ゲームを振り返る野球シーズン2021③ー野手編ー
➀投手編
②捕手編
以上が2021シーズンの投手編と捕手編の振り返り。
本稿は③野手編をやっていく。
2021福浦ロッテ・内野手シーズンデータ
川崎 宗則(29)
124試合 .254(374-95) 0本23点13盗
.279 .364 .643(出塁率、長打率、OPS)
中村 奨吾(29)
143試合 .286(574-164) 32本83点9盗
.321 .530 .851
田中 広輔(32)
103試合 .291(223-65) 3本24点4盗
.342 .430 .772
草野 孝典(30)
123試合 .308(455-140) 21本64点0盗
.333 .521 .854
島井 秀浩(25)
124試合 .231(264-61) 5本24点13盗
.246 .348 .594
今江 敏晃(38)
39試合 .289(38-11) 2本13点0盗
.308 .525 .834
高濱 卓也(32)
15試合 .263(19-5) 0本3点0盗
.348 .368 .716
江村 直也(29)
4試合 .250(8-2) 0本1点0盗
.400 .250 .650
北條 史也(27)
12試合 .214(28-6) 0本0点0盗
.267 .250 .517
竹下 純三(19)
8試合 .129(31-4) 0本3点0盗
.129 .194 .323
河野 剛裕(20)
9試合 .261(23-6) 1本2点0盗
.292 .522 .814
白川 浩也(20)
36試合 .299(77-23) 0本5点0盗
.313 .364 .677
鎌田 智規(23)
8試合 .182(22-4) 0本0点0盗
.182 .227 .409
★一軍出場無し
石川 雄洋(35)、丸山 和史(21)、梶原 敦志(18)
開幕メンバーについて
2021シーズンの内野陣はこれまでと少しだけ異なっている。
これまで三塁手のレギュラーとして起用してきた草野孝典を一塁手へとコンバート。空いた三塁は若手内野陣の競争の場とした。
一塁手のレギュラーを草野にほぼ固定するため、今江を代打枠へ移行し、鈴木大地は楽天へトレードした。
二塁手の中村、遊撃手の川崎は不動としながらもホットコーナーをガラッと変えて望んだシーズンであった。
レギュラー事情
昨年と比べても一塁手と三塁手の一番手が120試合以上出場と、固めることに成功。チームが勝つためにはある程度の固定が必要だ。
一塁手
一塁にコンバートした一年目。打率は三割を記録し、21本塁打。30歳を迎えて脂がのる頃に安定した定位置を見つけられたかどうか。新人王を獲得したプロ一年目からチームの長距離砲として活躍してきた。
後釜として竹下が入団したが、まだ譲らない覚悟だろう。
二塁手
二塁手のレギュラー中村奨吾はキャリアハイを記録。受賞が当たり前となってきたゴールデングラブと共に30本塁打に到達した。
連続20打席無安打を喫しながらも18試合連続出塁も記録したシーズン。特に大きな不調もない印象で、安定して成績を残した。対左打率.311と昨年課題にしていた面も克服し、チームのキャプテンとして引っ張り続ける。
三塁手
島井が122試合、田中広輔が58試合に出場したサード。他7人が守備に就いたが10試合に満たなかった。育成の難しさを感じると共に、島井田中の両名がハイレベルな競争をしたと言えるだろう。
特筆すべき守備力を武器に三塁手に定着。前任者の草野とタイプは違うが見事務めて見せた。肩の強さはチームを救う。
昨年の三塁手問題の記事でも記載したが田中広輔の存在も大きい。データを見るとわかる通り、内野を全てバックアップしているしそれもかなりの試合数である。田中を出しておけば、残しておけば守備位置に困る事は無いという安心感が采配に余裕を持たせていた。
かなり重宝している。交換相手の狩野は広島の控えをやっているので詐欺トレードみたいになっているのだが、それは置いておいて、内野を平均的な水準で守れ打力に長けているこの選手は、本当にチームを支えている。
遊撃手
昨年、川崎が不調の時は田中広輔と島井がバックアップを務めていたが、今年は島井が三塁のレギュラーとなったため白川が入ってきた。昨年一年目から5試合ショートの守備についた白川は今年は24試合。GMとしては着実に準備を進め、対応できるようにしていく姿勢だ。
下位打線を打つ機会が多く今年も規定打席に到達せず。広い守備範囲と抜群の走力でチームの軸ではある。白川や鎌田にも出場機会は訪れるが、川崎はこのままレギュラーを維持したいところ。
打席数は少ないものの、センター返しを中心に打ち分け高打率を記録。出来すぎな感もあるが打率というのはそういうものだし、それで評価をするものなので問題ない。一時期20打席無安打を喫するも、左右を苦にしない打撃スタイルは評価。長打も高卒二年目にしては上出来なくらい。
役割の変化
今年、今江敏晃を代打の切り札に移行させた。常にレギュラーを張ってきた選手のスタメン落ちは、チームにとっても大きな出来事。
代打の切り札というのは代打なわけだからスタートから出る事は無くなる。代打の一番手というポジションは特別ではあるものの、この選択がチームにとって良いものであってほしい。
御覧の通り、結果で答えて見せた。
困ったのは采配をする私であった。春先から夏場にかけて代打成功率が三割後半あった今江が、秋を前に失速。私はこの時悩んだ末に二軍へ再調整を命じた。特別な選手を二軍降格させるのはデリケートな部分。勝負時に落とされるベテラン選手は己の選手生命について考えざるを得ないし、今江が一軍にいない間、誰が代打を務めるか考えなければならない。
○○でダメなら仕方がないと思える選手をベンチに入れておくのは必要なのだろう。
今江には2022シーズンも代打で頑張ってもらいたい。今年の39打席以上に活躍の場を用意していきたいとも思う。
左右のプラトン起用
レギュラーに左右は関係ないというのが持論。ただ、どんな指標も極端すぎるのは気にする方が良い。
中村奨吾が昨年.208だった対左打率を改善しチームも安定。その他の選手は去年と同じような数値。好調だった田中や草野、数字を下げた川崎、島井も左右に関しては変化なしと言ったところ。
特筆する数字は田中広輔の対左.360でミート78が猛威を振るっている。左打者が多い(対左に弱い)ロースターで田中広輔は存在感を放つ。
守備力について
若手の育成
2020年度の記事では、草野の一塁コンバートに合わせて丸山と白川の紹介をした。
草野孝典のコンバートは前述したとおり。これによりサードの競争が始まっている。
そして、鈴木大地のトレード移籍。鈴木大地は2020シーズンで85試合に出場。打席も258こなした。ライトでの出場もあったとはいえこれだけの「量が減る」のはチームにとってとても大きなこと。
次に、今江敏晃の代打専念。今江は昨シーズン一塁開幕スタメンの選手。
鈴木大地と今江敏晃の2020シーズン打数を記すと、それぞれ247、217である。合わせて464打数(打席数にすればもう少し多い)が2021シーズンにおいて浮くことになる。
外野出場や代打などばらつきは当然あってそのまま判断はできないのだが、若手に振り分けられる打席数は確保できている。さて、どうなったか。
まずは昨年度も一軍で起用されていた選手の打席数増減から。
田中が48島井が118白川が60、北條が22打席それぞれ増えている。
合わせると248打席内野陣で新しく消化した計算になる。島井と白川は若手として順調に出場機会を増やしたとみてよさそうだ。
あと残るは216打席。鈴木大地と今江の穴を埋めるためにはまだ足りない。
以上が昨シーズン出場していない、または内野手として出場していない、選手が消化した打席数。総じて84打席。
今江が39打席(38打数)消化しているとはいえ、何かすごく足りない気もするがやりたい事はやってみた。(こういった計算はイニングで計算可能な投手と違ってばらつきが出るが、ちょっと差があり過ぎて驚いている。)
竹下と鎌田はドラフト指名を受けたルーキーであり、河野はトレード加入の二年目。
何が言いたいかというと、消化試合に入った後であれば若手の起用を進める方針がチームにあったということ。
一塁コンバートの草野は若いとはいえ来年31歳。後釜となりそうな竹下の指名は自然。それから河野や鎌田といった二遊間を中心とする内野手は、育成に時間もかかるし、すぐに埋まるポジションでもないので、若い時から起用しておくことは大切だ。
たとえ粗削りであっても、遠くに飛ばせる打者は我慢して育成したい。
内野陣総括
投手編では、若手の起用が前年比で減ってしまったことに対する課題を記した。内野手についてはその点では前進していると言えるだろう。ただ、来季はコンバートのような大きな動きは出来ない。意図的な起用は少なくなるわけで、今年段階を踏んだ選手の奮起と、首脳陣の工夫が一層求められる。
レギュラー内野手が大半30代になる来季はチームにとって大きなポイントだ。
2021福浦ロッテ・外野手シーズンデータ
水沢 直輝(27)
132試合 .304(513-156) 38本87点0盗
.336 .593 .929(出塁率、長打率、OPS)
ルルデス・グリエルJR(29)
76試合 .299(241-72) 13本36点0盗
.317 .544 .861
張 志豪(32)
136試合 .279(534-149) 8本33点32盗
.308 .408 .716
梶谷 隆幸(33)
74試合 .293(123-36) 3本16点6盗
.331 .480 .811
横田 慎太郎(26)
143試合 .309(538-166) 35本81点7盗
.345 .572 .917
淺間 大基(25)
88試合 .287(136-39) 5本20点3盗
.322 .500 .822
鈴木 誠也(27)
14試合 .245(49-12) 1本7点0盗
.245 .367 .612
吉村 裕基(37)
28試合 .236(72-17) 3本9点0盗
.236 .444 .680
長内 信介(25)
48試合 .305(95-29) 1本16点0盗
.302 .432 .734
岡田 幸文(37)
3試合 .222(9-2) 0本0点1盗
.300 .222 .522
伊志嶺 翔大(33)
5試合 .333(6-2) 0本0点0盗
.333 .500 .833
藤原 昭光(28)
8試合 .056(18-1) 0本0点0盗
.105 .056 .161
★一軍試合出場無し
谷口 雄也(29)、俊介(34)、朝倉 祐貴(24)
各ポジションのレギュラー事情
レフト
レフトのレギュラーは横田慎太郎。レフト固定を決心した昨年と比べても改善した守備力と、年々破壊力を増す打撃力はチームの骨格。
全143試合に出場。DHや途中出場もありつつ全試合に出場。打順を四番に固定し打線を形成した。チームの構想にあるレフトはもはや一人である。
センター
センターも開幕はすぐに決まった。昨年度MVPの張志豪が一番センターでスタメンに入り、一年通して起用された。
バビってないと.394(昨年)なんて打てないので、今期は運が落ち着いた結果とみてもよさそう。盗塁の数を見ても充実の一年(盗塁成功率.865)。走攻守で存在感を見せている。
張は後半戦数字が伸びなかったので、一人で一年通したわけではない。
2019シーズンレギュラーを掴むも翌年停滞。今年再起を賭けていた淺間にもチャンスは巡っていた。シーズン最終盤での活躍(消化試合)もあってホームランを5本に乗せ見れる成績に。総合的には優秀な外野手なのでもっと出番を増やしたい。
ライト
開幕ライトスタメンは藤原。右打者の少ないチームで将来を嘱望され続けてきた。本当に右打者がいない中でキャンプを順調に過ごした藤原にチャンスが巡ってくるのは不思議な事ではないのだ。たとえ左右病であっても本当に左投手から点が取れないチームだったのである。
結果は散々。プレイヤーが悪いとも言えるしプロ入りからずっとこんな感じでもある。「ずっとこんな感じ」というのはRPGとしては優秀なストーリーだが球団運営の面では困ってしまうのであった。
代わってライトのレギュラーだったのはこの人。昨年ソフトバンクからトレードで獲得した。チームでは「開幕は好調な人を使うの」が鉄則。レギュラーが決まっていないライトにおいてそのルールは勿論適用され、不調のグリエルはファームスタートだった。
シーズン中盤からは左投手に無類の強さを見せ打線を支えた。左右関係ないにしても、打席数は249止まりなのだと感じる。六番起用が多かったからだろうが、打席って思ったより稼ぎにくい。
淺間と同じように昨年成績を落とした長内もライトのレギュラー候補。少ない打席で結果は出したが、長打力の面で競争相手に劣り出場機会を減らしてしまった。左投手相手でも苦にしないようになってきたので来季また勝負という所だろう。
指名打者
指名打者は、選手の休養やレギュラーとポジションが被っている有望株に与えられる場合も多い。そんな中、このチームでは一人が占有する形となっている。2021指名打者でベストナインを獲得した水沢である。
外野の守備に付いたのは僅か6試合。デスパイネにも劣ってしまう守備力では交流戦でも起用しにくいレベル。キングに輝いた38本塁打は立派なもので打線でも中核の三番に座り優勝に貢献。
能力に流し打ちがある通り、左右に大きな当たりを生み出せるのが大きな魅力で、リーグを代表するスラッガーへと成長した。昨年は29本放ち新人王に輝いたが今年は本塁打王である。
チームの空気をがらりと変えられるバッター。あと5年でも10年でも輝いて欲しいものだ。
ポジションが空いていない時は
以上紹介した通り、センターは張志豪、レフトは横田、ライトはグリエルと外野は埋まり、指名打者は水沢が入るチーム。
その他、出場機会を争う外野手たちはどのように一年過ごし、首脳陣はどのような軸を作って起用していけばよいのだろうか。
左右で決める
外野手の左右別打率は表の通り。左打者である横田、張、梶谷、淺間は左投手を苦手とし、右打者である水沢、グリエルは右投手相手に少し数字を落としている。
無論レギュラー格の選手はこのくらいの差では先発投手によって代えたりはしない。左打者の場合、相手先発が左投手である+不調くらいの条件が必要で、左右プラトン起用を明言できる程控え組に機会を与えることが出来ないのである。
積極的なトレードの遺産として、グリエルと梶谷のプラトン起用は可能となったが若手の機会を奪ってしまった。ある程度打席をこなした外野陣に、新顔がいない事がその証でこれは少し考えものだろう。
無理やり起用する
スタメンに名前を書いてしまえば使わざるを得ないので、覚悟を決めて起用するのも一案。ただこれは再建期間ムーブに近い。
その中で終盤戦、広島から獲得した鈴木誠也はまだ若く伸びしろも期待できるので49打席起用出来た。
しかし守備固めでの起用も減り、控え選手の出場は減る一方である事が、岡田や伊志嶺の成績を見てもわかる。彼らはより守備が重要視される交流戦に登録するなど、こちらとしても考えてはいるがリズムを掴む事は難しい。
本人のためにもトレードは考えられるのかもしれない。
外野陣総括
外野陣の守備力についても補殺が多く、強肩の選手が目立つ。守備からリズムを作ろうとするチーム構成は間違っていなかった。(刺殺はなぜこんなに少ないのか)
全体的に三振は多いが、強振に三振はつきものだ。二塁打を量産することで得点を増やすことに成功した。四球もプレイヤー操作にしては頑張っている方なのではないだろうか。
内野陣も合わせて100三振以上が五人出た打線なのだが、それでも点は取れるだろう。それ以上の価値ある打撃を出来ていた。
投手編でも示した通り、来季はより若手を起用していきたい。トレード加入の朝倉なども若手として今年はファームで鍛えた。常勝軍団になるためにも大切な時期に入ってくる。
R.I.P.