『涙で彩る卒園式』
溜め込んでいたものを全て吐き出すかのような、前日の雨のおかげで快晴となった卒園式当日。
手伝いに来てくれていた義母のおかげもあってスムーズに朝の準備が完了して僕、妻、長女で家を出る。
次女は、ばぁばとお留守番。
紺のスーツの僕、黒を基調にコーディネートした妻。そして少し小さくなってしまった制服に身を包んだ長女で、予約したタクシーで幼稚園に向かう。
パリッと決めて乗るタクシーの車内には服装も相まってか少し緊張感がある。
思えば3年前。入園式に向かう日も予約したタクシーの車内には緊張感があった。
うまく幼稚園に馴染めるか?友達とちゃんと遊べるか?先生の言うことが聞けるか?嫌なことや酷いことをされたり、したりしないか?
ブカブカの制服の隙間がそんな不安と期待を煽ったのを覚えている。
制服のブラウスのボタンがうまく嵌められず、泣き出してしまっていた長女が今日、卒園式を迎える。
いろんなことがあった。
コロナ禍での入園。
楽しみにしていた行事は縮小、もしくは中止。
そんな影響を受けて、父の日からはかなり時期がズレてしまったが、なんとか行われた父親参観。
先生と子供達とで工作や遊び、いろいろ準備してくれていた。
中でも椅子に座った父親たちの膝の前に立ち、大きな声で歌ってくれた歌は一生忘れない。
【すてきなパパ】という歌。
幼稚園に入園する前からテレビコマーシャルで使われていたこの曲、それを耳コピした長女はこの歌をよくリビングで歌っていた。
『ぱぱ、ぱぱ、ちょいちょいぱぱ〜、、、、』と歌う2歳の長女。
まだ、たちつてとがハッキリしない日本語が可愛くて【ちょいちょい】ってなんやねん!と言いながら妻と笑い、元となるコマーシャル自体を検索し観てみると出演している子役も『ちょいちょい〜♪』と歌っていました。なので本当の曲の歌詞を調べずにそのままにしておりました。
父親参観当日、先生のピアノの前奏が流れてきて体が反応する。
あれっ!?この曲知ってるぞ!?どっかできいたぞ!?
そんなことを思っていると目の前の長女がハッキリとした歌詞で歌い出す。
【パパ パパ つよい つよいパパ
せかいのだれより つよいんだ
おこった おかおは こわいけど
ほんとは とっても やさしくて
すてきな すてきな パパなんだ】
ちょいちょいの正体は【つよいつよい】だった。
本当の歌詞を知ったことと長女の成長を感じたことで、一気に涙が溢れ出しました。
マスクは涙でぐしょぐしょ、しぼれるほどだったと思う。
心残りは、1番かわいい時期であろう年少さんの年に開催中止となった運動会。
きっと可愛かっただろうなと、今でも思い描く。
でもその喪失感は年中さんの運動会で少し和らいだ。
初めての徒競走。
クラスメイトと3人ずつになって、こちらに走ってくる。
ゴール側でカメラを準備して夫婦で待つ。
何日も前から、手を早く振るんだよ!そしたら早く走れるよ!とジェスチャー込みで伝えていた。
が、伝え方が甘かった、、、。
ジェスチャーをする時、肘を90度に曲げた腕を背中側にまでしっかり交互に振るように伝えなければならなかった。
僕が長女に伝えていたジェスチャーは体の前面で小刻みに上下に振るだけのものだった。
いよいよ長女のいる組の出走の番。
『よーいスタート!』
元気の良い先生の声と共に3人がスタートラインから飛び出す!
がんばれ!!転ぶなよ!!!
そう思った矢先。
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