桜の記憶
二分咲きの桜を見るなら
雨上がりのとき
射す光の中
洗われた青空をバックに
逆光で見上げるのがスキ。
満開の桜、
夢を見るのは狂気の世界
一人きりで桜の森の満開の下に
ひざを抱えて座る
音もなく舞い落ちる花びらを
咲きほこる花の笑みを
閉じた瞼の裏に、感光させる。
*
高校1年生
2階の教室の窓と、桜並木の高さが同じだった。
新しいクラス、まだ、馴染まない浮き立つ気分
古文の授業中、一瞬、かけぬけた風に
舞い上がる、桜吹雪!
クラス中に、そして、隣のクラスからも
いっせいにあがる、歓声。
だって、高校生なんて
話はんぶん聞きながら
窓の外を眺めている。
そんな、生き物でしょう?
また、今年も、サクラサク
繰り返す風景
そっと一枚、ふえていく
瞼の裏の、桜の記憶。