【三陸シーフードガストロノミー】変わりゆく三陸の海と共に歩む 生産者と料理人の“終わりなき学び合い”がスタート!
フィッシャーマン・ジャパンはこの夏、秋保温泉のホテル瑞鳳と連携して新たなプロジェクトを始めました。その名も「三陸シーフードガストロノミー」。一見シンプルな「海の幸フェア」ですが、実はとても奥が深い。こだわりの生産者と一流ホテルの料理人が本気で学び合い、今までにない豊かな食文化を生み出そうという壮大なプロジェクトです。
地域の食文化を再構築する「温故知新」の取り組み
本州一の水揚げを誇る岩手洋野町産のキタムラサキウニと南三陸産のホヤをソースに使用した「雲丹とホヤのスパゲッティ」。ベースに貝類の出汁、具材にピーチシャークやムール貝などを使用した「三陸スープカレー」。「鰯のスペイン風マリネ 軽いスモークの香り」や宮城県産「アワビツブ貝の中華炒め」「カナガシラの天婦羅」」。他にもみがきフグ、サバ、銀鮭など、地元三陸で獲れた海の幸をふんだんに使った料理の数々が、レストランのビュッフェテーブルいっぱいに並んでいます。
ここは秋保温泉の中でも格式の高さで知られるホテル瑞鳳。鈴木宏信総料理長をはじめとして和洋中合わせて多くの料理人が腕をふるい、三陸の海の幸がゴージャスに姿を変えています。
これらの料理はこの夏のあいだ、ホテル瑞鳳のレストラン「seasons」で楽しめます。一見シンプルな「海の幸フェア」のようです。でも、そうではありません。「ガストロノミー」とは直訳すれば「美食学」のこと。フィッシャーマン・ジャパンとホテル瑞鳳のコラボによる「三陸シーフードガストロノミー」には、生産者と料理人が刺激し合い、高め合うという「学び」の要素が入っているのです。
海水温の上昇などの影響で、三陸で水揚げされる海の幸は近年目まぐるしく変化しています。乱獲などによる資源の枯渇も心配され、地元の食材をいかに利活用するかが課題になっています。
地域の食文化はその土地の食材をベースに形作られてきました。海の幸の変化に合わせて食文化そのものも再構築する必要があるのではないか。古くからある良いところは守り、その上で新しいものを積極的に取り入れる「温故知新」の取り組みが必要なのではないか――。それが「三陸シーフードガストロノミー」のコンセプトです。
新しい食材に地元ならではの調理法を
たとえば今回の食材の一つタチウオはもともと九州など西日本でよく獲れる魚です。最近は石巻でも水揚げが急増しており、この魚を東北宮城の食文化にうまく取り込めないかと考えています。
西日本では塩焼きなどの調理法が定番化していますが、それはあくまで西日本の食べ方。石巻産と西日本のタチウオでは身の締まりや脂のりも若干異なってくるでしょう。魚に合わせる野菜などの食材も、西日本と東北宮城では種類や旬の時期が変わってきます。宮城ならではのタチウオの調理法、他の食材との合わせ方を追究します。
また、モスソガイという食材はアワビのような食感と味わいから「あわびつぶ」という別名もある小さな貝です。三陸の海岸沿いの地域では昔から愛されてきましたが、流通量が少ないためにホテルなどではほとんど提供される機会がありませんでした。地元の逸品の「掘り起こし」として、今回ホテル瑞鳳の料理に登場します。
料理人たちにとって、今回のプロジェクトは新旧合わせた地元食材の理解を深めるきっかけになります。また、食材を提供する三陸の生産者・加工業者たちにとっては、食材ごとに新しい宮城ならではの調理法を学ぶことで、料理人のニーズに合わせた加工法を検討することができます。まさしく「学び合い」の場を創り出すプロジェクトです。
地域全体のレベルアップにつなげたい
プロジェクト全体のコーディネート役を務めるフィッシャーマン・ジャパンとしては、ホテル瑞鳳だけでなく、他のホテルや飲食店などにもこの「ガストロノミー」を広げたいという思いがあります。
手本になるのは新潟県の取り組みです。新潟県は食材の良さだけでなく、地域の風土や歴史が築き上げた食文化の魅力を探求し、観光資源として打ち出しています。地元の飲食店やホテルもそうした動きに呼応していて、新潟県観光協会などが2022~23年に開催した『新潟ガストロノミーアワード』には500以上の事業者が応募しました。
「新潟のような盛り上がりが作り出せれば、宮城の料理人や生産者のレベルアップにつながりますし、消費者の方々も地元の食文化を知るきっかけになると思います。そういった意味でも、秋保温泉のリーダー格であるホテル瑞鳳が協力してくれたのは心強いです。ホテル瑞鳳と共に、この三陸シーフードガストロノミーを幅広く展開していければと思っています」(フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング 津田祐樹代表取締役社長)
ホテル瑞鳳の鈴木宏信総料理長は三陸シーフードガストロノミーを「終わりのないテーマだ」と話しています。
「地元で獲れるようになった新しい魚に対しては、新しい手法を独自で見つけていきたいと思っています。たとえばタチウオについて、南の方の調理法を真似るのは簡単ですが、三陸の魚介類や宮城の野菜などを掛け合わせることで、宮城ならではの個性を生み出していこうと思います。古くからの三陸の食材を扱う時は、『当り前を当り前にしない』ということを心がけます。東北には東北の食文化があり、『これはこういう風な食べ方』という決まりのようなものがあります。これをいい意味で崩して、新しい食材とかけ合わせたり、日本食ではなく中華や洋食の技法を使ってみたりして、どういったものができるかを追究します。想像を超える組み合わせに出会えることもあるでしょう。食文化の再構築は、最終的に私たち料理人にとって終わりのないテーマです」(ホテル瑞鳳 鈴木宏信総料理長)
三陸シーフードガストロノミーがこの後どのように展開していくのか。目が離せません。