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パラドックスを超えて:複雑な時代を生き抜く新しい視点(セミナーのご案内)

1. 人間の特性—二元論、白黒つける、二項対立

日常の生活の中で、このような状況に出会いませんか?

  • 「自分のキャリアに集中すべきか、家族との時間を優先すべきか」

  • 「スピードを追求するべきか、それとも品質を重視するべきか」

  • 「個人の成果を重視するべきか、チーム全体の調和を図るべきか」

人間は、物事を「簡単に分かりやすく整理したい」と考える特性を持っています。この二元論的な思考は、科学技術の発展や計画的な決定に役立つことも多い一方で、デメリットもあります。単純化しすぎることで、ビジネスや人間関係が硬直化し、少しでも不確実なことがあるとストレスを感じてしまうこともあります。

しかし、私たちが生きる現在の社会は、VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)やBANI(Brittle, Anxious, Nonlinear, Incomprehensible)の時代と呼ばれるように、変動的で不確実性が高く、複雑かつ曖昧さに満ちています。このような環境では、物事を単純に分類して捉えるだけでは対応しきれない状況が増えています。こうした時代において重要となるのが、「パラドックスのマネジメント(または、ポラリティのマネジメント)」という考え方です。パラドックスのマネジメントは、対立しているように見える二つの要素や選択肢を、どちらか一方を切り捨てるのではなく、両者を認めながら統合的に活用するアプローチです。

パラドックスの例

  • 人間関係では:「自分の意見を言うべきか、相手に調和するべきか」

  • ビジネスでは:「短期的な成果を重視すべきか、長期的な成長を目指すべきか」

2. 「境界画定的存在」から「関係規定的存在」へ

人間は「境界画定的存在」として、自分と他者、内部と外部の境界を明確に区別し、安全を確保しようとします。この特性は人間の本能的なものですが、固定された境界に囚われると、新しい可能性や選択肢を見逃すリスクがあります。

ここで、ケネス・ガーゲンが提唱する「関係規定的存在」の概念が重要になります。この考え方では、私たちのアイデンティティや自己認識は、他者や社会との関係の中で動的に形成されるとされます。つまり、自己と他者の境界は固定的ではなく、対話や相互作用を通じて再定義されるものです。

この視点は、社会構成主義と深く関連しています。社会構成主義は、現実や意味が固定的なものではなく、人々の関係性やコミュニケーションを通じて形作られると考えます。したがって、「関係規定的存在」とは、境界を柔軟に捉え、他者との関わりの中で新しい意味や価値を共創するプロセスそのものを指します。

さらに、ガーゲンのもう一つの重要な概念に「Multi-being(マルチビーイング)」があります。これは、人間を固定的で単一の存在ではなく、他者や環境との関係の中で複数の側面を持つ柔軟で動的な存在と捉える考え方です。

Multi-being(マルチビーイング)とは?

  • 多面的な自己:人間は、家庭、職場、地域社会など異なる文脈において、それぞれの役割や側面を持ちます。

  • 関係性の中で形成される自己:自己は孤立した存在ではなく、他者との関係性の中で絶えず再構築されます。

  • 柔軟性と創造性:異なる役割や状況に応じて柔軟に自己を変化させ、新しい価値を創造する能力を指します。

この「Multi-being」の考え方は、急速に変化する現代社会において重要だと考えます。アイデンティティが固定的なものではないと考えることで、多様な価値観や文脈に柔軟に対応でき、関係性を基盤に新しい可能性を共創する力が育まれるからです。

なお、「AとBのどちらを選ぶか悩む」「AとBのいずれかを無意識に選んでいる」といったジレンマやその深層に存在するパラドックスの捉え方は、成人発達理論(構成主義的発達理論)とも関係しています。成人発達理論では、個人が発達の段階を進むにつれ、複雑なパラドックスを統合的に捉え、両極の価値を同時に活かす能力が高まるとも考えることができます。このことから、私たちはジレンマやパラドックスに対してより柔軟で創造的なアプローチを検討するヒントが得られます。

3. セミナーのご案内(コーチのための成人発達理論 パラドックス編)

【セミナー概要】

本セミナーでは、成人発達理論の概要とともに、二項対立を乗り越えるための思考法であり成人発達理論と関係が深い「パラドックス」のマネジメントについてご紹介し、コーチングに活かす上でのヒントや留意点を学びます。

成人発達理論とは・・・ 人の発達プロセスや発達メカニズムを解明する学問であり、発達心理学の一部に位置付けられています。「人の知性や認知構造は、一生をかけて成長を遂げていく。発達段階は、いちがいに年齢によって決定されるわけではない」という考え方に基づいています。 成人発達理論には様々な考え方が提唱されていますが、パラドックスへの対処に関係が深い理論・考え方に絞って解説します。

パラドックスとは・・・ 一見対立しているが、相互に関係している2つの要素のこと。

【プログラム概要】

  • 成人発達理論の概要

  • パラドックスを理解する

  • コーチングでの関わり方を考える

  • ディスカッション・簡単なワーク

  • 対人支援に活用する際の留意点

※当日の進行は若干変更する場合がございます。

セミナー詳細

  • 日時: 2025年3月22日(土)09:00–11:00

  • 場所: オンライン

  • テーマ: 「コーチのための成人発達理論 パラドックス編」

コーチングを学びんでいる方(基礎スキルをお持ちで、一定のセッション経験がある方が望ましいです)で、ご興味がある方は、下記のリンクからお申し込みください。


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あおさん
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