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働く私たち 2

人物
森田ゆみ (26)営業事務
松田綾 (22)ゆみの後輩、新人
佐々木亮介 (34)ゆみの先輩、係長
瀬川敦 (26)ゆみと同期、営業
総務課員

○会社、駐車場
テーブルが並び、その上には非常食の米や配布用の容器などが用意されている。ガスバーナーに大きな鍋が置かれ、炊き出し用の味噌汁を作る準備をしている。それを手伝っている綾。大きな入れものに入った非常食の米でおにぎりを作るゆみと瀬川。
瀬川 「昨日、松田さん、サンプルにお茶かけて ダメにしゃったんだって?」
ゆみ 「うん、サンプルでよかったよ」
瀬川 「教育係なんだからガツンと言ったか ? 」
ゆみ 「何をよ」
瀬川 「ガツンだよ」
ゆみ 「松田さん結構凹んでたし根が真面目で
しっかりしてるから言わなくても大丈夫よ」
瀬川 「甘いなぁ」
綾が走ってやってくる。
綾 「味噌汁の鍋の火がつかなくて、総務の
人たち困ってるんです」
ゆみ 「配布時間まであと少ししかないからそ
っちの応援に入った方が良さそうね」
綾 「バーナーの着火さえうまくいけば、あ
とは大丈夫なんですが」
瀬川 「瀬川はできる男だってとこ見せつけち
ゃいますか」
瀬川はおにぎりを握る手を止め、綾と共に味噌汁の鍋の方に向かう。 瀬川はバーナーの調子を見ながら
瀬川 「ガスは通ってるね」
総務部員 「チャッカマンとかあれば難なく着
くと思うんですけど...」
瀬川 「チャッカマン?」
総務部員 「ライターでも火がつけばいいんで
すがあいにく手元になくて...」
瀬川 「あるよ」
上着のポケットからチャッカマンとマッ チを出す瀬川。驚き羨望の眼差しで見つめる総務部員達と綾。瀬川はマッチを綾に渡し、チャッカマンの封をあけ、 火をつけようとする。
チャッカマンの音 (カチッ)
瀬川 「あれ?」
何度か試すが火は付かず焦る瀬川。その隣で綾がマッチを使い、着火し無事バ ーナーに火がつく。
総務部員 「ありがとう、松田さん」
周りの総務部員も綾を取り囲む。綾の顔は達成感に満ち溢れる。
綾 「火もついたことだし味噌汁作っちゃい
ましょう」
和気あいあいと作業に取りくむ総務部員と綾。瀬川はゆみの元に戻ってくる。
ゆみ 「瀬川、できる男じゃん」
瀬川 「まーな」
ゆみ 「松田さん、しっかりしてるでしょ」
瀬川 「まーな」
いきいきした表情で味噌汁の鍋の様子を見る綾を見守るゆみ。

○会社ビルの前
イベントの旗が立っている。旗には秋のガス祭りとついている。

○会社内・ショールーム
イベントで飾られてた店内。お菓子やくじ引きなどがあり、子供向けのクイズ (マッチ棒クイズ)は人気で人だかりができている。それに対応している綾。接客をし終えたゆみに佐々木が声をかける。
佐々木 「マッチ棒クイズ大盛況だね。松田さんの案、採用してよかったね」
ゆみ 「はい」

○会社内・会議室 (回想)
課のミーティングが行われている。
佐々木 「では前回言った通り、販促品につい ての意見を聞かせてください。じゃあ...」
綾 「はい」
手をあげる綾。
佐々木 「松田さん、積極的だね。どうぞ」
綾 「私、この前までマッチ使ったことなかったんです。先日の炊き出し訓練で初めてマッチを使って、火がついた時、すごく嬉しかった。火の大切さを実感しました。マッチかチャッカマンかではなくてどっちもはダメですか?」
顔を見合わせる周囲。
綾 「お客様の使いやすい方を選んでもらえ たらいいなぁって思うんです。マッチに馴染みのない人にも興味をもってもらえるように子供向けのマッチ棒クイズもイベントでやってはどうでしょうか?」
佐々木 「松田さん、しっかり考えてくれてる
ね、ありがとう」
はにかみ、ゆみを見る綾。綾と目が合い微笑みうなづくゆみ。

○元のショールーム
イベント中。佐々木とゆみが話している 。
ゆみ 「自分の意見をはっきり言うの、初めて で緊張したって言ってました。でもすごく自信ついたみたいです。自分の成長を実感するよりも後輩の成長を実感する方が何倍も嬉しいものなんですね」
佐々木に軽く会釈し、走って綾の元へ行くゆみ。 一緒にクイズに並ぶお客の対応をする。ゆみの手には販促品のチャッカマンとマッチ、子どもの客はどちらか見比べ、マッチを手に取り、両親に嬉しそうに見せる。それを見て微笑むゆみと綾。

おしまい

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