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血の話
今、紹介している分野はいわゆる恒常性という、生物が体内環境を一定に保つ働きについてです。そして、この体内環境というのは結局のところ血液のことなので、今回は血液のことについてお話しします。
成分
「血液の働きを3つあげなさい」といわれたら、ちゃんと答えられますか?気体、栄養分、熱の運搬です。他にも、細菌やウイルスから身を守るというのもあるのですが、これは別の話なので、後で取り上げます。まあ、これらの働きの要因となっているのが血液の成分です。
血液の成分は、有形成分と液体成分に分かれています。有形成分は、赤血球や白血球、血小板などの細胞やその一部からなる成分です。役割を簡単に説明すると、赤血球は酸素の運搬、白血球は体内に侵入した細菌やウイルスの除去、血小板は血液の流出を防ぐ、と言ったところです。補足しておくと、赤血球と白血球は細胞からなる成分ですが、哺乳類の赤血球のみ核がありません。一方、液体成分は血しょうと呼ばれています。当然、水が主成分でタンパク質やブドウ糖などがとけており、身体中に運ばれる養分もこの血しょうにとけています。同時に、二酸化炭素や老廃物なども溶かして運ぶ役割があります。
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なくならないように
血液の役割はとても多く、複雑です。そのため、最終的な説明?が「はたらく細胞読んで」になります。あの作品はそのあたりをとても詳しく描写できているので、おすすめです。さて、高校生物では多様な血液の働きの中でも、血液の循環を維持するしくみとして、血液凝固を取り上げています。血液凝固は、血管が破れたときに、血液の流出を防ぐためにおこる仕組みです。血液の流出を防ぐことはとても重要なのですが、血管の中で血液がかたまってしまうと大変なことになるので、わざと起こりにくくしています。また、血液の凝固の主役は血小板なのですが、実際のところははたらく細胞で取り上げられるほど目立ちません。
詳しくは、血液凝固のしくみの図を見てもらえばよいのですが、私が説明するときは逆方向から説明しています。つまり、「フィブリンというタンパク質で赤血球と白血球をかためて血管の破損部分を防ぐんだよ」ということから理解してもらいます。ちなみに、フィブリンというタンパク質で赤血球と白血球をかためたものを血ぺいといいます。血液を試験管の中に入れると、最初は真っ赤かなのですが、しばらくすると下に赤い塊ができて、上澄に透明な液体がたまります。この透明な液体を血清(もともと血しょう)といいます。
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ただ、このフィブリンによるかたまりはどこででもできたら困ります。そのため、普段はフィブリノーゲンという状態で血しょう中に存在しており、血管が破れたときだけフィブリンにかわります。次に、フィブリノーゲンをフィブリンにするのはトロンビンという酵素なのですが、これも普段はプロトロンビンという何も働きを持たない状態で血しょう中に存在しています。血管が裂けると、血小板や破損した血管の細胞から血液凝固因子が放出され、血液中の物質(カルシウムなど)がすべてそろってはじめてプロトロンビンをトロンビンに変えます。また、線溶というフィブリンを分解して血ぺいを溶かす作用もあります。
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血をかためない
血液を固める話をここまでしましたが、血液をかためない方法というのが高校の生物ではでてきます。「そんなこと役立つのか?」と思う方は、輸血について調べてみてください。まあ、この血液を固めない方法は、高校生物の復習みたいなところもあるので、一度確認してみましょう。まずは、血液が凝固する要因を確認しましょう。
プロトロンビンをトロンビンにする要因
・カルシウムがくわわる
・血小板から血液凝固因子が放出される
・組織から凝固因子が加わる
フィブリノーゲンをフィブリンにする要因
・トロンビンによる作用
血ぺいができる要因
・フィブリンが血球にからまる
血液をかためない方法その1:クエン酸ナトリウムを入れる
クエン酸ナトリウムを入れると、クエン酸が血液中のカルシウムイオンと結びつきます。すると、血液中のカルシウムがなくなってしまい、プロトロンビンをトロンビンにする要因が1つなくなってしまいます。
血液をかためない方法2:低温にする
フィブリンを作るためには、トロンビンの働きが必要です。ただ、このトロンビンは酵素です。以前にも説明した酵素の性質を見直してもらえればわかるのですが、温度が下がると働かなくなります。
血液をかためない方法3:かき混ぜる
フィブリンはネットのような細長いタンパク質です。体から取り出した血液ないでは、上記の反応が起きて、次々とフィブリンが作られます。そのため、常にかき混ぜ続けると、フィブリンがかき混ぜ棒に張り付いて、血液の中になくなります。
血液をかためない方法4:ヘパリン
ヘパリンはトロンビンの活性部位に取り付いて、フィブリノーゲンをフィブリンにかえるのを阻害します。
血液をかためない方法5:ヒルジン
名前の通り血を吸うヒルがもつ成分です。このヒルがもつ成分は、血液凝固を防ぐ性質があります。
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動画の寄生虫は、チョウモドキという甲殻類です。ただ、これまで紹介した甲殻類とは種類が異なり、鰓尾類とよばれるグループに属しています。腹部に大きな吸盤があり魚に寄生する構造とエビの脚ような泳ぐための構造があります。寄生も遊泳も可能です。明日の昼におまけの動画をあげます。お楽しみに! pic.twitter.com/Epq0HUlRah
— さかなとムシの研究所 (@Fish_Worms_Lab) October 4, 2023