【舞台】「『来てけつかるべき新世界』本多劇場初日公演観に行った」話
「変わりゆく世の中で、変わらないものがある。」
最後に私はそう言われたような気がした。
4月に上京してきて、初めて生でのヨーロッパ企画公演。初日公演のチケットを確保してから数ヶ月。
ついにこの日が来た。
ついでに初めて珉亭に行き、ラーチャンと餃子を美味しくいただき、準備万端。
いやあ、すばらしかった。
下町感あふれる新世界のはずれの古びた一角に住む人間味あふれる人たちと、近未来のテクノロジーの融合。
大阪弁での捲し立て、セリフの応酬で、人間の会話のリズムでしか埋まらないはずの空気感に、実際のドローンやロボットが登場人物として絡んでくる。
しかもそれが違和感なく溶け合って、新たな空気感、面白さ、笑いを作り上げている。
めちゃめちゃSFなのに、いつかそうなりそうなリアル感がある。
ドローンでの配達・出前・注文、野良ロボット、AI前提の将棋、AIとの漫才、VRでの恋愛や旅行、脳のバックアップなどなど、現実的なラインのSF世界が形成され、それが、近未来テクノロジーの真逆にいそうな新世界に住むおっちゃんたちが使うことでドタバタコメディとしてもおもしろい。
ちょくちょくある強引な展開も、役者の力で思いっきり引っ張ってこちらを否応なく引きずり込む。
印象的だったことのひとつは、バックアップしたことで2人になった歌姫が、ズレなくちゃんと会話していたこと。
霜降り明星annの粗品ひとりの回を思い出した。
それに、芸人の息子がひとりでツッコんたときはちゃんとスベって、炊飯器との漫才でちゃんと笑いが起きていたこともすごい。
炊飯器のセリフが文字で出てくるのでどうしても遅れてしまうのに、ワードとツッコミによって笑いになっている。さすがすぎる。
そして、ラスト。
あんなにテクノロジーが発達したのに、そのテクノロジーと共存しつつ、最初のように新世界のはずれの一角で、おっちゃんたちは同じように串カツを食べ、笑い合っていた。
きっと、舞台の冒頭より前、ちなつさんが生きていた頃も、ドローンが飛び交う前も、スマホや携帯電話が普及する前も、同じように、あの場所で、おっちゃんたちは笑い合って、串カツを食べていたんだろう。
急速に変化して、便利になっていく世の中で、
そういう変わらないものを「いいな」と思うこの感覚は、いつまでも持ち続けていたい。
終演後、もともと買うつもりもなかったTシャツを買い、ラランドの西田らしき人を見かけたがまあいいかと思い声をかけず、帰路についている。
これからは毎年ヨーロッパ企画の公演を見ることができる。それだけでも上京してよかった。
『鴨川ホルモー、ワンスモア』も初日公演を観ることができ、そちらも本当に面白く、ありがたい限りである。
また来年、楽しみにしています。