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日はまた昇る:日本再興のトリガー

日本の経済と技術力の停滞(相対的な没落)

筆者は元官僚で、役所を辞めた2000年における日本のGDPは約5兆ドルで世界2位、世界におけるGDPシェアは14.6%だった。

これが2022年には日本のGDPは4兆3千億ドルと減少しており、また、世界でのGDPシェアは4.2%とその存在感は大幅に後退している。

ちなみに、日本のGDPは2000年には中国の3倍以上であったが、2022年には中国の4分の1以下となっている。

そして、一人当たりGDPは2000年の3万9千ドル(世界2位)から2022年には3万4千ドル(世界32位とG7の中で最下位)で、韓国と台湾にも抜かれている。この点は韓国の尹大統領が公の場で発言し、日本でも話題になった。

国内総生産(GDP)から見ると日本は二流国に堕している。

このような事実を多くの日本人は理解していないのではないか。

そして、日本が復活するのに必要不可欠なものは「科学技術を基盤とするイノベーション力」だ!!


科学技術力が停滞したこの20年

人口100万人当たりの博士号取得者数 を見ると、日本は米英独韓を大きく下回っている。日本の博士号取得者は2018年度に120人、米国は281人、ドイツは336人、英国は375人、韓国は284人だ。なんと韓国の半分以下である。

スイス国際経営開発研究所(IMD)の国家競争力の順位では、日本が1995年の4位から2020年には34位に落ちる一方で、韓国は26位から23位に上がった。既に韓国が日本を上回っている。

韓国を褒めたいわけではないが、国際格付機関による国別信用格付S&P基準の格付では、1990年には日本は(AAA)と韓国の(A+)より4段階高かったのに対し、2021年には日本(A+)で韓国(AA)と韓国が2段階高い評価を受けている。この評価を日本人は真摯に受け止める必要がある。

英国の大学評価機関QS(Quacquarelli Symonds)が発表した「2024年世界大学ランキング」による以下の通り。

  •  日本の大学は、東京大学が前年と同じ23位、京都大学は3つ順位を下げ36位、東京工業大学が55位、大阪大学が68位、東北大学79位と5大学がトップ100に入っている

  •  一方、ソウル大学(41位)、韓国科学技術院(KAIST)(56位)、延世大学(76位)、高麗大学(79位)、浦項工科大学(100位)と韓国の5大学も100位以内に入っている

  •  中国は17位に北京大学(前年12位)、25位に清華大学(同14位:この下落はアメリカの技術分断政策も一因だと推測。米中の国際共同研究は激減している。)、44位に浙江大学(同42位)、50位に復旦大学(同34位)、51位に上海交通大学(同46位)と、上位100位内に5校となる(前年から1校減少)

  • アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)が12年連続の1位

  • 前年11位だったシンガポール国立大学が8位に浮上し、アジア勢ではじめて10位内に入った

シンガポール国立大学の教授たちの話を聴いていると、同大学には世界ランキングを上げるための専門部署があり、評価会社QSのコンサルタントを受けて進めていると言う。

事実がどうかわからないが「国際性の評価を増すためにアメリカの大学の職員(アメリカ在住)と契約を結び海外の職員割合を増やしている」とも聴いた。

そこまでやるのか!と思ったが、彼らは「海外から学生と研究者を集めるのに必死」なのだ。東京23区とほぼ同じくらいの面積しかない国が生き残るためには、世界から人を集めなければならないのである。

ここに国家としての意志を感じる。


科学技術力を伸ばした韓国

筆者は韓国先端科学技術院(KAIST)の特任教授をしており半年に一回程度講義を行っている。

KAISTを通じて感じるのは、「韓国政府は科学技術に国運をかけている」という雰囲気である。韓国人が科学技術を好きかと言うとおそらく感覚的には日本人の方が科学技術を好きである。

しかしながら、1990年代末のウォン危機を経験し、韓国は「国家の意志」として、本格的な「貿易立国」と「技術立国」を目指してきたと筆者はみている。

筆者は、自由貿易政策についての本を出版している。
実はこの本にも「韓国を見習うべき」と書いた。韓国はウォン危機後、市場を海外にもとめ、米韓自由貿易協定(FTA)をはじめ、多くの国々とFTAを締結し、まさしく貿易により外貨を稼ぎ、国を豊かにすることを目指し始めた。

そして、貿易立国を進めるには、競争力がある製品やサービスが必要であり、そのために研究開発に投資を大きく増やし始めたのだ。

詳細については別途ブログを書かせてもらう。

ウォン危機以降の韓国の研究開発費の拡大

韓国の研究開発費は2000年頃から⼤幅な増加を維持している。

そして、2021年には韓国全体でGDPの約5%を研究開発費に投資している。これは日本の3.59%の1.5倍に近い数字となる。

韓国は2000年頃に研究開発費のGDP比率は約2%だったので、ウォン危機後のこの20年間にGDP比で研究開発投資を約2.5倍まで引き上げている。一方、日本は3.2%から3.6%にしか伸びていない

出典:科学技術指標2023
各国・地域の研究開発費総額の対GDP比率(2021年)(出典:科学技術指標2023


また、2011年から2020年にかけての10年間の部門ごとの研究費の推移をみると、韓国では民間企業、大学、公的研究機関の研究開発費は軒並み50%以上増えているが、日本は、10%程度しか増えていない。

大学に至っては、マイナス2.1%となっている。異常な状態である。

2011年から2020年にかけての部門別研究開発費の増加率
出典:「科学技術指標2022」(NISTEP, RM-318)を基に、文部科学省作成。

この20年間の日本研究開発力を見る(やはり没落している)

研究開発の成果である論文数を見ると、日本の論文数は世界第5位であり、TOP10論文数は第13位となっている。

論文数(2019年から2021年の平均)は、1位中国(シェア24.6%)、2位アメリカ(16.1%)、3位インド(4.0%)、4位ドイツ(3.9%)、5位日本(3.8%)となる。20年前の1999年から2001年の論文数は、1位アメリカ(27.5%)、2位日本(8.8%)であった。この20年で相対的な日本の研究力は半分以下になったとも言える。

また、論文の引用数から見たTOP10の論文数をみると日本は13位(2.0%)となる。韓国、スペイン、イランよりも下位にあるのだ。ちなみに、1999年から2001年のTOP10論文数ではアメリカ(41.4%)、英国(8.2%)、ドイツ(6.8%)に次ぐ第4位(6.0%)の位置にあった。TOP10論文数を見ると日本の相対的な地位は1/3までに縮小している。

国・地域別Top10補正論文数 出典:第一生命経済研究所

この現実を我々は明確に認識しなければならない。

そして、各国の研究開発費(購買力平価換算値)のこの20年間の変化を見てみる。

2000年を100としてした場合、2021年で、アメリカは197と約2倍、ドイツが163で1.63倍、日本は132と1.3倍に増やしたに過ぎない。

特に日本のライバルとも言える中国を見ると、2018年データでは1167と20年弱で12倍近くまで研究開発費を伸ばしている。また、韓国も492と約5倍に研究開発費を増やしている。

日本が研究開発投資をほとんど増やしていないこの20年の間に中国や韓国は科学技術への投資を大きく増やしてきたのである。


日本の防衛力も経済力とともに相対的に没落

経済面のみならず、防衛面を見ても、2000年には世界の防衛費の総額の中でシェア6.1%(実為替レートベース)で世界第2位だったが、2022年は防衛費の世界シェアは2.1%、世界10位、一人当たりGDP同様に韓国よりも低くなっている。

ちなみに、2022年の中国の防衛費シェアは13.2%と世界2位だ(アメリカは39.2%、世界1位)。2000年の中国のシェアは3%、この20年間に相対的に4倍も防衛力(軍事力)を伸ばしている。

つまり、2000年時点では中国の防衛費は日本の3分の1、これが2022年には日本の6倍になっている。この数字を知っている日本人は少ないのではないだろうか。日本は防衛費をGDPの1%としている。

日本の経済規模に対する防衛費シェアは変わっていない。一方で、相対的に防衛費が落ちてきているのは、経済成長がなかったからである。

日本の防衛のためにも経済成長は必要であり、防衛力の基盤となるのは技術力である。


技術力を再興するには政治家の力が必要

自民党の派閥パーティの裏金問題が大きく政治を揺さぶっている。

このような裏金をなぜ作ったのか、きちんと公開し、透明化したお金になぜしなかったのか、と私も大きな疑問である。

おそらくこれから政治家に対する寄付などの支援は大きく減ることになるであろう。

そうなれば政治はますます政策の実現に時間と労力をさけなくなると危惧する。選挙にかける時間を政策づくりとその実現に振り向けようとする場合、地元の秘書の雇用、地元事務所の確保、ビラの印刷・配布などにより多くの資金を使わなければならない。秘書が少なければひたすら本人が選挙区を回るしかない。

つまり、政治資金により選挙に勝てる体制をつくれば、選挙でなく政策実現のための時間をより多く使えるのだ。今回のスキャンダルもただ規制をして裏金問題にパッチワークをすればいいものではなく。

そもそも政治家が政治資金確保などを気にせずに、本来の仕事である法律や政策作りに力と時間を集中できるようにしなければならない。

そのためにも、このようにネットにおいて、政策を議論し、その政策を実現していく政治家を応援しなければならないと痛感している。

このブログをご覧になっているみなさんと一緒に日本の技術力再興のために働く政治家を応援していきたい。

2024年8月17日 アイアン

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