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ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート まとめ&感想(2021)


~今年のウィーン・フィルニューイヤーコンサートの感想~
今年は史上初無観客のコンサートともあって、例年以上に印象的なコンサートとなりました。今日は、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの魅力と感想を書き綴ろうと思います。

① 定番アンコール曲

この曲だけでも聞く価値あり!と思えるくらい有名な2曲、「美しく青きドナウ」「ラデツキー行進曲」がアンコールで毎回登場します。
◎「美しく青きドナウ」 J.シュトラウス2世
オーストリア帝国がプロイセン王国との戦争で大敗し、市民の楽しみだった派手な舞踏会の代わりに人々が注目したのが合唱。そして人々の心を癒すためにシュトラウスが書いた初めての合唱用のワルツがこの曲です。歌詞や曲名、曲調からもドナウ川の穏やかさと心の癒しを感じられる曲です。第二のオーストリア国歌とも言われるほどの有名です。今年はコロナもあり、心の穏やかさ、平穏さを感じるこの曲がより心に染み渡ったように感じました。

◎「ラデツキー行進曲」J.シュトラウス1世
かつてオーストリアの植民地であったイタリア北部。この曲は1848年にイタリアの独立運動を鎮圧したラデツキー将軍を讃えるために作曲された曲です。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは、会場一体となって手拍子をしながら音楽を楽しむのが恒例となっています。今回は、イタリア出身のリッカルド・ムーティが指揮だったので、複雑な気持ちなのだろうかと想像してしまいました。無観客の手拍子のないラデツキー行進曲とムーティの指揮、なんだか勝手ながら感慨深かったです。

一見平和的で穏やかな「美しく青きドナウ」と軍事的な「ラデツキー行進曲」という印象をうけますが、どちらも今では、人々を1年の幕開けに導き、明るく穏やかな気持ちにさせてくれる曲になっているように個人的には感じます。
また、3曲のアンコールのうちの1曲は毎度指揮者の色が出るような気がして、とても楽しみです。

勿論、アンコール曲以外の毎回変わる曲も素晴らしい曲ばかりです。背景を調べたり、音色や楽器の特性等に注目して聴くとより一層楽しめるかと思います。

② 今年の曲の中で一番好きな曲

◎「春の声」J.シュトラウス2世
誰もが一度は耳にしたことのある曲だと思います。悩みなど吹き飛ぶくらい晴れやかな春の香りがする曲だなぁと思います。今年のコンサートでは、日本人バレエダンサーの木本全優さんがこの曲の中でリヒテンシュタイン庭園宮殿にて踊っておられたのもまた、嬉しかったですし、感動しました。

③ 楽友協会

このニューイヤーコンサートが行われるのは楽友協会の大ホール。この大ホールは「黄金のホール」と呼ばれるくらい豪華な内装で、もちろん音響なども素晴らしい素敵なコンサート会場です。私は以前楽友協会のブラームスホールで行われたコンサートに行きましたが、とても感動しました。コンサート会場も一つの楽器のように感じます。

④ ウィーンフィルの変化

◎女性楽団員の数
ウィーンフィルに限らず日本も含め、オーケストラの団員や指揮者、作曲家などプロとなる音楽家の女性の数はまだまだ少ないのが現状です。ウィーンフィルもかつては男性ばかりでしたが、近年だんだんと増えてきている印象です。といっても145人くらいいる団員の中の約15人が女性であるというくらいに、まだまだ少ないです。これからますます変わっていくことを期待しています。団員だけでなく、女性の指揮者も現れるといいな。

◎アレンジ
2020年から上述した「ラデツキー行進曲」のアレンジが変わりました。これまで演奏されていたのはヴェーニンガ—(Leopold Weninger)が編曲したバージョンだったのですが、ヴェーニンガーがナチス党員であったことを踏まえて、別のアレンジに変更になったとのことでした。

何にしても歴史の深いものほど闇は根深く、変えにくいと思いますが、少しずつ良い方向に変化してきていることに、とても嬉しく思います。ジェンダー・年齢・人種関係なく、公平な審査及び音楽への路への機会の平等を強く望みます。

⑤ 最後に指揮者からのメッセージ

今年の指揮者リッカルド・ムーティ氏のスピーチ↓↓
「Musicians have in their weapons flowers, not things that kill: we bring joy, hope, peace, brotherhood, Love with capital L. Music is important not because it is an entertainment, many times we see everywhere music considered as entertainer: music is not only a profession but it’s a mission, that is why we do this work. So, mission for what? To make the society better. To think about the new generation, that in one complete year has been deprived from deep-thinking, thinking all the time about health: health is the first, most important thing, but also the health of the mind. And music helps. So my message to the governors and presidents and prime ministers everywhere, in every part of the world consider culture always as one of the primary elements to have better society in the future.」

参考文献 

・NHK「らららクラシック」
https://www.nhk.or.jp/lalala/archive150110.html
・世界の民謡・童謡「ラデツキー行進曲 Radetzky March」
http://www.worldfolksong.com/classical/johann-strauss/radetzky-march.html
・朝日新聞「女性がウィーン・フィルを指揮する日 一流オーケストラに見るジェンダー問題」https://globe.asahi.com/article/13099531
・月刊音楽祭「ウィーン発 〓 ニューイヤー・コンサートの『ラデツキー行進曲』のアレンジを一新」https://m-festival.biz/10778


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