人材採用におけるカジュアル面談の有効性と実施に伴うポイント
こんにちは、あるいはこんばんは。
「人・組織の困ったをハンズオンで解決に導く人事支援サービス」を提供している FiVE Inc. 代表の泉谷(@Show_Iz)です。
今回のコラムのテーマは「カジュアル面談」です。
昨今、「カジュアル面談」という言葉を耳にすることも多くなっていますね。カジュアル面談はIT系のスタートアップやベンチャー企業における採用のシーンではかなり前(10年以上前)から当たり前のように行なわれてきたもので、その裾野はどんどん広がってきています。
すでに実際にカジュアル面談を取り入れている企業の採用担当者様も少なくないかもしれません。ただ、裾野が広がり、カジュアル面談を導入している企業様が増えることに伴い、導入したはいいもののいまいち成果が出ていない...といった企業様も増えていらっしゃる印象を持っています。
カジュアル面談は、適切に実施すれば自社 / 募集ポジションにマッチした人材の確保において非常に有用な機会になり得ることから、今回のnoteではカジュアル面談について書いていこうと思います。このnoteが採用活動を担当されている方やカジュアル面談をどう有効活用していけばいいのか悩んでいる方の一助になれば幸いです。
*
はじめに(働き方の多様化、転職が当たり前に)
人生100年時代、終身雇用制度が崩壊しつつある今、キャリアデザインも多様化してきました。転職をすることが当たり前の時代になり、転職を希望する人の数や実際に転職を経験する正社員の数も最高水準を記録しています。
引用:転職等希望者「1,000万人時代」 2022年、約8%の大幅増
採用市場においては、今後も引き続き売り手市場となり、企業間では人材獲得競争のさらなる激化、いわゆるさらなるウォー・フォー・タレント化が予想されます。それにより従来の求人サイトや求人広告に求人情報を掲載し、求職者側からのアクションを待つといった方法では、なかなか優秀な人材を確保できなくなってきています。
ここに関してはAIの進化と浸透を踏まえて、別でnoteを書いているので、ぜひご覧くださいませ。
社会の目まぐるしい変化や各個人において様々な働き方が広がっていく中で、希望する人材が確保できないと頭を悩ませている採用担当者の方もいらっしゃると思います。そんな採用市場において自社らしい勝ち筋を見出すための有効な手段の一つとして「カジュアル面談」が挙げられます。
前段でも触れたとおり、まだまだ適切なかたちで実施できている企業様は多くない印象で、だからこそ周囲に先駆け適切なかたちでのカジュアル面談を取り入れる事ができれば、優秀人材の確保が期待できると考えています。
*
カジュアル面談とは?
カジュアル面談は、堅苦しさを排除しリラックスした雰囲気での会話を通じて相互理解しあうことで自社に興味を持ってもらったり、「とりあえず話を聞いてみたいだけ」という転職意向度が高いわけではない潜在層や転職活動中ではあるが特段自社への志望度が高くない層に魅力づけすることで自社を志望してもらう可能性を生み出せる機会(アトラクト)となります。
面接との大きな違いとしては、主に以下3点が挙げられます。
選考ではないので合否判定はしない
求職者側の志望度が高くない状態、もしくは転職意欲自体が高くない状態で行われる場合がある
履歴書、職務経歴書は不要
というわけでカジュアル面談は、選考(一方的な見極め)の場ではなく、とはいえただただ企業側と求職者側が話して終わりという場でもありません。
企業側と求職者の相互理解を深め、求職者に選考に進んでもらうための場となります。漠然とカジュアル面談を行なっている企業様も多いかもしれませんが、事前にしっかりその場の目的やゴールを設計しておくことがカジュアル面談を成功に導くことにつながります。
*
企業側・求職者側双方にメリットのある場
カジュアル面談は、企業側・求職者側双方にメリットがあります。
企業側としては、会社の方向性や社風など自社の魅力をリラックスした状態で求職者にアピールする機会が得られます。また、応募前にお互いの雰囲気を知ることができるので応募者のミスマッチを軽減することができます。
他にも、転職潜在層にいる優秀な人材にアプローチすることができる点も大きなメリットです。転職を検討している優秀な潜在層に自社を売り込みできることは採用の成功につながります。
メリットがあるのは企業側だけではありません。カジュアル面談は、求職者側にもメリットがあります。
まず、企業側の採用担当者と気軽にコミュニケーションがとれることで通常の面接では聞きづらい質問ができ、企業側の情報を把握しやすい点が挙げられます。
また、カジュアルに話すことで事前に社員の人柄を感じられ、自分と共に働く人が合うかどうか確認できます。カジュアル面談はオンラインで行われることも多いですが、実際に企業側に訪問する場合はオフィスなどを事前に見学できることもメリットです。
*
注意しないと逆効果?カジュアル面談のコツ
「カジュアル面談と聞いていたのにいざ受けてみると通常の面接のようだった」求職者側の不満としてよく耳にする問題です。
企業側として気を付けるべきことは、志望動機を尋ねるなど通常の面接のような応対をしないことです。そもそもカジュアル面談は「まずは一度お話しする機会を…」みたいな入口で設定されることがほとんどで、その文脈の中でいきなり志望動機を問われた相手は「え?」となります。たびたびネットや X(Twitter)でも炎上しがちなのが、カジュアル面談の誤った実施方法についての話題だったりします。
■ 参考:よくないカジュアル面談による求職者側の不満
前述のカジュアル面談との違いの 「2. 求職者側の志望度が高くない状態、もしくは転職意欲自体が高くない状態で行われる場合がある」のとおり、カジュアル面談は 求職者側の志望度が高くない状態、もしくは転職意欲自体が高くない状態で行われる場合がある ことを十分に理解し、カジュアル面談の中では志望動機を聞くことは控えましょう(そもそもわたしは面接(選考)の場でも志望動機は聞きませんが…)。
ちなみにわたしは過去、「特に転職意向がなくても構いませんので、まずはカジュアルに情報交換を兼ねましてお話ししましょう」というスカウトをもらい、オフィスに伺ったところ会議室に通され、いきなり筆記の適性検査がはじまったことがあります。
まさに「え?」でした。すぐに採用責任者の方にきていただき、どういうことなのか、この場はカジュアル面談ではないのか、どういうことなのか説明を求めたことがあります笑。採用責任者の方からは平謝りされましたが、いま考えるとそもそもカジュアル面談というものがなんなのか分かっていない中でのスカウトだったんだろうなと思います。
カジュアル面談の場では求職者に色々と質問をしたい気持ち、もっと言うと掘り下げて聞きたい気持ちはグッと抑え、質問攻めにならないよう細心の注意を払いましょう。しつこいですが、カジュアル面談の目的は、あくまで双方の相互理解を深めることです。
*
弊社が考える効果的なカジュアル面談
弊社での人事支援や採用支援におきましても、カジュアル面談はダイレクトスカウト後の受け皿として、また、選考への意欲を高める場として非常に有効だと考えています。
わたし自身、採用で最も大事なことは「マッチング」であるという思想の持ち主で、「選ぶよりも選ばれる」ことが重要と考えていますが、その思想 / 観点においてもカジュアル面談は最重要ステップと捉えています。
支援先の企業様における採用活動におきましても、1次面接設定数をKPIとして置くことも多く、KPIを達成できるかどうかはカジュアル面談の成否にかかっていると言っても過言ではないと考えています。
本noteは人材採用におけるカジュアル面談の有効性と実施にあたってのポイントをテーマとしているため、具体的なHowに関しては上辺を撫でる程度に留めておきますが、効果的なカジュアル面談を実施する上で、おさえるべき代表的なPoint / コツは以下のとおりです。
<Point>
<コツ>
①面談担当者が自社の魅力を自分の言葉で説明できるためのコツ
自分が感じる「会社の強み・魅力」の言語化
会社の理念・ミッション、現場の雰囲気、チームの文化、具体的な成功事例などを担当者自身の体験を交えながら整理するポジションごとの魅力を整理
エンジニア視点、ビジネスサイド視点など、担当分野に沿って候補者が興味を持ちそうな要素を準備しておくストーリーを重視した伝え方
「自分にとってこういう点が働きがいになっている」「入社前はこう感じていたが、実際はこうだった」など、人間味ある語り方をすると伝わりやすい
②なぜ自分がアサインされているか理解した上で場に臨むためのコツ
事前共有と役割定義
採用プロセス全体の流れ・担当の目的・求職者の現時点でのステータスなどを事前に確認し、「今回の面談で何を果たすべきか」を明確にする自身が提供できる情報・視点を認識
技術部門の担当であれば採用している技術の詳細や開発プロセスのリアルなどを語り、ビジネス職であれば顧客や市場についての見通しなど具体を語る他の選考ステップとの関連を把握
カジュアル面談以降の面接ステップでどのような質問や評価が行われるのかを理解し、情報が重複しすぎないように、また先方が感じている疑問を解消できるようにする
③質問攻めをせず、求職者のモチベーションや自社に求めるニーズを読み取る会話のコツ
オープンエンドの質問から入る
「転職を考えられているきっかけは?」「今後どのようなキャリアを描きたいか?」など、広く話を引き出す質問を取り入れ、相手が自由に話せる余地をつくるリアクションや共感を挟む
話を聞く際に合いの手や共感を示し、求職者が本音を話しやすい雰囲気をつくる(特にオンライン)質問するタイミングを考慮
連続して細かい質問を重ねると尋問のような印象を与えるため、いったん相手の言葉を受け止めてから「もう少し詳しく聞かせてください」と進める相手の言葉の裏にある動機を把握
「なぜそのように考えているのか?」をやんわりと確認し、本人も気づいていない深層動機・ニーズを探り出す
④対話を行う中で双方のマッチングポイントを見出す方法
求職者の価値観・志向に対する理解
「どんな環境で力を発揮できるか」「組織のどんな特徴を重視するのか」などを確認し、会社としても提供できるポイントを照らし合わせる会社側の方向性や可能性との接点を言語化
新規事業の展開余地や技術スタックの幅など、相手が興味を持ちそうなところを結びつけて提示する具体的な将来イメージを共有
入社後のキャリアパスやチーム構成、実際に取り組むプロジェクト例を挙げて、「ここにあなたが加わったらどんなインパクトが出そうか」を一緒に想像する双方の希望が合致しない場合でも、無理に進めない
カジュアル面談は見極めの場でもあるため、ミスマッチを感じたら無理に次ステップへ進めず、率直に伝えることも長期的な信頼につながる
以上のポイントを中心にいかにカジュアル面談の相手にあわせたコミュニケーションが展開できるかでカジュアル面談の成否が分かれます。
*
カジュアル面談のブラッシュアップ
カジュアル面談という名称だからといって、実施する側もカジュアルな準備のもとなんとなく面談を行なっていては優秀な人材を確保することや意向をあげる(アトラクト)ことはできません。
カジュアル面談の場の目的を明らかにした上で、その目的に向かうための設計を含め、企業側の採用担当者様が事前準備を怠らないことが成功へのポイントです。もっとも、通常の面接とは異なるスタイルの場なのでなかなか効果的な機会にできないとお悩みの方もいると思います。
カジュアル面談をブラッシュアップする上で、代表的なチェックポイントは以下のとおりです。
<Point>
*
最後に
「知らない人を好きにはならない」
昔、読んだ記事にあったいまでもわたしの頭に残っているパンチラインです。まさにこの言葉がカジュアル面談を実施する有効性を物語っています。
まずは求職者の人に自社のこと、自社の事業のこと、自社の人を知っていただく。そして、好きになってもらうにはどう知ってもらうかが重要で、どう知ってもらうか考えるためには相手がどういう人なのかを知ることが必要です。
それを実現できるのがカジュアル面談という場であり、カジュアル面談の有効性なのだと考えています。
圧倒的売り手市場により、自社だけの力では優秀人材の採用や採用計画にもとづいた採用を実現できていないなどのお悩みをお持ちの企業様は肌感としてもかなりいらっしゃる印象です。
FiVE社では、自社を次に働く場として選んでもらうための具体的なHowToを含めたカジュアル面談のコンサルティングをはじめ、カジュアル面談を含めた全体的な採用支援、さらに広範な人事支援など企業様のご希望やお困りごとにあわせた人事支援サポートを行なっておりますので、ぜひぜひお気軽に下記フォームよりご相談くださいませ。
*
弊社 FiVEでは「苦しんでいる人事や経営者の力になる」ためにコンサルティングサービス、メンタリングサービス、RPO(採用代行)サービスを提供しております!
■ コンサルティングサービス
人事領域はどの領域でもご支援可能です。
■ メンタリングサービス
法人向けだけでなく、個人向けにも提供しているのでお気軽にご相談くださいませ!!
■ RPO(採用代行)サービス
その他、人・組織でなにかお困りごとがありましたら、下記からお問い合わせ / ご相談くださいませ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました 🙏