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プロダクトマネージャーへの4つの問いをUC Berkeley PM講座を踏まえて考えてみた
こんにちは、Salesforceでプロダクトマネージャーをしている深田です。
昨年の秋ごろに2ヶ月間、カルフォリニア大学バークレー校のビジネススクール Haas Berkeleyが提供しているプロダクトマネジメントのコース(Product Management Studio)を受講しました。当時は講座の内容は理解できたんですが、PMになったばかりで活動や体験として腹落ちしきれていないこともあり、まとめを書いていませんでした。弊社は2月から新しい年次が始まることもあり、これまでのPMとしての学びや活動を振り返りたいなと思っていたため、この一年で感じたことや学んだことを交えながら、コンテンツの振り返りまとめを書こうと思います。
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このプロダクトマネジメントのコースは、プロダクトマネージャーが顧客に愛される製品をデザイン、開発するために必要なスキルを養うことを目的としています。期間は8週間で、全てオンラインで実施されました。コンテンツにはビデオ講義、教員によるライブ授業、チームメンバーとのディスカッション、課題、現役PMによるコーチング、インタラクティブなシミュレーションなどが盛り込まれていました。参加者にはSalesforce, Google, Airbnbといった企業のPMや個人事業主など全世界から40名程度が参加しており、日本人は私含めて2人でした。それでは、早速はじめます。
Effectively managing a product team, leveraging design thinking, and understanding a product lifecycle is good business. Centering the customer experience and creating a compelling product narrative is great business.
はじめに
なぜプロダクトマネージャーが今日重要なのか
プロダクトマネージャーは、構築する顧客体験において3つの目標を達成することを目指します。
Desirablility: その体験は顧客が望むような体験か?
Feasibility: その体験は、特に技術的な観点から実現可能なものか?
Viability: その体験はビジネスの観点から実行可能か?それはお金を稼ぐことができるか?
これらを同時に満たすものがイノベーションであり、イノベーションをプロダクトマネージャーは追い続けなければなりません。色々なところで紹介されているがまさにこれを意識しなければならないと感じています。
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今日、これらの目標を達成することは、以前よりも複雑で難しくなっています。なぜなら、顧客の要求水準は高くなり、製品の基本的な機能以上の変革を求めるようになったからです。テクノロジーはかつてない速さで進歩し、収益性の高いビジネスを設計するためのさまざまな新しいビジネスモデルが存在しています。
製品を評価する際には、顧客の期待の変化、テクノロジーの変化、ビジネスモデルの変化が、どう組織や製品に影響を与えるのか考えてみてください。
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PMへの4つの問い
これらの変化を的確に捉え、イノベーションを顧客に提供する素晴らしい製品を作るために、プロダクトマネージャーは以下の"4つの問い"について、回答する術を学ぶ必要があります。今回のコースは、"プロダクトマネージャーが知っておくべき4つの問い"への答え方を学ぶことで、顧客体験を中心にした説得力のある製品ストーリーを創れるようになることを目的として設計されていました。
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3つの重要な要素
これら4つの問いに対する答えを見つけ、説得力のある製品ストーリーを作るために、Haasは以下の三つが重要であると考えています。📋Product Management Canvas(PMC), 💡Innovation Capabilities, 🎙Storytellingを活用しました。それらの関係性を以下の図に表しています。
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📋Product Management Canvasは、製品やビジネスを整理するためリーンキャンバスによく似ていて、4つの問いを整理するためにリフレーミングされたもの。
💡Innovation Capabilitiesとは、上記4つの問いに対する答えを見つけ、イノベーションを実現するためにPMに必要なスキル群。
🎙Storytellingとは、製品が顧客にもたらす体験をストーリーとして表現することで、チームメイト、ステークホルダー、顧客に製品の価値をより効果的に伝える手段。
すなわち、Innovation CapabilitiesというPMに必要な素養を基盤にPMCという製品全体の絵を描き、その絵がいかに素晴らしいのか魅力的なストーリーとして語ることで、顧客/組織全体を巻き込みながら新しい顧客体験を作り出す、というのがこのプログラムの全体像になります。そのため、プログラムでは、真っ新な状態から作り出した自分の製品のPMCをメンターやメンバーとのディスカッションを通してブラッシュアップし、より良いストーリーとして語れるように練習しました。
前回のnoteでは、ストーリーテリングについてまとめました。このプログラムで学んだことをいかにPM業務に落とし込んだのか、そして、だれもがストーリーを語れるようにまとめています。興味のある方は是非ご覧ください。
今回は、Product Management Canvasに書かれている4つの問いについて深掘りしていきます。
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Product Management Canvas
製品やビジネスを整理するために様々なアプローチがあると思います。自社にあった方法やツールを選択すれば良いと思いますが、カバーしなければならない要素は大枠同じだと思っています。今回使ったキャンバスは、それらの要素を製品の価値を中心に質問形式でまとめています。プロダクトマネージャーにも、技術に強いTechnical or Platform PM、データ分析に強い、Analytics PM、グロースに強いGrowth PMなど様々な種類のPMがいますが、どんなPMであれ、以下の4つの問いに対してすぐに答えれる必要があります。それでは一つずつ見ていきます。
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1.誰にどんな価値を提供しているのか?
この問いは4つの問いの中で最も重要です。INSPIREDにもあるように、プロダクトマネージャーは"Being the voice of the customer"を体現してこの問いに対するスペシャリストでなければなりません。この問いに対する答えを見つけてはじめて、残りの問いに答えることができます。
プロダクトマネジャーは、顧客の専門家として広く認められなければならない。顧客が抱える問題、悩み、欲望、考え方、そしてビジネス向け製品の場合には、仕事のやり方や購入の意思決定方法も知る必要がある。
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では、どういう観点で顧客の専門家になれば良いのでしょうか?
私たちの目標は顧客の成功です。そのために、私たちの製品やサービスが「どんな顧客の成功」を実現するものなのかを見つけなければなりません。これを見つけるためのシンプルな質問が「顧客は製品を雇い、どのようなジョブを達成したいのか?」です。ジョブ "Jobs to be done"とは、顧客がある状況下で成し遂げようとしていることで、日々成さなければならないタスクかもしれないし、解決しなければならない問題かもしれないし、満たされるべきニーズかもしれません。SalesforceでもこのJTBDアプローチで顧客に成功をもたらす革新的な製品を世に送り出しています。
組織によってアプローチ方法は違うと思いますが、PMは私たちが価値を提供しようとしているターゲット顧客の抱えている達成したいこと、それにどう貢献し、他者とは違う自社特有の価値を提供することができるのか発見する必要があります。多くの顧客に有効な一つのソリューションを考え出すために、このプロセスでは根本的な課題を解決し、説得力のある価値を確立することにプロダクトマネージャーはフォーカスしなければなりません。
一年間ローカルのPMとしてUSのプロダクトチームが開発している新製品を日本の顧客に使ってもらうために製品価値を検証する活動をしてきました。その中で、この1つ目の問いへの答えを出す力や素養は顧客と会うことでしか養われないと感じています。顧客との会話を通して、素早く学び続けることがとても重要だなとひしひし感じます。
2.どのように価値を創出しているのか?
顧客に提供する価値を発見した次のステップでは、それらの価値を創造するために組織は何をすべきなのか考える必要があります。
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まず第一に、価値を生み出す上で重要な企業活動があります。ビジネスモデルを成立させるために最も必要なこと、価値を生み出すために、あなたの会社がやらなければならない重要なことは何でしょうか?例えばMckinsey & Co.であれば、問題解決、Dellはサプライチェーン管理、Ebayは二面性のある市場のプラットフォームを維持することです。
さらに、どんなリソースを投下してこれらの主要な活動を進めるのか考える必要があります。例えば、DellやAmazonであれば、製造工場や物流センターであるし、通信技術や半導体の設計開発を行うQualcommは特許開発ですし、法律事務所であれば、特定の領域のスキルに秀でた弁護士を雇うことになります。第一の質問で定義した価値を最大化した状態でパッケージングするためには、どういう活動にフォーカスし、リソースを投下するか理解しておくことが重要です。
もちろん、自社でこれら全てを実行することは難しいため、価値創出を手助けしてくれるパートナーを見つけることも重要です。製品だけでなく、ビジネスという観点でも成長をを促進するために、ビジネスとプロダクトの両面からWin-winな関係を構築します。そうすることで、顧客のジャーニー全体にわたって、パートナーがテクノロジーとビジネスの空白を埋め、製品、業界、地域をまたいだソリューションを顧客に提供することができます。さらに、企業だけでなく、顧客にもプラットフォームやビジネスに参画してもらい、共にイノベーションエコシステムを作り上げていきます。
Salesforceエコシステムでは、2021年から2026年の5年間に日本で974億ドルの新規事業と44万人を超える新規雇用を創出されると言われています。
3.どのように価値を届けているのか?
さて、自社やパートナー共に創り出した価値をどのようにすれば顧客に最適な形で早く届けることができるのでしょうか?チャネルはビジネスの設計、成長、収益性に大きく関わるものです。
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ここでもこれまでの問いの答えをベースに、さらに下記の項目についてリサーチを行なっていきます。
- どのような製品を生産しているのか?
- 顧客は誰で、どのように購入したいのか?
- その市場の規模や分布はどの程度か?
- 競合他社は誰で、同じチャネルを使用しているのか?
- 顧客にアプローチするために使用するチャネルの代わりは何なのか?
これらの問いをクリアにした後に、Channel Mapを活用してチャネルと顧客ステージ(Aeareness, Evaluation, Purchase, Delivery, After sales)ごとに、各チャネルで我々が顧客のために何ができるのかを整理しました。その結果、最適なチャネルは何でどこにリソースを投下すべきなのかクリアにすることができます。
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Salesforceでは一貫した価値を顧客に提供し、カスタマーサクセスを追求するためにThe Modelという営業プロセスを採用しています。The Modelを単なる各営業ステージにおけるKPIの可視化ではなく、「お客様の成功と共に、売上を拡大する仕組み」と位置づけ、マーケティングから商談、成約後のカスタマーサクセスまで、各部門間が連携して、一貫した顧客対応をとる体制が整えられています。このThe Modelにおいて、PMは製品開発なのでマーケティングの前に位置しています。すなわち、PMが棚においた製品をPMMが顧客に手に取ってもらえるようにマス的にマーケティングすることになります。PMとしては、製品だけでなく、製品のビジョンを体現して成功している顧客の事例、カスタマーストーリーを製品の提供段階でPMMに届けることを目標にするべきです。そうして出来上がった軸となるカスタマーストーリーと共に製品のメッセージング、セールスコンテンツを営業チームに展開し、このThe Modelのパイプの質を上げていくことが重要だと思っています。しかし、個人的にはSales-Led-Growthを牽引してきたこのモデルも転換期を迎え、Product-Led-Growthもうまく活用した共存モデルへシフトする必要があるのではと思います。また、こういった社内モデルだけでなく、先程のパートナーエコシステムも重要なチャネルの一つであることも忘れてはいけません。
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4.どのように価値を獲得しているのか?
顧客へ価値を届けれて顧客の満足度や評価が高かったとしても、製品として収益を生み出し自社ビジネスに貢献しなければ製品の成功とは言えません。これまでにPMが定義した製品価値というものを収益という形で変換するのがプライシングです。PMがこのプライシング設計にどう関わるかは組織におけるPMの役割によって様々ですが、少なくともPMはこれまでに定義した価値を収益化する方法まで考えて製品設計する必要があると思います。プライシングアプローチとして、製品の開発コストベース、競合の価格ベース、将来のマーケットシェアの目標ベースなど様々なアプローチがありますが、第一の問いである顧客への価値に立ち返り、顧客価値ベースで考えることが重要です。裏を返せば、顧客への価値が明確でなければ、その製品の価格は常に高いことになります。
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ここでは顧客価値ベースというアプローチを以下の方程式で表現しています。顧客の製品に対してお金を払いたいという意思(Willingness-to-pay)は、顧客のジョブが達成されることにより顧客の受け取る価値(Percieved Value)と競合などの参考価格やスイッチングコスト、アダプションといった顧客の購買力学(Purchasing Dynamics)によって構成される。ということ。
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算出されたWillingness-to-Payをベースに、自社のマーケティング戦略にアラインしてプライシングを設定します。その差分が顧客にとってのインセンティブになります。
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個人的にはジョブや購買力学を具体的な数字に落とし込む部分は疑問がまだまだあります。しかし、この顧客価値ベースというロジック自体は価格を決めないPMでも頭に入れておくことは重要だと感じています。お客様に新製品を紹介する中で「製品価値は理解したがお金を払うほどではない、まだその価値を最大限活用できない」というコメントをよくいただきます。これはジョブがその顧客にないため、顧客の受け取る価値が小さくなり、結果としてWillingness-to-payよりもPriceが上にきていることになります。新製品を日本の顧客にいち早く使って価値を感じてもらうことをミッションとしている私のような外資系のPMであれば、製品が提供する価値を理解し、ジョブを抱えた顧客に適切にアプローチする必要があります。でなければ、金銭的な面で継続的に活用いただくことが難しくなります。
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さいごに
いかがでしたか、最後まで読んでいただきありがとうございました。自分の活動や自分の担当製品について整理する際に上記の4つの問いをベースに考えてみてください。少しでも皆さんのヒントになればとても嬉しいです。
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次はPMに必要な要素、スキルであるInnovation Capabilitiesについてまとめようと思います。Storytelllingについては、noteでもまとめているので是非今回のnoteと合わせて見てみてください。
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— ふかだこうへい | SaaS PM ☁ (@fkohe1) November 27, 2021
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