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なぜ私は社会構成主義に関心を持つのか②



~個人の物語が作る「現実」を考える~

前回に続き、私が社会構成主義に関心を持つようになった背景をお話しします。今回は、私自身や周囲の人々との関わりの中で、固定観念が揺さぶられた経験について振り返ります。

目の前の人と向き合うということ

私の三男は、生まれた直後にダウン症候群(21トリソミー)と診断されました。それに加えて、心室中隔欠損症と肺高血圧という合併症を抱えており、1歳を迎える前に心臓手術が必要だと言われました。

それまでの私にとって、ダウン症は単なる「見た目のイメージ」でしかありませんでした。しかし、実際には合併症を持つ子が多く、大きく育つこと自体が奇跡だということを初めて知りました。この経験を通じて、「障がい」や「特性」とは何か、社会がそれをどう捉え、どう対応しているのかに深い疑問を持つようになりました。

後から知った話なのですが、ダウン症のある人の特徴として、「人の気持ちを汲む力が強い」「思いやりに富み、感受性が豊かである」という点が挙げられるそうです。そして、その天使のような微笑みに、幸せをもらう人が多いとも聞きました。これも、当時の私はまったく知りませんでした。

三男の成長を見守る中で、私は、彼がその存在自体で周りに与える大きな価値に気づくことができました。そして、それまでの私がどれだけ表面的な情報にとらわれていたかを痛感しました。

「個別の理解」の大切さ

長男は小学校2年生の頃、算数の文章問題に苦労していました。私は必死で教えようとしましたが、長男は泣いてわめくばかりで、うまくいきませんでした。その後、検査でIQが70程度であるとわかり、いわゆる境界知能、「グレーゾーン」に位置することが判明しました。その瞬間、私は目の前が真っ暗になったように感じました。

しかし、発達障害や知的障害、そのグレーゾーンといった特性は人によって大きく異なり、一括りにできるものではありません。インターネットの記事に書いてあることは、ほんの一例に過ぎないことを後から知りました。長男は現在、作業療法士を目指して勉強しています。この過程を通じて、「個々の現実」を深く理解し、その背景を一つひとつ紐解くことの大切さを実感しました。

アンコンシャスバイアス

前職場や現職場で、私は多くの女性メンバーと働いてきました。仕事と家庭の両立に悩む人、制度の使いづらさに苦しむ人、会社のカルチャーや周囲の無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)に戸惑う人もいました。

その時々で、自分自身が「女性社員はこうあるべき」という無意識のバイアスを持っていたこと(現時点も持っていること)を否応なく思い知らされました。社会が形成するステレオタイプが、個人の生き方や働き方にどれだけ影響を与えるのかを考えさせられる経験でした。

難病を抱える方のキャリア支援

キャリアコンサルタントの資格を活かして支援していた方の中には、難病指定の病気を抱えながら働く方もいました。その方の上司や人事の対応に憤りを感じる一方で、ご本人が自分の意見を伝えられないことにも苛立ちを覚えました。

後から振り返ると、その職場には「心理的安全性」が欠けていたのだと思います。自分の気持ちや意見を言えない環境が、本人だけでなく周囲の人々に負担をかけていたのです。ここでも、社会が作り上げる現実と個人の認識とのギャップを痛感しました。

次回予告

この記事では、私自身の経験を通じて、社会構成主義の視点が必要だと感じた場面を振り返りました。次回以降で、これらの経験をどのように仕事や人生に活かしているのか、さらに深く掘り下げていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの経験や感じたことがあれば、ぜひコメントで教えてください。

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あおさん
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