岡田監督の2年間を振り返る

岡田彰布監督、二年間お疲れさまでした。
阪神タイガース球団、選手、スタッフの皆様お疲れさまでした。
阪神ファンの皆様お疲れさまでした

胃がキリキリする苦しい野球観戦からの解放と共に、今年はもう贔屓の野球が見られないのだという悲しさが同居しています。
勝っても負けても野球をずっと見ているけど、勝っても負けても苦しい野球観戦は2024シーズンに関しては10月13日で終わりました。

岡田監督が就任し、阪神タイガースでの第二次政権が始まったのは2022年の10月15日。ちょうど2年前でした。
今回noteは2年間を振り返るnoteにしたいと思います。
項目をいくつか用意し、それをA+からDまでの5段階評価していきます。
偉そうなファンですね。ファンてそんなものです。

そのため、細かなエピソードは評価に含めません。京田ブロックに猛抗議した日もノイジーと青空の元会話を持った話も評価に含めない事とします。西純矢に「おい問題児」と話しかけたほのぼのエピソードもです。
当然、采配についても何月何日のバントのサインがみたいな話はしません。


1年目(2023)

投手運用【A】

特に悪かった事は思い出されません
先発陣が出来過ぎだったので、采配は楽だったとは思いますが。
青柳晃洋、西勇輝の両名が前半戦働かなかったのはありますが、後半戦期待に応えて戦力になったのでトータルで見れば問題なかったです。
心配された中継ぎ陣も登板が偏る選手も居らず、というか岩貞祐太や加治屋蓮といった中堅層が登板数を多く受け持ってくれたお陰ですね。
計画的な抹消もありつつマネジメントは出来ていた印象でした。

野手運用【B】

レギュラー陣は固定されており、またその起用に応えて優勝しました。4月の時点で想定された布陣のまま戦い抜くことが出来たのは評価できます。
一方で、レギュラー偏重というか、見極めた選手に拘り過ぎる面はマイナス評価です。別の項目で言及しますが、ノイジーを133試合起用したこともそうですし、結果の出ていない渡邊諒、島田海吏の両名を重用したことは疑問だったと思います。
代打、代走、守備固めと専任者を用意することでうまくチームが回ったわけですし、ベンチメンバーを固定する事は悪い事ではありません。
ただ、役割野球はこういったロースター構成の柔軟性は無くなる構想なのである程度は仕方ありませんが、少し行き過ぎていたと思います。

新戦力・新構想【A】

ちょっと甘めにAです。以下新戦力の成績です。

村上頌樹:22試合 10勝6敗 144.1回 137K 1.75
桐敷拓馬:27試合 2勝0敗14H 40.1回 40K 1.79
大竹耕太郎:21試合 12勝2敗 131.2回 82K 2.26
森下翔太:94試合 .237(333-79) 10本 41点 1盗 .691
前川右京: 33試合 .255(94-24) 0本 7点 0盗 .676
渡邊諒: 59試合 .177(79-14) 2本 10点 0盗 .527

先発ローテが2枚と中軸1枠が新戦力だったわけで、出来過ぎでしょう。
村上、桐敷両名は2軍を卒業していた選手でしたが、そんな彼らを起用したのは評価できます。
春キャンプでの見極めが功を奏した結果でもあり善し悪しだなぁと感じています。
森下翔太については「ドラ1だから」みたいなニュアンスで一年間帯同していましたが、その起用に森下自身が応えたのが立派。今になると彼をドラフトで獲得できたことを大変うれしく思います。

新構想の面では中野拓夢のセカンドコンバートに尽きます。
コンバートを直接伝え聞いたわけではないとの中野の証言に「大丈夫かいな」と思いましたが、中野が無事役割を完遂しました
空いたショートを木浪小幡の併用で走れなかったのが心残りですが、糸原セカンドの選択肢を消した事、代打の一番手糸原を用意したことは高評価です。
レギュラーをクビにした選手を代打の一番手に置き、ポジションを与える点は監督の采配としてしっかりやれた部分だと思います。

また、最初に"ちょっと甘め"とした理由は選手個人の努力に比重が重かった気がしているからです。

外国人管理【C】

優勝、日本一になったとはいえこの点は納得のいかない部分でした。
「助っ人」という表現が当たり前だった時代を経験している岡田監督は、我々とは違った見方をしていたようにも思います。
また、外国人に助けてもらうという思想や、フロント・海外助っ人の顔を立てるためであったり外部からの圧力もあったでしょう
高年俸のノイジーを起用せざるを得なかった可能性もありますし、外国人助っ人に憧れを持つご年配も多いですので、阪神球団全体として仕方が無かった面もあると思います。
しかし、現代野球において外国人選手は助っ人ではなく1チームメイトと考えられています。その点から評価はCとしました。

問題となるのは、ビーズリーとケラーの中途半端な起用とノイジーのレギュラー起用です。元より「外国人は要らない、外国人無しなら阪神が一番強い」と喋ってしまう監督なので序列が低い所から始まるのは致し方ありませんが、シーズン途中にその序列を大きく変える事も、選手目線からすれば難しく映ったでしょう。
それから外国人は要らないと言いつつノイジーに516打席も与えたのは理解に苦しみます。外国人不要発言の真意はわかりませんが、選手起用に現場が深く関わっていたとすれば、この選択は少々残念な物でした。

ビーズリーの序列は翌シーズンも低いままでしたし、こちらも納得は出来ません。

短期決戦采配【A+】

日本一になったから、ではありません。ポストシーズンならではの選手起用というか、投手起用が私好みだったからです。
逆に、日本シリーズの相手であるオリックスが登板間隔等を気にしていたからかもしれませんが。

良い投手から投げさせる、出し惜しみしないが徹底されていました。
日本シリーズ第二戦で西勇輝ノックアウト後のビーズリー起用や、第六戦に西勇輝を3イニングリリーフさせた起用は高評価です。
豊富な先発投手陣によって無理なスクランブルはありませんでしたが、計画的にリリーフ起用をしマネジメント出来ました。

記者から「西勇輝は敗戦処理か?」と質問され「勝つための選択だ」と力強く言い返したのも、短期決戦の戦い方、チームのマネジメントがうまくいったエピソードだと思います。
普段選手とコミュニケーションを取る監督ではありませんが、短期決戦でそう言ってもらえると選手もやりやすかったと思います。

野手起用についても、1年間やってきたメンバーで戦うという思想は素晴らしかったです。総決算という意味でこの起用だったとおもわれますが、前任の矢野監督の野手起用に不満を持った私にとって、岡田監督の選択はかなり良く映りました。(矢野監督のPSでの投手起用は高評価でした)

渡邊諒も第一戦打ったしね。的中したら評価せざるを得ません。
「青柳ではじめ青柳で終わる」などちょっとした物語性もありつつ、チームをまとめ上げたと思いました。

2年目(2024)

投手運用【B】

うまくいかなかった時に如何にマネジメントするか、痛感させられるシーズンでした。
先発登板した投手は10名。この運用はかなり少ない方です。
コンテンダーでは巨人が12、広島が11、横浜が14名だったので数字上は大きな乖離はないのですが、印象は違うでしょう。
青柳晃洋と伊藤将司に拘ったために落とした試合があります。もう少し早く切り替えビーズリーのローテ入りを早めた方が良かったでしょう。
2023シーズンは青柳に拘ってもカバーできる他の投手陣がいましたが、2024シーズンは村上も昨年ほどのクオリティではなかったですし、レギュラー偏重の姿勢が少々足を引っ張りました
これが無ければ及川や門別の登板数も、少し増えたのではないかと思います。
才木浩人個人軍だった時期はまだ前半戦だったので、試す・起爆剤と言う意味でやれることはあったような気がします。

中継ぎ陣は登板過多の方1人を除けばまあこんな感じ、という印象。
監督が使うと決めたら使われる」これによって岡留と漆原は救われましたし、岩貞と加治屋は損をしました。
あまりメディアで話題になりませんが、前年チーム最多ホールドだった投手が、翌年2試合の登板に終わっているのは異常だと記しておきます

野手運用【C】

大きなポイントはクリーンアップが全員ファーム落ちしたこと。
荒療治だったでしょう。結果的に森下大山佐藤の3名は最終的にはそれなりの数字に落ち着きました。
ファームの期間が必要だったかの結論を出すのは難しいですが、彼らは良く戻してきたと思います。
一方で、二遊間は成績によるファーム落ちがありませんでした。昨年比で攻守に精彩を欠いていながら、一年間回りました。二番手を用意していなかったことが原因ですが、若手を試す勇気の無さを感じました。
死球による骨折などの離脱の際も若手遊撃手のコールアップは無く、この点は全く納得できません
一軍起用がないだけでなく、熊谷のショートテストを二軍でやったりしましたから、この選択はプロスペクトの貴重な機会の損失にも繋がりました
一年通して状態が悪かった上にアクシデントもあった二遊間をそのままにしてしまったのは編成的にも課題となりました。

捕手二人制や代走が複数人待機するロースター構成が完全に裏目となり、チームが取れる選択肢を狭め、将来のチーム構成にも傷を作りました
野手運用は完全に失敗ですが、しゃあなしC評価にとどめます。

新戦力・新構想【B】

まずは新戦力から。

ハビーゲラ:59試合 1勝4敗31H14S 58回 48K 1.55
漆原大晟:38試合 1勝4敗5H0S 34.2回 22K 3.89
岡留英貴:35試合 1勝0敗6H1S 38回 24K 2.84
富田蓮:33試合 0勝1敗4H0S 35.2回 22K 0.76
前川右京:116試合 .269(324-87) 4本 42点 0盗 .697
井上広大:23試合 .212(52-11) 3本 8点 1盗 .678
野口恭佑:26試合 .189(53-10) 0本 5点 0盗 .467

春の時点で構想内だった選手達です。
彼らには一定の出場機会が与えられました。
投手陣は何度か失敗しながらも二軍調整の期間が与えられ、一軍に復帰することが許されました
野手陣も井上と野口は印象よりは使われてました。50打席はクリアしていたんですね。納得できる数字かもしれないですね。
前川右京が若手枠からレギュラー枠へと移行出来たのが、野手においては数少ないポジティブ要素になりました
前川右京はもうプロスペクトなんかじゃありません。チームの勝ち負けを背負うレギュラー選手としてこれから長く活躍して欲しいと思います。

次に新構想について。しかし新構想とは?という感じです。
Wストッパーくらいしか無かった気がしますね。
球速は違えど支配力は特に変わりなかった岩崎とゲラをどう考えて運用していたかわかりません。私は最後までわかっていませんでした。
左右の違いで起用出来る点はメリットでしたが、Wストッパー構想によって選手の力が引き出されたかは疑問です。

ブルペン陣は苦労が多い中頑張ったとは思います。

≪追記≫
髙橋遥人投手の起用は良かったと思います。
一番偉いのは良かった頃の状態に戻した本人だとは思いますが、過去の実績や勝ち方を知る、のような考えを重視する岡田監督だからこそ髙橋の起用につながったと思いますし、大一番でも起用をしたのだと思います。この点は良かったですね。

外国人管理【C】

良い点もありましたが、悪い点もありました。
良い点は野手を見切った事、悪い点はビーズリーの運用です。

ノイジーに149打席、ミエセスに19打席は当時は騒いでいましたが、今は全然穏やかに見られます。本人に納得させたり、結論付けるためには必要な数字だったかと思います。
(3B,SSノイジーを見られなかった事だけ心残り)

ビーズリーですが、ファームで無双期間がありながらなかなかコールアップされませんでした。彼の献身的でハートフルな面に救われました
結局成績は14登板、76.2イニングにとどまってしまいました。
後半戦の起用についてももっと積極的にローテーションを回して欲しかったです。

2024年の外国人について書いたnoteがあるのですが、ノイジーは30試合100打席が限度、ゲラは45試合以上希望、ビーズリーの下限は15試合60イニングと設定していました。
なんかよくわからないけど自分の書いた感じに近くなりました

短期決戦采配【D】

短期決戦は実際には2試合だけでしたが、終盤まで優勝争いをしたので、その期間の采配を評価しました。
この項目は良い点がなかなか見つかりません。結果負けたからそう思うのかもしれませんが、少しポイントを書いてみます。

まずシーズン中から気になっていたのは、ベンチの動きの無さです。
勝負をかけるポイントを逸しているように見えました
複数代走要員を用意していながら、起用回数が少なかったと思います。
植田海は59試合に出場しましたが熊谷敬宥は僅か32試合!。メリハリのある代走起用が出来ていなかった印象でした。
これは代打起用も同じです。代打一番手糸原健斗は継続しましたが、右の代打原口文仁をベンチに残したまま負ける試合が非常に多かったです。
捕手二人制によって起用しづらくなったと言われていますが、それは言い訳にすぎません。
捕手に代打を出せない監督だな」という感じ。
ほぼ代打専業で近年過ごしている原口を起用できないというだけでチームにとって損でした。なんのためにベンチ入りさせていたのかわかりません

常に最悪を想定する監督ですが、その理論と悪いチーム状況が相まってどんどん沈んでいきました。状況を打破する采配は出来ず、采配でチームを鼓舞する事は出来ませんでした。

それから投手でも気になる点はありました。
村上頌樹のブルペン待機です。後半戦、広島戦でブルペン待機させる選択には賛成です。ベンチに入れたからには使うという采配にも賛成。
ただ同じようにCSで投入し失点したのはどういうことなのか。
村上もビーズリーも中継ぎテストに合格したと言える感じではなかったですが、それなら拘らずに先発起用を見据えるべきだったでしょう。
青柳がリリーフ下手すぎるので昨年のMVPが後ろに回るというのは理論的ではありません。村上が9月に状態を崩していたのですから尚更。
CSでの起用は「失敗を繰り返した」ように思います。

桐敷や石井を早めに投入していましたが、短期決戦的采配の常套手段であって言及する必要は無いと思います。良い投手を送り込むのは鉄則です。


まとめ

以上2年間の振り返りでした。
一年目は優勝、二年目は準優勝と阪神タイガースの監督としては非常に優秀な成績を収めました
内容としてはちょっと正反対のシーズンになってしまいましたが、チームが苦しい時は仕方が無いのかもしれません。

何を隠そう、私は平田勝男派でした。チームをずっと見ていたから、というのが理由です。ただ、なんというかこの考え方は現状維持は出来ても優勝はなかったんだと今思います。いつまでもなんとなくコンテンドするのではなく、勝負を掛けなければ優勝できない。暫く優勝出来ていなかったので、わかっていなかったと反省です。

勝てる監督として岡田監督は招聘され勝ちました。38年ぶりの日本一はファンにとって一生色褪せない思い出となりました。
チームを導いて下さってありがとうございました。お疲れ様でした

総合評価はAです。連覇していればA+だったんですけどね。
未来への宿題としてA+はとっておきます。

岡田監督の契約満了による交代は妥当か?
話題になりましたが、私は妥当だと思っています。

私は優勝するための犠牲はある程度我慢するつもりでした。
1つは中継ぎ陣の酷使であり、或いはレギュラー固定による駒不足でしょうか。しかしながら、このような犠牲は何年も払ってはいけません
勝つための代償は勝ってこそ報われます。チームとして少しトーンダウンしてしまったタイミングで勇退するのは、賢明な判断です。
組織としてまだ舞えると思いました。

最後に

10月14日、新監督として藤川球児氏の就任が発表されました
早速組閣が進んでいるのを見るに、事前準備の周到さを感じます。

藤川球児氏は理論的な解説で知られています。
引退後には将来のキャリアに向け野球について勉強していますし、現代野球や数字にも理解を示しています
私としても、理論的な野球へのアプローチが楽しみな監督です。

また、火の玉ストレートに生きたロマン派でもあります。引退後新聞の記事に目を通して思いましたが、芸術家の一面も持ち合わせてる気がします。

藤川球児氏で心配されるのは現場経験の無さですが、MLBにも挑戦しましたし独立リーグも経験しました。フロント入りしてからはドミニカのトライアウトの視察も同行しています
国際大会や大舞台の経験も豊富で、ただ現場経験が無いだけであって、野球に対する選択肢は豊富な人材です。

何より藤川球児氏は阪神タイガースが大好きである事。
思えば前任の岡田監督も阪神タイガースが大好きでした。
今から藤川球児監督の野球が楽しみです。

岡田彰布監督2年間お疲れ様でした。
ゆっくり静養なさってください。

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