夜明けのすべて 瀬尾 まいこ
好きな作家さんは?と聞かれた時の答えはいつも、ずっと、瀬尾まいこさんです。
激しい展開はないのに、最初から最後までおもしろい、いつまでも物語が続いてほしい、と思う本を書いてくださいます。
わたしも病気で悩んでいた時期があったので、共感してもらえるような気持ちになって、自分の中で、宙に浮いていた虚しさが溶けていくような安堵感がありました。
何をしたって、どうしようもない。何も助けにはなってくれない。だけど、どうにかしたい。しないといけないのに。
小さな部屋の中で、パワーが虚しく回り続けるだけで、どこにも辿り着けない感じ。
ひとりだけ、取り残されている。
みんなと同じ様には出来ない、不思議さにも近い、悔しさ。
主人公は物語の中でコロッと完治することなんてないまま、解決には至らないまま、物語は進んでいきます。
でも。それでも腐ることなく、毎日を過ごしていきます。
本作の中で、主人公の2人が病気を抱えたままに、それでも毎日を積み重ねるその様子は、何を諦めて、何を諦めないかを決めていく作業にも見えました。そしてそれは、深刻な様子でもなんでもなく、人との関わりを通して、とても軽やかに進む、明るい作業です。
諦めたくないことは何ですか?
今、自分にとって、大切ではないことは何ですか?
大げさなことでなく、
毎日を送る中で、気づいていけたら、決めていけたら。
思うようにはいかない何かがあっても、迷わずにまっすぐに歩いていけるのかもしれない。
お守りの様に、胸にきゅっと抱きたくなる本でした。
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