<映画感想>JUMPER
どうも、
ノミが白昼夢をみた、です。
今アマゾンプライムで公開されている『Jumper』を見ました。
こんなにも「居心地悪さ」が「気持ち悪さ」に変わるシーンを目撃したのは初でした。私の中の「ひどい演技」の定義が更新されました。
監督が頭に浮かべたイメージはよーく伝わります。
朝はパリでコーヒーを飲み、モルディブでサーフィンしてからのキリマンジャロで仮眠をとる。リオでセクシーなお姉さんから電話番号をもらった後はNBAのファイナルをコートサイドで眺める。
主人公にとってこれは全て昼前の出来事です。
好きな時に好きな場所に瞬時に移動するという設定に魅了されない者がいるでしょうか。ドラえもんの「どこでもドア」の「ドア」がなくなった感じです。
だから正直最初の20分はお腹いっぱい満足しました。
15歳で自分の能力に気づいた主人公は口うるさい父のいる家から飛び出し、銀行の金を盗むなどしてやりたい放題。そうやって8年が過ぎた頃主人公は高級マンションで盗んだ金を使って贅沢な生活を送っている。
誰もが一度は夢見るシーンです。でも、話がここまで理想的となると、観客は思うはずです、「こんなにスムーズで大丈夫か」と。
予想通り、20分以降はそれまで好き勝手やった「報い」が下されることになります。サミュエル・L・ジャクソン演じるローランドという男に家で待ち伏せされ、ハイボルテージの棒で体を攻撃され、うまく空間移動ができなくなりパニックを起こす主人公ですが、なんとかして逃れる。
ローランドは中世から主人公のような能力を持つ「ジャンパー」たちを狩っている組織「パラディン」の一員。
この対決以降、映画は二人の追いかけっこをだらだらと撮りますが、とにかくひどいです。演出、演技、監督、脚本、すべての面において居心地悪いです。
最大の問題は映画が1時間で完結できたという点にあります。意味不明なシーンで埋め尽くされていく様子が居心地が悪いを超えて、気持ち悪さを感じさせます。
主人公と彼の初恋の女性がローランドによって追い詰められる場面がありますが、どう考えてもあそこで決着をつけることができたはずなんです。
しかし、尺を伸ばすためにつじつまの合わない結果に持ち込んでいて、呆れます。
それはもう、「なぜええええ!?」と叫んでしまうほどで、見ていて恐ろしいです。これ以降はもうこっちが色々混乱してしまい、ビクビクしながら主人公を眺める自分がいました。
冗談抜きで、本当に胸糞悪くて胸を叩いて叫んでしまう瞬間が多々あるのです。中盤以降の主人公の演技を見れば皆さんもきっとわかります。
中盤と後半の全てのシーンは、そのシーンのためではなく、結論のためだけに挿入された貧しいイメージになり下がっています。
どんなに良くあって欲しいと願っても、主人公は観客の期待に応えることはできません。
良い意味で性格が掴めない映画の主人公というのは魅力的ですが、デヴィッドはマイナスな意味で性格が掴めなくて不甲斐ないです。
今でも母親に出て行かれたことを「捨てられた」と思っていて、唖然するほど世間知らずで、学習力に乏しい甘ったれのピーターパン。氷の湖に落ちた時から彼の時間は止まっている。
8年も経っているのに異常なほどに初恋にしがみついているのがその証です。大陸かまわず世界を秒でまたぐ人間が8年も経っていて、恋に落ちていないというのは何がなんでもおかし過ぎます。
父親と向き合う勇気はないのに、父が倒れた時だけは素直に泣き叫ぶような都合の良さ。自分に対する同情の度合いが過ぎていて、惨めだと思い込んでいる過去を笑い飛ばす強さがないのに、そうしようとしていて見苦しい。
母の方は、中盤で急に出てきたと思えば消え、母もまたジャンパーで能力は遺伝子のためだと思い込んでいた矢先、最後にまた突然現れては、実は「パラディン」の一員ということが発覚する。
これでは遺伝子であった方がよっぽど納得いったような気がします。
味気ない主人公とその周辺の中で唯一喜びを感じるのは、もう一人のジャンパーのグリフィン。デヴィッドに比べれば、親の顔すら見たことのない彼はその暗い過去を覆い隠すかのように不真面目。
台詞や行動が彼の性格と一致していて、本当に心から好感を持てる役となっています。
ここまでの記述を振り返ってみると、なんだかすごい不満が爆発していることに気づいきますが、最後は映画の魅力を言って締め括りたいと思います。
『Jumper』の最大の魅力はアクション・シーンです。
これまでストーリーや演技といったテクニカルなことに文句言いましたが、この作品はあくまでもアクション映画というのが最大の売りです。
そして、その名の通り、アクション・シーンは申し分なく楽しめます。空間移動なのですごく重い編集になっているという批判もあったようですが、個人的には好きでした。
特に、デヴィッドとグリフィンが最後に国境をまたいで追いかけっこするシーンは非常にエキサイティングであると同時にグーフィーで面白いです。