「太良と月と有明海」
はじめに
今回は、株式会社FLASPO(http://flaspo.jp)の一員として、参加者が快適な旅を送るための補助として太良町に伺わせていただきました。仕事という名目でしたが、実は僕が一番楽しんでいたかも。そんな旅の一部始終、太良町体験記を今回はnoteに残します。これを読み終わるころには読者の皆さんも太良に行きたくなるんじゃないかな。
太良と月と有明海
1日目
嵐が近づく中、私は佐賀の地に降り立った。佐賀空港から太良町までは50km。前日まで業務に追われ、時間に追われ、心が荒んでいた私は車を借りてのんびり行くことにした。ちゃんと予約をしていれば佐賀空港使用者は1000円で車を借りることができるが、手配を忘れ私は1万5千円で借りることとなった。少し苛立ち感じていた。
少し車で走っていると、雲に隠れていた太陽が完全に顔をだし、あたりの景色を照らし出してくれた。予報とは違い、嵐はまだ来ていないようだった。普段都内の大学に通い無機質な街に暮らしている身からすると、田園景色は新鮮だった。雨上がりの独特の空気も気持ちよかった。「ボブディランの愚かな風」を流しながら、1時間。国道444号線を南に降りて行った。景色を楽しんでいる間に太良町についていた。太良町の標識が見えるころには、有明海が目の前に広がっていた。
道の駅で※コンテスト参加者の皆さんや観光協会の古賀さんと開会式を済ませると、お昼過ぎになっていたので、私は腹ごしらえをすることにした。観光協会のパンフレットを見て、たらふく丼を食べることにした。たらふく丼は11種類ある。どの店のたらふく丼にするかには頭を悩ませた。どれも美味しそうだ。参加者の皆さんはどれを食べるかについて楽しそうに話していた。これを読んでいる方も太良町に行ったらぜひ楽しく悩んでほしい。結局、私は「家族亭フタバ」のたらふく丼を食べることにした。
家族亭フタバは道の駅から10分ほど海沿いを進むと、海の目の前にひょっこりと佇んでいる。名前の通り家族で営んでいるお店で、店に入ると野球部と思わしき中学生くらいの少年が元気よく迎え入れてくれた。店の窓からは海を眺めることができる。ここのたらふく丼はチーズミルフィーユかつ丼でみそ汁と漬物付き。腹一杯旨いものを食えて大満足。明るくフレッシュな野球少年たちから元気ももらえた。
※FLASPO×太良町観光協会様で開催したアイデアコンテスト(本記事一番下参照)
昼食も済ませ、私は太良の名所を回ることにした。太良の海中鳥居はとても有名で、私もまずここに行くことにした。ゆーみんの「ルージュの伝言」を口ずさみつつ海岸線を進んだ。すると直ぐに鳥居に着いた。言わずもがなとても美しかった。海外から来たと思われる観光客も何人かいた。
少し奥の方に行くと海中道路があった。道路が海の中まで続いており電柱が水の中に沈んでいた。五位鷺が羽を休ませていることも相まってジブリを彷彿とさせる情景であった。ここを出た後は大魚神社、白浜海岸や古墳を巡ったり、多良岳オレンジ海道をドライブしたりした。ここの海岸線は江の島よりも走っていて爽快だ。
夕方になり宿へ向かった。今宵の宿は平浜壮。70代くらいのおばあちゃん女将が切り盛りしているアットホームな旅館で船着き場の目の前にある。古めかしいが清潔感のある部屋で一休みした後、6時になり別部屋に食事が用意された。食事用の個室が別でありゆっくりと食べることができるので、疲れている私にはとても有難かった。ここの宿は竹崎蟹を中心とした豪華な食事で有名で蟹が3匹ほど出てくる。特に脱皮蟹の天麩羅は絶品であった。柔らかいし香ばしい。晩夏が旬だということで、ぜひこれを読んでいる方は夏休みの終わりごろに太良町を訪れてほしい。新鮮な刺身に脂ののった肉、そして竹崎蟹。太良の宝庫を体現したかのような食事だった。
私が女将のお孫さんと年齢が近いということもあり親近感を覚えてくれたのか、食事中私の大学や女将のお孫さんの話で盛り上がった。人の暖かさを感じた。締めの白飯とみそ汁、漬物を食べた後、「ご馳走様でした」と伝え部屋に戻った。
時計を見ると既に20時。腹を休ませた後、少し外に星空を眺めに行こうとした。「太良 星空」で検索すると美しく夜空に輝く星々の画像をみることができる。月の名所としても有名な太良町で星空を見ることをとても楽しみにしていた。
廊下に出てみると既に消灯されており、廊下は暗かった。少し嫌な予感がした。そしてこの予感は的中した。旅館の入り口のドアが施錠されており、外に出ることができなかった(笑)。
どちらにせよおそらく外は曇っていたから、星空を見ることは叶わなかっただろう、と自分を納得させた。それでも浴場の窓から月と有明海を眺めることができた。いい湯と月と有明海。一日を占めるのに最高すぎる空間だった。
風呂を出たのち、一日動いていたこともあり10時ごろに就寝した。
2日目
翌朝、5時くらいに起きた。朝ごはんは8時と伝えられていた。3時間ほど早く起きたのには理由がある。朝早く竹崎城址展望台に行き、景色を独り占めしようとしたのだ。車を走らせて4分、宿から竹崎城址はとても近かった。
車を停めた駐車場の周りは木が生い茂っており海を眺めることはできない。どんな景色が待っているのか。期待に胸を膨らませつつ、階段を急いだ。階段を少し上ると直ぐに展望台に着いた。見晴らしがよく、眼下には山海が広がっていた。360度のパノラマを楽しんだのは久しぶりだった。雲の隙間から朝日が漏れ出ている。天から龍が舞い降りてくるような神秘的で叙情的な雰囲気を朝ぼらけの有明海は漂わせていた。思わず「美しい」と一人ごとをつぶやいてしまっていた。潮風と朝日の匂いが私の体を通り抜ける。私はここに小一時間ほどいた。この幻想かとも思える大自然が私を決して離そうとしてくれなかった。
宿に帰る途中、時間もあったので少し遠回りしていこうと路地へ入った。しかし、これが大失敗。道が狭すぎた。引き返そうとバックした途端、車に衝撃が走った。側溝に片車輪を落としてしまったのだ。先ほどまでの甘美なる経験とは打って変わって、絶望を味わった。なぜこの旅では、車に掛かると不幸が舞い降りてくるのか、と愚痴をこぼしつつ、どうしたものかと困惑していると、「この間も観光してた方が側溝に車落としていたよ笑」と言いながら近所の家の方が外へ出てきて声をかけてくれた。彼女は直ぐに近隣の家に周り男たちを呼んできてくれた。有明の漁師たちだ。数人集まると屈強な彼らは車を持ち上げ、側溝からタイヤを引き上げてくれた。ここでもまた人のやさしさを感じることができた。運よく車も傷ついていなかった。感謝を伝え、ほっと胸をなでおろしつつ宿に戻った。
朝食まで少しだけ時間も残っていたので、朝風呂をすることにした。温泉で気持ちもリフレッシュした。朝食もやはり豪華だった。蟹の釜めしに蟹の味噌汁、そして有明海で獲れた焼き魚。私が景色を楽しんでいる間まで海で泳いでたであろう彼らはとても新鮮でおいしかった笑。朝ごはんを充分に楽しんだ後、宿を出て観光協会の古賀さんに挨拶を済ませ、Happy endの「風を集めて」と共に帰路へ着いた。
帰路の途中、私はあることに気が付いた。
「この町では時間がゆっくり流れている。」
太良町の人々はみな平穏な世界に生きていた。またここへ足を踏み入れた観光客もそうなる。私も穏やかな気持ちになっていた。名所は沢山あるが、ありすぎるということもなく一日あればある程度回ることができ、時間に追われる必要がないからだ。多くの人は東京、大阪や福岡などの都市、または京都や金沢などの歴史的な観光地へ旅行をしたがる。それはもちろん遊び場が多いし、楽しいこともたくさんあるだろう。しかし、旅行先に行ってまで時間に縛られていたいのか。せかせかとタイムスケジュールを気にするのでは日々の暮らしの疲れを取りきることはできないだろう。
旅行すると疲れてしまうから、旅行は当分いいかなと感じたあなた。無機質な都会で人の暖かさを忘れたあなた。狭い空気の中で息苦しさを感じているあなた。自然の美しさから長く離れてしまっているあなた。
そんなあなた方には、ぜひ太良町へ行くことをおすすめしたい。太良町では、観光をしなければならないということはない。この町の時間の中で、読書をし、思索に耽るのも一興だろう。労働ばかりの堅い現実に退屈していた私に、自然が織りなす審美的で空想的な世界を見せてくれた。そしてそれを感動している自分に気づかせてくれた。
最後に
この旅を通して私が得たものは、単に佐賀県太良町に行ったという事実だけではない。自然に感動する豊かな感情を持つ自分の存在への認識をも得ることができた。
来年の夏は、有明海の月と共にあなたの心を照らしだす太良町に会いに行ってみてはいかかだろうか。
T.H
アイデアコンテストプラットフォームFLASPO
FLASPOでは、企業・自治体 が簡単にオンラインコンテストを開催し 、
アイデア収集・PR ・採用ができるプラットフォームサービス『FLASPO』を運営しています。
今回、太良町観光協会様とコラボをして開催させていただいた※アイデアコンテスト&アイデア実現プロジェクト の詳細は以下リンクから!