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送料のこと考えなくて大丈夫?

物流コストは上がり続ける

商品を顧客に届けるためには、貨物の運搬、貯蔵、流通、管理などの物流のプロセスが必ず必要になります。そして物流業界での値上げのニュース、最近よく見るようになりました。このnoteを書いている2023年1月28日はこんなニュースが、、、

佐川急便、宅配便8%値上げ 運転手の待遇改善狙う: 日本経済新聞

物流コストがなぜ上がるのか

物流コストが上昇する理由は、複数の要因があります。

人手不足

物流業界での人手不足は深刻な問題です。人がいなければ物を届けることはできません。

空の棚が目立つ北アイルランドのスーパー

実際にイギリスではブレグジットにともなって物流業界を支えていた移民が一斉にいなくなってしまい、スーパーに物が届かなくなったことがあります。

運転手が不足する原因は仕事のストレスや長時間労働、低待遇などです。これらの問題を解決するためには、運転手に対してより良い環境や待遇を提供する必要があります。そのため運送会社は運転手を確保するために高い給与を支払うことになり、その結果として運賃が上昇するわけです。

人手不足を解消するため、自動運転などの新しい技術の導入したり、人工知能やロボットなどを活用したりする事例も出てきていますが、それらの技術開発もコスト0でできるわけではありません。

積載効率の悪さ

日本におけるトラックの積載率の平均は約40%です。言い換えてみれば、トラックの荷室の60%は無駄がある(空いた空間・スペースが存在する)ということです。 トラック1台の積載率は物流コストに跳ね返ってきます。

たとえば、1台のトラックに魚を6000尾詰めて運ぶのと、60尾だけ積んで運ぶ場合とで送料がどう変わるか考えてみます。

どちらもトラックのレンタル料が2万円、往復交通費が2万円、トラック運転手の人件費が2万円、合計6万円かかるとします。6000尾運ぶ場合は1尾あたりの配送料は1尾あたりの配送料は10円で済みますね。ところが60尾の場合だと1000円かかります。

レンタル料:2万円
往復交通費:2万円
ドライバーの人件費:2万円
――――――――――――――――
合計6万円

A:6000尾運ぶ場合
6万円/6000尾 = 10円
B:60尾運ぶ場合
6万円/60尾 = 1000円

配送需要の増加

人手不足でも、積載効率が悪くても、送るものが少ないのであれば特に問題は起こりません。送るものの量が減っていない、むしろECでの購買行動が当たり前のものになったことで配送需要が増えていることが人手不足を深刻化させています。

物販系ECの市場規模は13.3兆。毎年伸びている

物流コストとどう向き合うか

産直ECにとって送料は都合が悪い(消費者の支払金額が増えることで成約率が下がる要因になる)ので、わかりづらいままうやむやにされていますが、消費者は送料無料に慣れ、商品代は送料込みで認識される時代になっています。生産者であるあなたは送料も含めた商品価値を提供するという意識を強く持っておいた方がいいです。

物流コストは以上のような背景から上がります。下がることはありません。その前提に立ったうえで直販、特にECをやりたい生産者はこのコストにどう向き合えばいいのでしょうか。

3つの答え

この問いに対する答えは大きく3つあると考えています。

他にもロットを増やしたり、物流の仕組み自体にテコ入れをしたり、広く大きい目で見るとできることはいろいろあります。ただ生産者さんが目の前でできそうなことというスコープでいえば、上記の3つかなと思っています。

流通距離を短くする

単純に輸送距離を短くする、つまりご近所さんに配達するのであれば、小回りも聞きますし、燃料費も高騰しません。高速道路などを使わずに配達できる場所であれば、そういったコストも減らせます。移動距離が短いのでトラック運転手の拘束時間も短くなり、人件費によるコスト増も吸収できますね。

確かに一大消費地である東京や大阪に売った方がお客さんは見つけやすいです。高く買ってくれる人も見つかると思うので、売上も伸ばしやすいかもしれません。

でもせっかく単価を上げても送料が高いのであれば、その送料は間接的にあなたの会社の利益率を押し下げます。小ロットの販売であれば地場で売っていく方が手残りは良くなるのではないかと思います。会社経営にとって大事なのは売上ではなく、利益です。

お客さんに来てもらう

輸送距離を究極まで短くすると、生産現場まで消費者に来てもらって販売するという直販モデルになります。地場の人に人気になり直接買い付けにきてもらうイメージです。農家さんの直売所みたいな感じですね。

とはいえ、EC直販での主な販売先は首都圏のお客さんに寄りやすいです。そうすると何もなしでこのモデルを実現させるのは難しいかもしれません。そういう時は商品の販売を1回きりの点ではなく、線で繋げるといいですね。

最初は産直ECでもSNSでもいいので、とにかく興味をもってもらい、商品を一度買ってもらいます。その際に「生産現場ツアー」みたいな企画のビラを入れておき、現地まで消費者の方に足を運んでもらうのです。養殖なら魚捌きや餌やりなどを体験できてもいいかもしれません。

現地まで来てくれた人はお土産で商品を買っていってくれるでしょうし、お土産なのであればある程度高い価格でも売れます。あまり大々的なイベントにすると運営だけでも大変になるので、ライトな運営ができるかは検討しておきましょう。いわゆる6次産業化ですが、本質は物流コストの削減です。

商品を変える

現行の物流システムの範囲内でできるだけコスパ良く送れるように商品側を変えてしまう、というのが3つ目の考え方です。

送料がどう決まるかというと、サイズと重量で決まります。たとえばヤマトで宮崎→東京に荷物を送る場合は以下のような料金表が出てきます。※2023年1月時点

ヤマト料金表 宮崎→東京

下に注記がありますね。要するに、サイズが小さくてもめっちゃ重たければ高くなるってことです。

※縦・横・高さの3辺計の大きさと実重量を比較し、大きい方のサイズの扱いになります。

運送会社はヤマトでなくても構いませんが、仮にヤマトで送るとして考えてみます。佐川急便や日本郵便などの他の手段で送りたい方はそちらの送料の表をまずは確認してみてください。

どちらから考えてもいいですが、今回は重量の方から考えてみましょう。まずは一番小さい単位で商品の重さを測ります。卵なら1個、魚の刺身ならサクが単位です。そこに販売予定の数量をかけて、商品の重量を計算します。この時点で2kgを超えていたら60サイズは無理です。納めたい重量と商品の大きさから箱のサイズにアタリをつけます。

箱のサイズが決まったら、梱包資材のサンプルをもらいましょう。段ボールと一言でいっても、商品によって強度も重さも全然違います

たとえば段ボールは構造的にはライナ(表)・中芯・ライナ(裏)の3つの部材で構成されています。

段ボールの構造

ライナは使用している古紙の含有率や紙の厚みによって規格が分かれますし、中芯も重量によって強度が変わるため複数の選択肢があります。

段ボールの重さは、ライナーと中芯の材質、フルートの種類によって決まります。フルートとは、中芯が波打つ高さや段数のことです。何がいいたいかというと、選ぶ規格や素材によって重量が変わるということです。重量を机上で計算することはもちろんできますが、面倒でしょうし、一番確実なのはサンプルをもらって実際に測ってみることです。

箱だけでなく、ビラ、梱包材などの資材も忘れないでくださいね。サンプルをもらったら一度商品を実際に梱包してみてください。規定重量を超えたり、そもそも梱包できないようであれば、個数を減らすかサイズを変えるかを検討せざるを得ません。まとめるとこういう手順ですね。

切りがいいからという理由だけで商品の数量を決めては絶対にいけません。卵を10ケースとか、にんじんを30本とか、確かに数字として気持ちいいですが、勢いだけで設定して中途半端に送料が高くなるのは望ましくありません。

もっとドラスティックに商品を変える方法もあります。たとえば魚を刺身で食べられる状態で送ろうとすると、クール便(冷蔵・冷凍)にする必要があります。しかしクール便で送ろうとすると、コールドチェーンを繋がないといけなくなり、物流コストが必然的に上がります。ヤマトでも+220円になっています。

では、常温で発送できるように商品を加工してみたらどうでしょうか。たとえばサーモンを冷凍のまま送るのではなく、サケフレークにしてしまってから常温で送るとか。商品サイズは小さくなり、クール便のお金も不要になります。

一番大事なのは商品企画!

ここで気になるのは「商品を変えて売れるの?」ということではないでしょうか。流通距離を短くするとかお客さんに来てもらうというのも、結局はあなたの作っている農作物が消費者の人に「欲しい」と思ってもらわなければ実現できません。

違う商品を開発して本当に売れるのか。卵や野菜、魚をどう見せれば売上は伸ばせるのか。商品を買うかどうかはお客さんが決めます。物流面の工夫はもちろん必要ですが、お客さんに売れなければ何も始まりません。

あなたの商品をどう見せるべきなのか。どうすれば売れるのか。売れている生産者は何をやっているのか。その問いに正面から答えてます。産直ECで今すぐ使える販売戦術も9つ紹介しています。ぜひ読んでみてください。

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