野良猫なっちゃん

好きな人を自分から振ってしまった。心に積もった何かを書き綴るノート。

野良猫なっちゃん

好きな人を自分から振ってしまった。心に積もった何かを書き綴るノート。

最近の記事

どうしても確かめたくて

たった一度だけれど、彼に会ったとき、 この人だと思った。やっと見つけたと思った。 その直感を信じたかった。 けれど、もう一人の自分が囁く。 本当に大丈夫?もう少し冷静に見るべきじゃない?と。 一度しか会っていない彼に、ここまで入れ込む自分は確かに変だ。ただ、非難を恐れず言うならば、冗談抜きで結婚したいとも思っていた。 自分の心がこれほどまでに動いた、惹かれたのは初めてだったし、将来を考えてみたいと思えたのも初めてだった。 付き合ってもいないのに、彼にそこまで求めた自分

    • 周囲からの反対

      これが地味に一番しんどかった。 彼が話してくれたことを母に伝えたとき、 最後に決めるのは貴方だけれど、他の人にしようという気はないの?と不安そうに返された。 また、私は嬉しいことがあるとすぐ顔に出るらしく、友人知人から、いいことあったんでしょとつつかれることが多くなった。 そんなときは正直に、アプリで素敵な人に出逢ったと伝え、彼はとても真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる人なんだよと答えた。 すると、皆が口を揃えて言った。 それ、多分みんなに同じこと言ってるよと。 恋愛経

      • それでも続けたかった

        退院してから、私は深く眠れなくなった。 仕事のストレスが一番大きかったようには思うけれど、知らず知らずのうちに、色々なことを抱えていたのだと思う。 時折、強いめまいがして、失神するようになった。大きな病院でありとあらゆる検査を受けたけれど、全て異常なしだった。 ただ、傾向として、就寝前にスマホをいじった翌日は、ふらつきが酷く、めまいの症状も強く出ているように思えた。 けれど、彼とのメッセージは、私にとって何より幸せな時間だった。この時間を失いたくない。祈るような思いだっ

        • 止まった歯車が再び動いた日

          しばらくして、彼も足跡をつけてくれた。 嬉しかった。例え連絡が取れなくても、言葉を交わせなくても、心が踊った。 思わずいいねを押しそうになった。けれど、彼が人違いをしているならば、私だと気付かないほうがいいようにも思えた。 私はただ毎日、彼のプロフィールを覗いて過ごした。 あるとき、彼からいいねが届いた。そして、プロフィールが少しずつ手入れされるようになった。「理想はこの人なら素直になれそうと思える人」「めちゃくちゃ平和主義です」 自意識過剰かもしれない。けれど、彼は

        どうしても確かめたくて

          ずっと気になる

          昨日まで毎日のように連絡を取っていたのに、ロウソクの灯が消えたみたいに、彼は私の生活からいなくなった。 自分の撒いた種で、大切な人を振り回し、傷つけ、失った。別れを告げたのは私なのに、連絡手段を全て絶ったのも私なのに、それでも好きだった。 音信不通になって1か月、届かなくてもいいから彼を感じていたいと思うようになった。 私は、マッチングアプリを再登録した。 画面越しでもいい。ただその姿を見たかった。 条件を検索すると、一覧の中に彼がいた。 懐かしかった。ほっとした。

          連絡を絶った日②

          全部自分のせいなのだけれど、なぜこうなってしまったのか。涙が止まらなかった。 寛容な彼をここまで怒らせてしまった。 取り返しのつかないことをした。 せめて、彼のことが好きなのだという気持ちだけは伝えて去ろうと思った。 メッセージが来るたび、とてもとても嬉しかったこと。彼を好きだと思っていること。最後だから恥ずかしがらずに真っ直ぐ伝えた。 送信ボタンを押してからしばらく、ぼんやりしていた。幸せだったのに、全部終わってしまった。私は、一番大切な人を失った。 2時間ほど経

          連絡を絶った日②

          泣いた夜

          どこかに驕りがあったのだと思う。 彼も人間だ。振り回されれば腹も立つ。 私がどれほど矛盾しているか、一つひとつ時系列に沿って指摘された。終始強い言葉で綴られたメッセージからは、怒りが真っ直ぐに伝わってきた。 「お好きになさってください」 最後は、突き放すような言葉で括られていた。不安を拭いたかったはずが、金属バットで殴られたようだった。 今までどんなときも大きな心で受け止めてくれた彼が、信じられないほど怒りに満ちている。私はとんでもないことをしたのだと思った。 その

          幸せと不安の狭間で

          彼とまた連絡を取るようになった。 相変わらず余裕はなかったけれど、大切な人と言葉を交わせるだけで幸せだった。 この一件から、私は彼とのことを真剣に考えるようになった。それまで適当に思っていたわけでは決してないけれど。 自分一人の面倒を見るのでさえ、倒れて入院、この有り様。今の状態で家庭を持つことなどできるだろうか。不安。不安。不安。 彼はどんな風に受け止めてくれるだろう。どんな風に勇気付けてくれるだろう。彼の強さ、想いを確かめたくなった。 私は、職場で「未来の幹部候補

          幸せと不安の狭間で

          連絡してしまった

          ベッドで一人、ぼーっと天井を見上げていた。 ただただ心細かった。 何の脈絡もなく、彼に会いたいと思った。 自分から別れを告げたのに、なんて勝手なんだろうと、情けなくて失笑した。 けれど、弱っているとき無性に会いたくなるなんて、やっぱりこの人のこと好きなんだなと、ぼんやり思った。 とは言え、QRコードを読み込んだまま、その先に進むのを躊躇った。入院中、時間だけはたっぷりあったので、しばらくずっとスマホを眺めていた。 ふとした瞬間、「人生一度きりなんだし」と何故だか急に気

          連絡してしまった

          救急搬送される

          職場で転倒した私は、腰を強く打ち、整形外科にかかることになった。 混み合う待合室で、私はパイプ椅子に腰掛け3時間待ち続けた。おそらく疲労の限界を超えたのだろう。 診察室に呼ばれたものの、説明を聞いている間に目がチカチカしてきて……ここで私の記憶は途絶えた。後は何も覚えていない。 気が付いたら救急搬送されていた。 すぐにでも帰りたかったのだけれど、そういうわけにも行かず、結局入院することになった。 入院した病院は、この世の終わりのようだった。病室は汚物臭が充満し、高齢患

          救急搬送される

          奇跡みたいに誠実だった

          前後の記憶がごっそり欠落している私だが、唯一はっきり覚えていることがある。別れを告げたとき、彼から返ってきたメッセージの内容だ。 もう自分から連絡することはない。 けれど、もしも心変わりがあれば、連絡してほしい。 メッセージの終わりには、LINEのQRコードが添えられていた。 縋るわけではないけれど、諦めるわけでもない。まだ連絡を取りたい気持ちを伝えはするけれど、私の気持ちを尊重してくれる。 素敵すぎる。 別れを告げたのに、私はもっともっと彼のことが好きになった。矛

          奇跡みたいに誠実だった

          連絡を絶った日①

          正直なところ、何を理由にして連絡を絶ったか、全く覚えていない。記憶が欠落している。 ただただ余裕がなかった。限界だった。 それだけしか記憶にない。 仕事なんて休んでしまえばいい。身体のほうが大切だと言う人もいる。けれど、そんな訳にもいかなかった。 職場の先輩方は、本当に私のことを可愛がってくれた。どんなに忙しくても、分からないことは丁寧に教えてくれ、笑顔が見たいからと、好物のお菓子を山程買って来てくれたこともある。 私は知っていた。ある先輩は毎日3時間睡眠で頑張ってい

          連絡を絶った日①

          異変

          以降も、彼とはメッセージを通してたくさんのことを話した。一度しか会ったことがないとは思えないほど、私は彼の何かに惹かれていった。 彼とのやり取りは、話したいことがたくさんあるせいか、いつも少しばかり長文になりがちだった。 私は器用なタイプではないから、一生懸命に文章を考え、読み返し、手直しして…と、なんだかとても時間が掛かった。 同時期、私は激務に晒されていた。 帰宅することさえままならず、執務室の床にダンボールを敷いて仮眠するだけの日もあった。 強度のストレスと疲労

          初めて泣いた日

          出勤前に送ったメッセージ。 夜か翌日か、時間のあるときに返事をくれるだろうと思っていた。 けれど、予想外にすぐ便りが届いた。 自分がどんな人間かを話していなかったと。 生きてきた道のり、これまでの思い、たくさんの言葉で綴られていた。 読んでいる途中から、ポロポロと涙が溢れた。 理由は分からない。ただただ静かに涙が頬を伝った。 私が想像していた以上に、彼は幼い頃からたくさんのことに耐え、一生懸命生きてきたのだと、このとき初めて知った。 ただただ、幼き日の彼を抱き締めてあ

          初めて泣いた日

          気になったこと

          カフェで話している間ずっと、彼は私のことを「なっちゃんさん」と呼んだ。 名を尋ねられることはなく、LINEを聞かれることもなかった。勿論、彼の名も分からない。彼に合わせ、私も彼のことをアプリの登録名で呼んだ。 彼は、ほとんど自分のことを話さなかった。 帰宅してから、彼がどんな人かを言葉にしようとしたけれど、できなかった。 私が一方的に話し過ぎたのかもしれない。 とは言え、楽しかったはずなのに、何も知らない。分からない。 寂しかった。悲しかった。 けれど不思議と、彼が

          気になったこと

          楽しかった帰り道

          「来てよかった」 曇り空だったけれど、心は晴れ渡っていた。 この人の隣にいると私は幸せなのだ。ふとそう思った。 駅までの道すがら、表札の字が遠くからでも見えたとか見えなかったとか、大学の構内を知っているとか知らないとか、くだらないことばかり話した。 あっという間に駅に到着し、もうサヨナラなのかと落胆した。彼は、初対面でこんなに楽しく冗談を言えた人は初めてだと笑っていた。 その言葉が本当だといいな。 電車に揺られながら、彼との出逢いは幻かもしれないけれど、もしそうだとし

          楽しかった帰り道