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寺地はるな『水を縫う』集英社〔内容紹介/2021年中学入試頻出作品・背景説明・登場人物紹介・あらすじ・読み解きのポイント/急いで筋を確認したい受験生向け〕

寺地はるな『水を縫う』集英社

2021年に

・市川中学校
・大妻中学校
・海城中学校
・中央大学附属横浜中学校
・東邦大学付属東邦中学校
・三輪田学園中学校

で出題されています。


★背景説明


 この物語は章ごとに語り手が変わります。ですから、だれが主人公なのか決めるのは難しいのですが、やはり受験生のみなさんといちばん年が近く、最初の第一章と最後の第六章という二章分の語りをつとめている清澄〔きよすみ〕を中心にして人間関係を読み取っていくのが分かりやすいでしょう。

 清澄は高校一年生。刺繍の好きな男子です。男子なのに刺繍? そう意外に思う人も多いかもしれません。
 このお話に出てくる語り手たちはみなそんな「~なのに」を抱えて生きています。たとえば清澄の姉の水青〔みお〕は女性「なのに」かわいらしいものが苦手です。清澄はそんな水青のためにシンプルなウェディングドレスを作ろうとします。


★登場人物

松岡清澄
第一章と第六章の語り手。十六歳。高校一年生。母と祖母と姉の四人暮らし。家族からは「キヨ」と呼ばれている。

松岡水青
 第二章の語り手。二十三歳。清澄の姉。高校を卒業してすぐに学習塾に就職した。秋に結婚して家を出ていく予定。

松岡さつ子
 第三章の語り手。清澄と水青の母親。清澄が一歳のときに離婚し、市役所に勤めながら子供を育てている。

松岡文枝
 第四章の語り手。七十四歳。清澄と水青の祖母。さつ子の母親。

黒田
 第五章の語り手。清澄と水青の父親である全の友人で雇い主。父の代から続く縫製工場を経営している。


 清澄と水青の父親。デザイナーになって自分のブランドを立ち上げるのが夢だったが、さつ子と結婚してからは服飾メーカーの営業職として働いていた。清澄が一歳のときに離婚し、今は黒田の縫製工場にデザイナーとして雇われている。

高杉くるみ
 清澄のクラスメイトで幼なじみ。石が好き。

宮多雄大
 清澄のクラスメイト。

紺野
 水青の婚約者。


★あらすじ

 高校一年生の清澄は男子ながら刺繍が好きです。清澄に刺繍を教えたのは祖母の文枝でした。しかし、「普通」が好きな母親のさつ子はそのことをよく思っていません。清澄の姉の水青は秋に結婚を控えていますが、フリルやリボンのようにかわいらしいものが苦手なのでウェディングドレスを着ることをためらっています。清澄は水青のためにシンプルなドレスを作りたいと申し出ます。
 実は、さつ子の離婚した夫の全は結婚前はデザイナーを目指して服飾の専門学校に通っていました。さつ子と結婚して水青が生まれてからは営業職として働いていましたが、清澄が一歳になったときに離婚し、今は専門学校時代からの友人である黒田の経営する縫製工場に雇われて洋服を作っています。さつ子は清澄がドレスを作りたがるのは全に似ているためだと感じます。
 そうして始めた清澄のドレス作りは上手くいきません。清澄はついに黒田に頼んで父親の全に助けを求めます。黒田は全のデザイナーとしての才能を認めて、また前のように情熱的に洋服のデザインをして欲しいと願っていました。全は清澄の頼みを聞き入れ、水青のためにすばらしいドレスを作ります。清澄はそのドレスに流れる水の刺繍をすることにします。


★読み解きのポイント

 このお話を正確に読むにあたって重要なのは人間関係を思いこみで判断しないこと。たとえば、「黒田さん」がだれであるのかは後半にならないと分からないかもしれません。そういう場合には根拠のない想像を広げ過ぎず、まずは書いてあるとおりに、「清澄たちのところに養育費を持ってくる父親ではない男の人なのだな」と覚えておくこと。想像力をたくましくし過ぎて間違った思いこみをすると大変です。うかつに思いこまず、書かれていることをそのまま頭に入れながら読み進んでいきましょう。
 

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