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500年後の日本,全員が「佐藤さん」に?

選択的夫婦別姓制度を導入するか否か。
日本ではこの議論がずっと続いており,
62%の世論が賛成しているにもかかわらず,
法改正は,一向に前に進む気配がありません。

私も賛成派の一人。
名字が変わると,仕事や生活に
支障があるという人は,結婚しても
旧姓のままでいいじゃないですか。
変えたい人は変えればいいし,
変えたくない人は変えなくてもいい,
という選択の自由はあるべきだと考えます。
だって,基本的に名字を変えるのは,
いつだって女性の方。
それも不公平といえば,不公平ですよね。

どちらかが旧姓のままでいると,
家族間で名字が異なり,
家族の絆や一体感が弱まる….。
子供に好ましくない影響を与える….。
周りの人が混乱する….。
というのが反対派の意見のようですが,
本当にそうでしょうか。

私がイタリアで会った人たちは,
ほとんど旦那と奥さんの名字が違う。
奥さんは,ほとんど旧姓のまま。
というかこれは,事実婚の人たちが
多いからだとも言えますが。
そう,そもそもイタリア人は
結婚すらしていないカップルが多い。
こうなると当然,お母さんと子どもの
名字が違うってことになりますが,
名字が違うからといって,それが
家族の絆に影響すると考えてる
イタリア人は …. いないでしょうね。
それが当たり前の世界ですから,
特になんの混乱も見られません。

国際結婚の場合はどうなのかというと,
選択度はかなりあります。
私は20年ちょっと前に,ヴァレと
日本で結婚しました。
うろ覚えですが,当時の記憶によると,
相手の名字に変えることも当然できたし,
旧姓のままでいることもできたし,
なんなら,名字を2つ持つことも,
多分できたんじゃないかと思います。

私はというと,旧姓に特に愛着がなかったし,
20年前ですからね,結婚したら
旦那の名字に変えるのって,当たり前だったし,
結婚したら相手の名字を変えることに,
当時は,ちょっとした憧れがありました。
改めて考えると,そんな考えを抱くように
刷り込まれていたんじゃないでしょうか。

ただ,私の場合,旧姓のままでいるには,
なんらかの手続きが必要だったことを,
うっすら記憶しています。

その手続が面倒だからという理由もあって,
結局,名字はヴァレの名字に変えたんじゃ
なかったかなぁと,記憶しています。

が,その結果,名字はイタリア名字でカタカナ表記,
名前は日本の名前で漢字表記ってことに
なっちゃってる。
しかも,ヴァレのイタリア名字をカタカナにすると,
小さい「ッ」が名字に入るため,
これが,日本人には少々読みにくい。

だから,私の場合は逆に,名字を変えたことで,
周りの人に多少の「混乱」を与えて
しまっているのかもしれません。

イタリアに来て,初めて知ったんですが,
私がイタリアで会ったイタリア人と
結婚した日本人は,100%旧姓を名乗っている。

私が名字を変えたと言ったら,
「名字,変えちゃったの?」と,
反対に驚かれたりもして。

まあ,とにもかくにも,
変えたい人は変えればいいし,
変えたくない人はそのままでもいい,
自分の名前なんだから,自分で選ばせてよ,
という結論にどうしてもなるわけです。

もちろん,長年の伝統を変えると,
多少の「混乱」や「戸惑い」はあるでしょう。
でも,そんなのもすぐに慣れて,
1年後には,それが当たり前の世界になりますよ。

さて,前置きが長くなりましたが,
今回は イタリア語でニュースを読もう‼️
でございます。

取り上げる記事は,選択的夫婦別姓制度を
導入しないと,500年後の2531年には
全ての日本人が「佐藤さん」になって
しまうかもしれないという,
最近の研究結果の報告です。

In Giappone tutti potrebbero avere lo stesso cognome e chiamarsi Sato entro il 2531: colpa di una regola
日本では,2531年までに,誰もが同じ姓を持ち,みな「佐藤」と呼ばれることになる可能性がある。その原因はある規則によるものである。

regola[女](守るべき)規則,ルール

👧 ここでちょっと疑問‼️
regola じゃなくて,legge じゃないの❓️

同じ女性名詞で,legge というのもあります。
違いを少し調べてみました。
regola はより柔軟で特定の状況や
団体に適用される《規則》を指し、
legge は国家や地域全体に適用される
公式な《法的規定》を指す,ということ。

日本では,民法第750条において、
婚姻によって夫婦のどちらか一方の
名字を選ぶことが義務付けられて
おりますので,ここは,regola ではなく,
legge のほうが適してると考えます。

👧 婚姻における名字の変更は,
    《義務》なんですね,やっぱり …。

In Giappone c'è il rischio di fare tutti "Sato" di cognome da qui al 2531: l'allarme è stato lanciato da uno studioso che ha puntato il dito contro la regola antica
日本では、2531年までに全員が「佐藤」という苗字になるリスクがある。この警告は、旧規則を指摘した研究者によって発表された。

c’è il rischio di …
… のリスクがある

fare tutti “Sato” di cognome
全員を佐藤姓にする

全員が佐藤性になる

イタリア語は fare で「する」ですが,
日本語では「なる」としたほうがしっくりきます。

da qui al 2531
今から2531年までに
lanciato = lanciare[他]
投げる,世に出す,発表する
è stato lanciato da …
… によって発表された

studioso[名]研究者

studioso
ここでは,名詞「研究者,学者」として,
使われていますが,この単語は
形容詞としても使えます。
形容詞の意味は 勉強熱心な,勤勉な

👧 Sei studioso/a?

puntare il dito 〜
直訳は 〜 を指差す ですが,
ここでは 前置詞に contro 〜に反して
が使われてますので,
〜を指摘する,〜を批判する
と訳すとしっくりきます。

uno studioso che ha puntato il dito contro la regola antica
古い規則を指摘した(批判した)研究者

In Giappone tra 500 anni, ovvero nel 2531, rischieranno tutti di avere lo stesso cognome Sato.
500年後の日本、すなわち2531年には、誰もが同じ佐藤姓を持つ(名乗る)リスクがある。

ovvero[接]言い換えれば,すなわち

rischieranno tutti di avere lo stesso cognome Sato

主語は動詞の後ろの tutti です。
順序を変えてみましょう。

Tutti rischieranno di avere lo stesso cognome Sato
すべての人が同じ佐藤性を持つリスクを負うだろう

先程は名詞 rischio が出てきましたが,
こんどは動詞 rischiare です。
rischiare は,他動詞としても自動詞としても
使える動詞。

ここでは,rischiare di 不定詞
の形になっているので,
自動詞として使われていると考えられます。

自動詞としての「rischiare」は、rischiare di 不定詞 の形で,「〜となるリスクがある」「〜する危険の可能性がある」といった意味で使われます。一般的に、補助動詞として「avere」を使い、続く動作や状況が危険やリスクにさらされることを表します。

Rischia di piovere.
雨が降るリスク(可能性)がある
雨の心配がある

Rischiamo di perdere il treno.
私たちは電車を逃すリスク(可能性)
がある。

他動詞としての「rischiare」は、「…を危険にさらす」という意味。特定の行動や状況に対して直接的にリスクを負うことを意味します。リスクを負う対象が直接目的語として現れます。

Ho rischiato la vita per salvarlo.
彼を助けるため,私は命を
危険にさらした。

rischiare tutto per un sogno
夢のためにすべてを賭ける

👱‍♂️ イタリア語は,自動詞と他動詞が,
      同形ものが多いので,
      どちらの用法で使われているのか,
       動詞を見ただけでは分かりません。
    基本的に,動詞の直後に,名詞が
       直接続いていれば,それは他動詞。
       前置詞を介していれば,
       それは自動詞として使われていると
       判断します。

È quello che emerge da uno studio dell’università Tohoku nella città di Sendai, secondo cui tutti i cittadini del territorio nipponico avranno lo stesso cognome a meno che non cambierà la legge che risale al 1800.
これは、仙台市の東北大学の研究によって明らかになったもので、それによると、1800年に遡る法律が変わらない限り、日本領土のすべての市民は,同じ姓を持つことになるとされている。

emerge = emergere[自]
(事実が)浮かび上がる,現れる
cittadino[男]市民
territorio[男]領土
nipponico[形]日本の
a meno che (non) … … でなければ
risale = risalire 遡る

Ma cosa prevede e perché c’è questo pericolo?
しかし、それは何を規定し,なぜこのような危険を伴うのか​​。

prevede = prevedere[他]
予想する,予見する,規定する
などの意味がありますが,この文では
「規定する」が適切であると考えます。

明示されてませんが,主語は前述の legge です。

Ma questa legge cosa prevede?
その法律は,何を規定しているのか。

👧 ここでは legge 「法律」を使ってますね。

I risultati dello studio
研究の結果
L’allarme è stato lanciato dall’economista Hiroshi Yoshida, che ha condotto la ricerca.
研究を行った経済学者 Yoshida Hiroshi 氏が警鐘を鳴らした。

condotto = condurre
多義語ですよねえ。
ここでは la ricerca「研究」という
直接目的語が直後にあるので,
「(研究を)行う」という意味で
使われていると考えます。

👧 イタリア語文は
      L’allarme è stato lanciato da …
      
と,受け身文ですが,日本語訳は
      能動文にしました。

Secondo i calcoli dello studioso, il cognome “Sato” che è uno dei più diffusi in Giappone ha avuto un aumento considerevole tra il 2022 e il 2023.
同学者の計算によると、日本で最も普及している姓の一つである「佐藤」姓は、2022年から2023年にかけて大幅に増加した。

il cognome “Sato” che è uno dei più diffusi in Giappone
日本で最も普及しているものの一つである佐藤姓

diffuso[形]普及した,拡散した

ha avuto un aumento considerevole tra il 2022 e il 2023.
2022年から2023年にかけて,大幅に増加した

aumento[男]増加,増大
considerevole[形]かなりの,相当な

👧 質問‼️
「増加した」って動詞ですよね。
イタリア語にも動詞 aumentare
あるじゃないですか。でも,ここは

ha avuto un aumento considerevole
かなりの増加を持った❓️

このように,avere + 名詞 で表現されています。
aumentareavere un aumento の違いって❓️

👱‍♂️ イタリア語にも aumentare 「増加する」
という動詞が存在するのですが,名詞を
使うことで,具体的な「増加」を強調しています。
aumentare は,単に「増える」という《変化》
「増やす」という《動作》」に焦点を当てますが,
avere un aumento は,「増加」という
《結果》に焦点を当てています。

さらに considerevole などの形容詞を加えることで,
増加の度合いをさらに強調しています。
他にもこんな例があります。
どれも《結果》にフォーカスが当てられています。

Ho fatto una scelta importante nella mia vita.
私は人生で重要な選択をしました。

scegliere 「選ぶ」という動詞を使わずに,
fare una scelta という名詞句を使うことで,
「選択をする」というニュアンスになります。

Abbiamo preso una decisione finale.
私たちは最終決定を下しました。

decidere 「決定する」という動詞を使わずに,
prendere una decisione という
名詞句をつかうことで,「決定を下す」
という意味になります。

Il progetto ha avuto un grande successo.
そのプロジェクトは大きな成功を収めました。

動詞 riuscire「成功する」を使わずに,
avere un successo という名詞句を
つかうことで,「成功を収める」という
ニュアンスになります。

Supponendo che il tasso rimanga costante, e che non vi sia alcun cambiamento alla legge sui cognomi, più della metà della popolazione assumerà questo cognome entro il 2446 e la totalità entro il 2531.
もしこの割合が一定のままで、苗字に関する法律に変更がないと仮定すると、2446年には,人口の半分以上がこの苗字を名乗り、2531年までには,全員がこの苗字を名乗ることになる。

長いので短く区切って
ド直訳していきます。

Supponendo che
… と仮定すると
il tasso rimanga costante, e
割合が一定のままで
che non vi sia alcun cambiamento
alla legge sui cognomi,

そして,苗字に関する法律に
いかなる変更もない
più della metà della popolazione
人口の半分以上は
assumerà questo cognome
この苗字を名乗るだろう
entro il 2446
2446年までに
e la totalità entro il 2531.
そして,2531年までには
全体が

日本語を整理します。

その割合が一定のままで(この増加率がこのまま続き),そして名字に関する法律にいかなる変更もないと仮定すると,2446年には人口の半分以上が,2531年には,全員が佐藤姓を名乗ることになる。

👧 日本にはよく
「ここには〇〇さんが多いのよ〜」って
土地がありますよね。それも納得‼️
だって,そこに嫁いだ女性は,みんなそこに
住んでいる男性の姓を名乗ることに
なるわけですから。
よく考えたら,みんな同じ苗字に
なっちゃうに決まってますね。

Questo perché, secondo la legge in vigore, le coppie sposate devono avere obbligatoriamente un cognome unico e dopo quasi tutti i matrimoni è la moglie a prendere il cognome del marito.
これは、現行の法律では、夫婦(結婚したカップル)は単一の姓を持たなければならず、ほとんどすべての結婚に負いて,妻が夫の苗字を名乗ることになるためだ。

in vigore 施行中の
obbligatoriamente[副]
義務的に,強制的に
un cognome unico 単一の姓

👧 この部分がよく分かりません。
   la moglie a prendere の部分。
   名詞 a 不定詞 って❓️

👱‍♂️《名詞 a 不定詞》の形,
ここでは「〜するのは名詞だ」という
という表現を作っている。
a 不定詞 で,名詞を限定している。
 
  例えば….

È il presidente a prendere la decisione finale.
最終決定を下すのは大統領だ
È il medico a dare la diagnosi.
診断を下すのは医師だ
È l'insegnante a spiegare il concetto.
概念を説明するのは教師だ

記事では …。

è la moglie a prendere il cognome del marito.
夫の姓を取る(名乗る)のは,妻だ

妻が夫の姓を名乗る

Il rischio dei “tutti Sato”
全員が「佐藤」という危険
Uno scenario che preoccupa, anche se “visto” a 500 anni di distanza.
500年先の”予見”であるとしても,懸念されるシナリオである。

Infatti, secondo quanto affermato da Yoshida, il rischio è che, essendo tutti Sato, i giapponesi dovranno fare ricorso al sistema di “nome e numeri” per essere riconosciuti.
事実、吉田氏の発言によると、危険なのは,すべてが佐藤姓になると、日本人は認識されるために「名前と番号」のシステムに頼らなければならなくなることだ。

Infatti,
事実
secondo quanto affermato da Yoshida,
吉田氏が明言したところによると
il rischio è che,
そのリスクは〜である
essendo tutti Sato,
全員が佐藤姓であると
i giapponesi
日本人は
dovranno fare ricorso
利用しなければならなくなる
al sistema di “nome e numeri”
名前と番号のシステムを
per essere riconosciuti.
認識されるために

“Non penso che possiamo definirlo un buon risultato”, ha affermato al giornale giapponese The Mainichi.
「これを良い結果と定義することはできない」と,毎日新聞に彼は断言した。

Verso il cambiamento del sistema
システムの変更に向けて

Lo studio ha riacceso il vecchio dibattito in Giappone sulla necessità di aggiornare il sistema dei cognomi, in modo da preservare l’individualità e la diversità dei cittadini.
この研究は,国民の個性と多様性を維持するために,姓制度の更新(現代化)の必要性ついての日本で古くからされてきた論争に再び火をつけた。

riacceso = riaccendere[他]
再び火をつける
dibattito[男]論争,討論
aggiornare[他]改定する,時代に即応させる
preservare[他]保存する,守る,保護する
individualità[女]個性
diversità[女]相違,多様性

Ma attualmente il cambiamento dell’antica legge non sarebbe in programma.
しかし,現在のところ,以前の法律の変更は予定されていない。

essere in programma
実現する予定である

Se la norma fosse aggiornata, il processo avverrebbe comunque più lentamente.
もし規則が更新されても、いずれにせよ,その(変化の)過程はゆっくりと進むだろう。

Yoshida, infatti, ha stabilito che entro il 2531 con la modifica di legge, solo il 7,96% si chiamerà “Sato”, ma questo cognome è destinato a prendere il sopravvento entro il 3310.
2531年までに法改正をすれば,佐藤姓を名乗る人はわずか7.96%にとどまるが,この名字は,3310年までには優位に立つことになると,吉田氏は決定づけた。

stabilito = stabilire[他]
決める,定める,決定する
essere destinato a 不定詞
〜する運命にある
〜すべきものである
prendere il sopravvento
優位に立つ

Di recente è nato anche un movimento per cambiare le regole sui cognomi. Guidato dai sostenitori dei diritti delle donne e da coloro che cercano di conservare la diversità dei cognomi giapponesi in una nazione in cui una manciata di nomi sta diventando sempre più comune, l’obiettivo è far cambiare il prima possibile le regole rigide.
一握りの名がますます一般的になりつつあるこの国で,女性の権利を擁護する人々や,日本の姓の多様性を守ろうとする人々の主導のもと,昨今,姓のルールを変えようという動きも起きている。その目的は,厳格なこの規則をできるだけ早く変更することである。

sostenitore[男]支持者,擁護者
diritto[男]権利
coloro[代名]〜するところの人
manciata[女]ひとつかみ,一握り
obiettivo[男]目的,目標,ねらい
rigide[形]厳しい,厳格な

manciata di nomi 一握りの名
と訳しましたが,特定の名字
(たとえば「佐藤」など)が
日本全体でますます多くの人々によって
使われるようになっているという
状況を説明しています。

はい,お疲れ様でございました。
いかがでしょうか。
まあ,500年先のことなんて,
どうでもいいと言えば,それまでですけど,
夫婦同姓を義務付けているのは日本だけ
って話でしょ?
つくづく《選択の自由》を嫌う国だな
と痛感させられます。
長々とお付き合いありがとう
ございました‼️


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イタリア語100の疑問
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