー資本主義からサステナブル資本主義』へ移行し、SDGs17目標への理解促進が加速する。
「人権デーに合わせて、東京スカイツリーと東京タワーがSDGsを示す17色にライトアップされます」
40代、50代になると、特定企業が実施しているSDGsに対する取り組みなど、具体的な取り組み内容を参照する傾向が強くなっています。
自分自身の行動や考えに言及したり、具体的な事象を紹介する書き込みが比較的多くなっています。
「SDGsすべての目標につながってるバナナペーパー。使うだけでSDGsに一歩踏み出せる」
「自身のSDGs取り組みの一環で、アイスクリーム容器に再利用システムを利用」
「自分はSDGsは慎重に考えるべきで、17目標にも足りない部分があると思っている」
提言
検索サイトの分析から、「SDGs」に関連する情報を求めている人も、「SDGs」の取り組みを発信している人も増加傾向にあると確認ができました。実社会においても、SNS上においても、「SDGs」に対する認識は確実に高まりつつあると言えるでしょう。SNSの外でも毎日のようにSDGsに関する情報を目にすることが増え、SDGsに取り組む企業や自治体の増加を肌で感じることができます。
SNS分析からは、企業や自治体などからのSDGsに関する情報発信をもとに、ツィートやブログなどで拡散する二次発信の増加がうかがえます。特に、SDGsに関する国際的なイベントや日本独自のSDGs推進イベントなどの前後では、SNS上でも「SDGs」のキーワードが急増し、著名なタレントのSDGsに対するコメントやSDGsを題材としたテレビプログラムなどを引用し、好意的に「SDGs」の取り組みを伝える二次発信者も散見されています。
では企業や自治体は、SDGsに関する情報発信として、HPを整備するだけでよいのでしょうか? それともTwitterの発信を強化させるべきでしょうか。
HPやプレスニュースを介してSDGsの取り組みを丁寧に発信することは効果的な取り組みだと言えますが、クイックに情報を知りたい人にとっては、情報過多と受け取られる可能性もあります。どのような人に対して発信したい取り組みであるのか、ターゲットを明確にしたうえで、フィットするアプローチを仕掛けることが重要になります。
例えば若い世代に向けてSDGsの取り組みを発信したい場合は、Twitterを主力に据え、自社アカウントにSDGsの目標を表す印象的な写真を掲載する、短い言葉で印象的な文章を用いるなどして、若い世代の興味を引き付けるメッセージを発信することが重要でしょうし、ブログを活用してSDGsの取り組みについてコメントすることの多い世代に向けては、HPやプレスリリース等の記事を充実させることが重要かもしれません。また、様々なランキングの上位に位置付けられたり、アワードを受賞することで、どの世代からも好意的に情報を発信してもらえる傾向が強くなります。その記事がリツィートやブログで拡散されることで、より多くの受信者にSDGsに関する情報にアクセスしてもらうことができ、広い範囲の受信者の中でSDGsというキーワードと企業イメージが結びついて醸成されることになるでしょう。
その一方で、社会的・倫理的な問題の象徴として「SDGs」というキーワードが瞬時に拡散する傾向も非常に強く、世論に逆行するような出来事はSDGsの取り組みをマイナスに評価される可能性があり、注意が必要です。
今の時代では、SDGsに取り組んでいる事実だけでは情報発信力が十分とは言い難く、情報を届けたい相手を見極め、そのターゲットに合わせた伝達手段とその使い分けが、SDGsというキーワードと企業イメージを結びつける重要なファクターの一つと言えるでしょう。
次回以降のレポートでは、「投資」「就活」「教育」「自治体サービス」というニーズごとに、SDGsへの期待がどのように議論されているかを分析するための手法について考察していきます。
⇒第2回 特定ニーズに対する「SDGs」分析手法へ
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・株式会社Flexas Z Webサイト:https://flexas-z.com/
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