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「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論549」

皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第15号(2004.11.25発行)「スイミングクラブの成長戦略」22~※名称等は当時、一部文章省略

Ⅲ成長クラブの事例研究

事例研究7「綿密な資金計画とデータ分析、創造力と変化対応力で進化を続ける」(株式会社釧路スイミングクラブ「アクアトピア」)

「アクアトピア」は北海道釧路に立地する施設面積1,014坪のクラブである。
会員数は3,300名(大人2,400名、子ども900名)。
プログラムにはグループピラティスあり、子ども向けのサーキットクラスあり、充実した温浴施設ありと日本中を探しても先進的な要素が揃ったクラブである。

同クラブを経営する株式会社釧路スイミングクラブの代表取締役F氏は、国体に7回出場、日本選手権にも出場経験を持つ生粋の水泳人。
選手の育成をしたいと大学卒業後、旅行代理店に勤めながら市営のプールで水泳教室を開いた。
独自の施設をもたずして1,100名の生徒数を抱えるに至ると、ある市営のプールの食堂の運営を任され、水泳指導との相乗効果で大きな収益を上げることに成功する。
この資金を元手に会社を設立、銀行から2.2億円の融資を受けて昭和59年(1984)に1号店を開設した。

1号店は当時のスイミングブームに乗ってすぐに2,500人の会員を集め、順調に推移していた。
ところが昭和61年、目と鼻の先に第3セクターの競合クラブができ、低価格路線でスクール生を奪い始めた。
これに奮起したF氏は、対抗するべく中高年にターゲットした健康増進施設を計画、平成3年(1991)ふるさと財団の融資に申請を出した。
この企画は高齢化時代を先取りしたものとして高く評価され、ふるさと財団や銀行、政府系金融機関の協調により4億5千万円の融資が得られることになった。
延床面積400坪で大人専用、充実したフィットネス機器を揃えた施設はメディアにも度々取り上げられ、脚光を浴びてのオープンとなった。
しかし、ふたを開けてみると入会者は数えるほど、F氏は「完全に失敗したと思った」という。
そしてその要因を次のように分析した。
「大人は2店舗利用できることになったので、2店舗利用できる会員の会費を10,000円、2号店のみの利用で8,000円という設定にしたのですが、この料金設定が高過ぎました。当時、釧路ではフィットネスの施設も概念も理解されていませんでしたから、少し早すぎました。」

だがもう後には引けない。
F氏は立て続けに経営改善策を打った。
まずプログラムの種類と本数を増やし、各プログラムにフィットネスを啓発する内容を盛り込むなどソフトの改良でまず700名まで持っていった。
この頃、第3セクターの施設が利用料を年間1万円に値下げし、またもや会員を奪い始めた。
そのため、今度は運営システムを見直し、単会の低い会員種別を設け、営業時間を延ばした。
また、成人メンバーのクラスは全て2号店に集め、1号店を子ども専用にして効率を高めるとともに、それぞれのニーズに合ったサービスとプログラムを充実していった。
コスト面でも徹底的に無駄を省き、年間で1,000万円単位で下げることもした。

~ここまで~

フィットネス業界でも、いくつかのブームは起き、その都度、競合クラブが雨後タケノコのように進出し、価格競争に陥るケースは多かったと言えます。

現在は、何度も触れている24Hジム(総合型・ジムスタ型の24H化も含む)がそれと見なすことができます。
そして、パンデミック以前の月会費の相場感は、エリアによって多少の違いはあれど、7千円、8千円といったところでしたが、現在は3千円前後のクラブも増え、既に低価格競争に入っていると思われます。

24Hジム国内最大手エニタイムフィットネスさんの出店費用が1億円といった話も聞きますので、相反して資金負担は増えています。
一部では、アイテムを増やし、ジムスタ型のリトルバージョンに転換する動きがあるものの、かえって経営効率が低下するとも考えられます。

記事の事例は打つ手がまだ多くあった時代での変化対応であり、その点、24Hジム競争は、差別化要素が極めて限定的な点で数年後には泥沼化すると個人的には予想しております。

お読みいただきありがとうございました。

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