パーソナルトレーナーに求められる提案力
こんにちは!AEGYM髙田です。
この note では「独学でパーソナルトレーナーになる」をテーマに、今回はお客様に対する「メニュー作成」について考えていこうと思います。
教科書などでは直接的にあまり書かれていないニッチな部分を紹介しています。
今回の内容は教科書の分類で言うと「プログラムデザイン」に相当する内容です。
パーソナルトレーナーの仕事内容は、本当にざっくり丸めて極論を言ってしまえば、プログラム(メニュー)を作る事だと言えます。
「パーソナルトレーニング」というサービスを、先入観を持ったイメージだけで考えると、トレーニング方法に詳しいトレーナーさんが自分に合ったプログラムを作ってくれる!
みたいな認識をさている方が多いように感じます。
間違いではありませんが、実際には少しニュアンスが違います。
また近年の筋トレブームもあってか、トレーナーを目指される方の中にも "それに近い認識" の方が多くいらっしゃる気がします。
自分に合ったプログラム
正直な所、完全にパーソナライズされた「あなた専用プログラム」というものはそもそも無いのでは?と思います。
と言うのも、クライアント(お客様)の目的がダイエットであれ、筋力増強であれ、運動不足解消であれ、何であれ…
結局のところ、効率的なトレーニングを突き詰めて考えていくと、優先順位的に「提案するべき内容」は限られてくるからです。
どちらかと言うと「いかにあなたが効率的なプログラムに合わせられるか」と言うニュアンスの方が近い気がします。
誤解されるといけませんが、トレーナーがパーソナライズされたプログラムの作成を放棄して良い、という話ではありません(その点は後述します)。
「提案するべき内容」とは…
コンパウンド種目優位
ボリューム管理
漸進性過負荷の原則
<コンパウンド種目優位>
効率的なトレーニングを考える上では "単関節種目" よりも "多関節種目" を優先して行う方が良いとする考え。
多くの関節を動員したトレーニングの方が一度に広い範囲、多くの筋肉を鍛える事ができる。
<ボリューム管理>
どの程度トレーニングを行うか。
端的に言えば「反復回数×セット数×種目数×週の頻度」の事。
何回、何セット、何種目、週何回やる?と言う話。
ある程度は原理原則に従う事で効率的な数値が既に導き出されている。
<漸進性過負荷の原則>
簡単に言ってしまえば「成長するためには常に上を目指せ」と言う原則。
人間は与えられた負荷に慣れるもので、それを逆手に取り、慣れたタイミングで負荷を増やす事で許容できる負荷量が増える=成長する、という事。
これらに則ると、基本的には…
What:何をやるか?
How:どのようにやるか?
という「プログラム作成」における効率的な答えは、極めて単一的なものに集約されていくように思います。
身体のパフォーマンスを向上させるために「どんな運動プログラムが最適か」という事に関して言えば、人類は既にある程度は普遍的な答えを持っている気がします。
最適と考えられるプログラム
結局どこに落ち着くのかと言うと、BIG3(BIG4)になるんだと考えます。
スクワット
ベンチプレス
デッドリフト
オーバーヘッドプレス
上記の4種目は「立つ・屈む」「押す」「引く」などの、人間のかなり根源的な動作を用いたトレーニングプログラムです。
これら4種目を「10回×3セット:週3回」行っていく。
安全係数や余力係数を考慮した上で重量を徐々に増やす。
これらのプログラム構成と継続方針だけで、かなり多くのクライアントが抱える目的を達成できるのではないかと思います。
(後述しますが実際にできるかは別の話)
機器が限られた施設であれば、ベンチプレスはプッシュアップでも良いし、ダンベルプレスでも良いと思います。
デッドリフトやオーバーヘッドプレスは他の機器やマシンがあれば代用しても良いと思います。
要は何よりもまずファンクショナル(機能的)な動作に繋がるコンパウンド(多関節)種目が優先で、ボリュームや進め方などの理論体系も既に固まっていますよね!という話です。
実際はそんな単純な話ではない
しかし実際のパーソナルトレーニング現場はそんな単純な話ではありません。
前項の様なトレーニング種目を遂行する事が困難なクライアントも多く、また逆に前項の内容ではカバーしきれずに不足してしまうクライアントもいます。
具体例を考えてみますと…
・各関節が硬く、可動域が充分に確保できず、スクワット動作において適切にしゃがむ事が困難。
・疾患や痛み、怪我などにより動作が制限され、適切なフォームを維持できない。
これらは「人間が本来持つ動き」がそもそも満足にできない状態です。
プログラム指導に入る以前に他にやるべき事がたくさんあります。
逆に一般的な動きは満足に行える!
その上で「ゴルフの飛距離を伸ばしたい」のような、特定のある1点にのみ目的を置いた場合、前項のトレーニング種目が最も効率が良いとは言えません。
ボディビル競技のように、1つ1つの筋肉に焦点を当て、鍛える必要がある場合もまた前項のトレーニング種目だけでは不足してしまう可能性が高いです。
しかし、私の肌感ですが、パーソナルトレーニングを希望されるクライアントの10人中5人(2人に1人)は、BIG3(BIG4)プログラムでも充分ではないかな、と思ってしまいます。
漠然と「痩せたい」「カラダを引締めたい」「筋力をつけたい」みたいな目的の場合はBIG3(BIG4)で充分です。
むしろBIG3(BIG4)をしっかりと取り組んでいく事で、動作中における細かいエラーや苦手領域が顕在化し、そこからさらに奥のやるべき事が見えてくるような気がします。
トレーナーの役目
では実際の現場でパーソナルトレーナーがクライアントに提案するプログラムが2人に1人はBIG3(BIG4)で良いのかと言うと…ダメだと思います(笑)
これにもいくつか理由があります。
➀難易度やハードルが高いから
前述のBIG3(BIG4)は多くの関節が動員されるため、身体をしっかり制御する必要があり案外難易度が高い種目です。
クライアント側は専門的に説明されると「難しい…よく分からない…」となってしまうでしょうし、簡単に指導されると「これで良いのかな…?」となってしまいます。
トレーナー側がしっかり指導できる知識がない、という場合もあります。
②目新しさが無いから
トレーナーに「ではスクワットからいきましょう!」
と言われて、どう思うでしょうか?
もちろん納得する方、何も思わない方もいるでしょうが、中には ”スクワットなんて家でもできる…” と考える方もいます。
少しビジネス的な観点になりますが、クライアント側は金銭を支払ってパーソナルサービスを受ける訳ですから、ジムという環境やトレーナーに教わる事でしか知り得ない種目などを求めている場合もあります。
➂単純に飽きるから
スクワットを10回×3セット、余裕が出てきたので来週からは少し重量を上げてやっていきましょう!
「・・・これを永遠に繰り返すのか…!?」
トレーニングや鍛錬の本質は "反復と継続" なのでぜんぜん正しい事なのですが、クライアント側はやっぱりどこかで飽きる可能性が高いです。
では2人に1人の残り半分はと言うと、前述の通り、満足に立ち屈み動作ができなかったり、痛みなどがあったり、提案できる内容に制限があったりします。
またクライアントの中には、一定数ダンベルやバーベルを使ったトレーニングに否定的な方もいます。
単純に重そうで怖い…、とか、別に筋肉ゴリゴリになりたい訳じゃない…、などと言われてしまう場合があります。
ここで、今回の結論になりますが、、、
という事になります。
と言う所で、当 note の大テーマである「独学でパーソナルトレーナーになる」&「プログラムデザイン」という所に立ち返ると、トレーナーを目指されている方の中で、筋トレが好きで基本的なトレーニング種目なら教えられる、と言う状態だけでは、カバーできるクライアントがかなり限定されてしまうという事になります。
パーソナルトレーナーのプログラムデザインにおいて求められる能力は、いかに制限された状況下 "縛りプレイ" の環境下で、根源的な動作に近いエクササイズを提供するか。
みたいな所にある気がします。