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【盲点】多すぎる選択肢は顧客を迷わせる!? 選択肢の迷路から脱出せよ

「選択肢が多ければ売れる」は本当か

選択肢を増やすことで消費者に選んでもらいやすくなる」という考え方は、多くの人が持っていると思います。しかし、果たしてそれは本当に正しいのでしょうか?

あなたが日常的に利用しているスーパーで魚や野菜が並んでいる光景を想像してみてください。いつも買うスーパーにおいてある玉ねぎは1種類かせいぜい2種類でしょう。

でもECは違います。玉ねぎだけで数百、数千の選択肢があります。今、あなたの目の前に産地も、生産者も、種類も、価格も違う無数の玉ねぎたちが並べられたとしましょう。見た目はほぼ同じです。

さて、あなたは、どの玉ねぎを選べばいいのか迷わずにすぐに決められますか?それとも、どの玉ねぎを選べばいいのか分からずに、時間がかかってしまうでしょうか?

選択肢が多いことでかえって迷いが大きくなり、選ぶのをあきらめてしまうかもしれませんね。選択肢を増やしすぎるとどんなことが起こるのか、そこで生じる問題点はどうすれば回避できるのかを考えたいと思います。

選択肢を増やすメリット

とはいえ、多くの人が「選択肢を増やすことで消費者に選んでもらいやすくなる」と考えるのにも理由があります。選択肢を増やすことによって生じるメリットがあるのは事実です。

なぜなら選択肢を増やすことで、消費者の多様なニーズに応えることができるからです。例えば、ある商品を求めている消費者がいたとしても、その商品がなかなか見つからなければ商品は何も購入してもらえません。

しかし、選択肢が豊富であれば、その消費者が求める商品が見つかる可能性が高くなります。つまり、消費者が自分に合った商品を選びやすくなるため、購買率が上がるということです。機会損失が防げるという側面もあります。

選択肢が増えすぎるデメリット

1)消費者の混乱・迷いによる決定回避

ただし、選択肢があまりにも多い場合にはデメリットが生じることがあります。冒頭の玉ねぎの例はまさにこの事例です。心理学的にも「ジャムの法則(決定回避の法則)」としてよく知られています。

コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授がスーパーマーケットで行った「ジャム」を使った実験からこの名前がついています。スーパーマーケットに買い物に来たお客さんにジャムの試食販売をするのですが、なんと試食を提供したジャムの数が少ない方の購買率の方が高かったのです。

A)6種類のジャム

・試食をした人の割合:40%
・試食後に購入した割合:30%

B)24種類のジャム

・試食をした人の割合:60%
試食後に購入した割合:3%

Bはより多くの人に試食してもらえたものの、結果的に購入に至った割合はだいぶ小さくなってしまっていますね。購入者数としてもAの方が多くなっています。これは吟味しきれない(個別検討できる数)だけの選択肢があると、自分が選んだ選択肢に自信が持てなくなるからです。もっといい選択肢があるんじゃないか、気づいていないだけで何か大事なことを見落としているのではないかと不安になってしまいます。

その結果、買い物をやめたり、競合他社の商品を選択したりすることもあります。選択肢を提供することが、消費者の利便性向上につながることは間違いありませんが、選択肢を過剰に提供することで消費者のストレスを増大させてしまう可能性もあるのです。

2)口コミやレビューの分散

選択肢が多すぎる場合、商品の口コミ・レビューが集まるスピードが遅くなります。たとえば商品としては同じ「ブリさく」なのに、量や加工のオプションによって商品構成を細かく分けすぎると、レビュー評価が以下のように分散しますよね。

・ブリさく 1本:評価4 2人
・ブリさく 2本:評価なし
・ブリさく 1尾分(4本):評価なし
・ブリさく ハーフサイズ:評価4.5 2人
・ブリさく お試しサイズ1/4:評価5 6人

ブリさく1本にまとまっていれば、こうなります。

・ブリさく 1~2人前:評価4.7 10人

口コミやレビューなどの情報は、消費者が商品を選ぶ際に参考にする重要な要素のひとつです。しかし、選択肢が多すぎると、口コミやレビューが分散してしまい、評価がなかなか蓄積させていきません。オンラインで生鮮食品を買うときに評価・レビューが0件のものをいきなり買うのはちょっと不安だと感じる人もいるでしょう。

そういう商品の購入率が低くなることは想像に難くないでしょう。消費者は商品を買っていいのか安心できず、離脱することになります。

3)業務効率化の遅れと人件費増大

選択肢が増えすぎると、商品の提供に必要な手間や時間が増大します。例えば、商品に関する問い合わせやクレーム対応は商品ごとに発生するため、その対応にかかる人件費や時間が増えます。

商品点数が絞られていればテンプレート文章をつくって効率化することもできるかもしれませんが、商品数が増えすぎてしまえばなかなか業務効率化も進みづらくなります。また、商品提供に必要な情報を整理・管理するために、システムの開発・改修・管理・運用に人が張り付かないといけなくなります。

商品の注文が入るたびに違う加工・処理をしないといけないとなると、業務の標準化もなかなか進みません。ショップ担当者にEC業務が最適化・属人化されてしまいます。

選択肢を増やしながらデメリットを回避する方法

では、どうすれば販売機会を最大化しながら消費者に迷わずに商品を選んでもらえるようになるでしょうか。

1)選択肢の絞り込み

まず消費者にとって本当に重要な選択肢を抽出する必要があります。消費者が必要としていない選択肢を提示しても、消費者は混乱するだけです。「【超お買い得】ブリ50尾セット!丸のまま!」みたいなものを出しても個人で買う人はいないですよね。過去の売上データやアンケート調査の結果を分析して、消費者が本当に必要としている選択肢を明確にしましょう。選択肢を整理することで、消費者は直感的に理解しやすくなります。

売れ筋商品を中心にあえて最初は数を絞り、戦略的にレビューを1カ所に集約するという考え方もあると思います。信頼と実績を作ったうえで徐々に周辺の商品展開を行う戦略を取るということですね。

削った選択肢が本当に削ってもいいものだったのか、今おいている選択肢を本当に消費者に提示することに本当に意味があるのか。そういった視点をもって消費者の反応や売上などを見極め、試行錯誤を繰り返しましょう。売れ筋でない商品は自社ECから落とし、代わりに売れそうな商品案を作って試してみます。自社ECは立ち上げて終わりではありません。定期的に見直し、改善していくことが重要です。

2)分類・検索による絞り込み

探したいものが明確なのであれば、ユーザーインターフェースの改善によって、提示する選択肢を絞ることができます。例えば、カテゴリー分けやフィルタリング、検索など、商品の絞り込みが簡単にできるようになる機能を活用することができれば、消費者は求める商品に迅速にアクセスできるようになりますね。

分類の軸には以下のようなものが考えられますね。

・飼育方法や栽培方法の違い
・商品の種類や種別
・買い方(定期便・買い切り)
・加工のオプション

ただし、この分類・検索によって改善が望めるのは「消費者が欲しい商品が最初から決まっていて、自力でカテゴリ選択ができるなら」という条件つきです。カテゴリそのものが選べない場合は他の施策でサポートが必要です。またbaseやstoresなどの既存ECプラットフォームを活用する場合は、それらのプラットフォームの機能に制限を受けることにも注意してください。

3)商品写真・本文の工夫

商品の選択肢が多くなっても、各商品をパッと見ただけでそれぞれの商品がどう違うのかパッとみて識別できるのであれば、「どう違うかわからない」ことで消費者が迷うことは少なくとも防ぐことができます

たとえば魚の場合だと切り身 ・フィレ ・さく ・皮なし ・丸 など加工方法が違うだけでもかなりの商品数が並ぶことになります。これらの違いをタイトルや本文で表現しようとしても直感的に商品を選ぶことができません。

その場合は写真をうまく活用するのがいいですね。丸のままなのか捌いてくれているのか写真で違いがわかるようにします。写真に文字やアイコンで要素を加えて商品の違いが写真だけでわかるように工夫するのも有効です。

本文でも工夫できることはいろいろありますね。たとえばさく1本分がいいのか、ハーフサイズでいいのかは実物のサイズがECだと確認できないため、消費者からすると判断しづらいのが正直なところです。「ハーフサイズ」ではなく、「1~2人前」と書いてある方が消費者は迷わずに購入することができますね。

複数の加工方法で商品を提供する場合は、たとえば皮なしの魚は調理が簡単であることや、内臓処理済みの魚は臭みが抑えられることを説明するなどすると、消費者は自分のニーズに合ったものを選びやすくなります。それぞれの商品について、消費者にとってどんなメリットがあるのか、どんな人にその商品がオススメなのかがわかるように本文を工夫して書いてみてください。

最後に

多くの選択肢を提供することは、消費者にとって選択の自由を与えることになります。しかし、選択肢が多すぎると、消費者は選択に時間がかかり、あなたのECサイトから離脱してしまうかもしれません。このnoteに書いた3つの方法を試していただくことでこうしたデメリットを回避することができれば、売上に繋げることもできると思います。

この時大事になるのはあなたのECサイトに筋の通った1本の戦略が通っているかです。ターゲット定義や商品の訴求方針が戦略的に決まっていないと、どの選択肢を残すべきか、写真や本文内で商品をどう説明すべきか悩んでしまって手が止まることがあるかもしれません。どうすれば売れるのか。売れている生産者は何をやっているのか。戦略を立てるために考えるべきことを5つのステップにわけてわかりやすく記事にしています。産直ECで今すぐ使える販売戦術も9つ紹介していますので、もしよければ読んでみてください。

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